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「和田心臓移植事件」を契機に国民的議論が喚起され、脳死、臓器移植そのものへの否定的論調も根強かった。とくに脳死は人の死かという点が欧米との宗教的背景の違いもあって大きな論点となった。和田教授は世の指弾を受け、以後、わが国では脳死、移植に関する議論は低調あるいはタブーとなったが、この間に海外では臓器移植が技術的に大きく進歩、発展した。 | 「和田心臓移植事件」を契機に国民的議論が喚起され、脳死、臓器移植そのものへの否定的論調も根強かった。とくに脳死は人の死かという点が欧米との宗教的背景の違いもあって大きな論点となった。和田教授は世の指弾を受け、以後、わが国では脳死、移植に関する議論は低調あるいはタブーとなったが、この間に海外では臓器移植が技術的に大きく進歩、発展した。 | ||
1985年、旧厚生省研究班は日本脳波学会基準による全国調査を行った718例中、蘇生例は無かったことを報告し<ref name=竹内一夫1985>竹内一夫. 厚生省厚生科学研究費特別研究事業「脳死に関する研究班」、昭和59年度報告書. 日本医事新報 3188: 112-4. </ref>[11]、全脳死を採用した脳死判定基準(いわゆる竹内基準)を公表した<ref name=厚生科学研究費特別研究事業1985>厚生科学研究費特別研究事業 脳死に関する研究班 昭和60年度研究報告書. 脳死の判定指針および判定基準. 日医雑誌 1985; 94: 1949-72. </ref>[12] | 1985年、旧厚生省研究班は日本脳波学会基準による全国調査を行った718例中、蘇生例は無かったことを報告し<ref name=竹内一夫1985>竹内一夫. 厚生省厚生科学研究費特別研究事業「脳死に関する研究班」、昭和59年度報告書. 日本医事新報 3188: 112-4. </ref>[11]、全脳死を採用した脳死判定基準(いわゆる竹内基準)を公表した<ref name=厚生科学研究費特別研究事業1985>厚生科学研究費特別研究事業 脳死に関する研究班 昭和60年度研究報告書. 脳死の判定指針および判定基準. 日医雑誌 1985; 94: 1949-72. </ref>[12]('''表1''')。 | ||
{| class="wikitable" | |||
|+表1. 全脳死を採用した脳死判定基準(竹内基準)の骨子<ref name=厚生科学研究費特別研究事業1985 /> | |||
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1. 深昏睡<br> | |||
2. 瞳孔散大固定<br> | |||
3. 自発呼吸の消失(無呼吸テストにて)<br> | |||
4. 脳幹反射の消失 <br> | |||
5. 平坦脳波 | |||
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1992年、「臨時脳死および臓器移植調査会」(通称、脳死臨調)は、脳死を人の死と認め、脳死体からの臓器移植の意義を是認し、さらに臓器の提供は本人の意思を最大限に尊重するという答申をまとめた。 | 1992年、「臨時脳死および臓器移植調査会」(通称、脳死臨調)は、脳死を人の死と認め、脳死体からの臓器移植の意義を是認し、さらに臓器の提供は本人の意思を最大限に尊重するという答申をまとめた。 | ||
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#臓器移植以外も含むすべての場において「脳死は人の死である」という考えが適用されるのか注目されたが、「臓器移植法は臓器移植の手続きについての法律であって、臓器移植につながらない脳死判定による死亡宣言はあり得ない」との法的解釈が示され、この点は従来と変わらない状況となっている。 | #臓器移植以外も含むすべての場において「脳死は人の死である」という考えが適用されるのか注目されたが、「臓器移植法は臓器移植の手続きについての法律であって、臓器移植につながらない脳死判定による死亡宣言はあり得ない」との法的解釈が示され、この点は従来と変わらない状況となっている。 | ||
== 日本の脳死判定基準 == | == 日本の脳死判定基準 == | ||
先述のように、旧厚生省の脳死に関する研究班は、日本脳波学会の脳死判定基準(1969年)に基づいて脳死と判定された症例についての全国調査に基づいて、1985年に脳死判定基準、いわゆる竹内基準を提出した<ref name=厚生科学研究費特別研究事業1985 /> [12]。なお、その調査対象となった718例中で蘇生例は1例もなかったと報告されており、その妥当性が確認されている<ref name=竹内一夫1985 /> [11]。 | 先述のように、旧厚生省の脳死に関する研究班は、日本脳波学会の脳死判定基準(1969年)に基づいて脳死と判定された症例についての全国調査に基づいて、1985年に脳死判定基準、いわゆる竹内基準を提出した<ref name=厚生科学研究費特別研究事業1985 /> [12]。なお、その調査対象となった718例中で蘇生例は1例もなかったと報告されており、その妥当性が確認されている<ref name=竹内一夫1985 /> [11]。 |