「銅・亜鉛-スーパーオキシドディスムターゼ」の版間の差分

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==== ALSモデル動物 ====
==== ALSモデル動物 ====
 家族性ALSで見つかったSOD1の変異遺伝子を高発現させたマウス(変異SOD1トランスジェニックマウス、変異SOD1 tgマウス)がALSと同様の症状を示した[28]ことから、多くの変異SOD1を高発現させたマウスやラットがALSモデル動物として作製された。ALSの進行や病態の解析、発症機構の解明、治療方法の開発などに利用され、ALSの研究は大きく飛躍した。長年唯一のALS治療薬として使用されてきたリルゾールは、神経毒性を示す興奮性神経伝達物質のグルタミン酸の遊離阻害作用をもつ。実際、変異SOD1 tgマウスを用いた研究では、グルタミン酸を再取込みするグルタミン酸トランスポーター1 (GLT1) の発現量が低下し、ALS発症前からグルタミン酸量が多くなっていること<ref name=Howland2002><pubmed>11818550</pubmed></ref> [29]やイオノマイシン処理などの刺激で放出されるグルタミン酸量が野生型SOD1tgマウスよりも多いこと<ref name=Milanese2011><pubmed>21175617</pubmed></ref> [30]が報告されている。しかし、GLT1を過剰発現させてもG93A tg マウスの生存期間に変化は見られなかった<ref name=Li2015><pubmed>25818008</pubmed></ref> [31]。
 家族性ALSで見つかったSOD1の変異遺伝子を高発現させたマウス(変異SOD1トランスジェニックマウス、変異SOD1 tgマウス)がALSと同様の症状を示した<ref name=Gurney1994><pubmed>8209258</pubmed></ref>[28]ことから、多くの変異SOD1を高発現させたマウスやラットがALSモデル動物として作製された。ALSの進行や病態の解析、発症機構の解明、治療方法の開発などに利用され、ALSの研究は大きく飛躍した。長年唯一のALS治療薬として使用されてきたリルゾールは、神経毒性を示す興奮性神経伝達物質のグルタミン酸の遊離阻害作用をもつ。実際、変異SOD1 tgマウスを用いた研究では、グルタミン酸を再取込みするグルタミン酸トランスポーター1 (GLT1) の発現量が低下し、ALS発症前からグルタミン酸量が多くなっていること<ref name=Howland2002><pubmed>11818550</pubmed></ref>[29]やイオノマイシン処理などの刺激で放出されるグルタミン酸量が野生型SOD1tgマウスよりも多いこと<ref name=Milanese2011><pubmed>21175617</pubmed></ref>[30]が報告されている。しかし、GLT1を過剰発現させてもG93A tg マウスの生存期間に変化は見られなかった<ref name=Li2015><pubmed>25818008</pubmed></ref>[31]。


 ALSモデル動物の研究により、変異の種類によってALSの発症時期や罹病期間が異なることや、変異SOD1の発現量が多いほどALSの発症が早くなり罹病期間が短くなる(生存期間が短い)ことがわかってきた。またALS患者同様、病変部位である脊髄前角細胞にはSOD1免疫陽性の封入体やレビー小体が見つかっている。興味深いことにA4V発現マウス(A4V tgマウス)はALS症状を示さなかったが、野生型SOD1を共発現させるとALS症状が現れた。G93A tgマウスやL126Z tg マウスにおいても野生型SOD1の共発現によって発症が早まり、生存期間も短くなった<ref name=Deng2006><pubmed>16636275</pubmed></ref> [32]。さらに野生型SOD1のみを高発現させたマウスでもALS様の症状が見られたことから<ref name=Jaarsma2000><pubmed>11114261</pubmed></ref> [33]、孤発性ALSにおいても野生型SOD1の関与が示唆されている。実際、変異SOD1のみならず野生型SOD1高発現マウスから樹立させたiPS細胞由来の運動神経細胞においてもミスフォールドしたSOD1タンパク質の蓄積が観察されている<ref name=Komatsu2018><pubmed>29140847</pubmed></ref> [34]。従って、変異の有無に関わらずSOD1タンパク質自体のミスフォールディングや凝集化がALS発症に関与する可能性が考えられている。
 ALSモデル動物の研究により、変異の種類によってALSの発症時期や罹病期間が異なることや、変異SOD1の発現量が多いほどALSの発症が早くなり罹病期間が短くなる(生存期間が短い)ことがわかってきた。またALS患者同様、病変部位である脊髄前角細胞にはSOD1免疫陽性の封入体やレビー小体が見つかっている。興味深いことにA4V発現マウス(A4V tgマウス)はALS症状を示さなかったが、野生型SOD1を共発現させるとALS症状が現れた。G93A tgマウスやL126Z tg マウスにおいても野生型SOD1の共発現によって発症が早まり、生存期間も短くなった<ref name=Deng2006><pubmed>16636275</pubmed></ref>[32]。さらに野生型SOD1のみを高発現させたマウスでもALS様の症状が見られたことから<ref name=Jaarsma2000><pubmed>11114261</pubmed></ref>[33]、孤発性ALSにおいても野生型SOD1の関与が示唆されている。実際、変異SOD1のみならず野生型SOD1高発現マウスから樹立させたiPS細胞由来の運動神経細胞においてもミスフォールドしたSOD1タンパク質の蓄積が観察されている<ref name=Komatsu2018><pubmed>29140847</pubmed></ref>[34]。従って、変異の有無に関わらずSOD1タンパク質自体のミスフォールディングや凝集化がALS発症に関与する可能性が考えられている。


==== SOD1と銅シャペロンタンパク質との関係 ====
==== SOD1と銅シャペロンタンパク質との関係 ====

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