「変換症」の版間の差分

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==変換症とは==
==変換症とは==
 変換症とは、訴える症状が運動機能ないしは感覚機能の変化であるが、その症状が生理・解剖学的には説明できない状態を指す。以前は解離性障害と訳され、さらに以前には、転換ヒステリーとも呼ばれていたが、アメリカ精神医学会によるDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, fifth edition)の日本語版では、[[変換症]]との訳語が併記されるようになった。
 変換症とは、訴える症状が運動機能ないしは感覚機能の変化であるが、その症状が生理・解剖学的には説明できない状態を指す。以前は転換性障害と訳され、さらに以前には、転換ヒステリーとも呼ばれていたが、アメリカ精神医学会によるDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, fifth edition)の日本語版では、[[変換症]]との訳語が併記されるようになった。


 19世紀末、[[wj:ピエール・ジャネ|ジャネ]]は正常にあっては統合されている自己の[[意識]]、[[記憶]]、[[同一性]]、[[行動]]、[[運動]]、[[身体感覚]]などが、強い[[外傷体験]]によって分離するという[[解離]]の視点から[[ヒステリー]]を捉えようとした。
 19世紀末、[[wj:ピエール・ジャネ|ジャネ]]は正常にあっては統合されている自己の[[意識]]、[[記憶]]、[[同一性]]、[[行動]]、[[運動]]、[[身体感覚]]などが、強い[[外傷体験]]によって分離するという[[解離]]の視点から[[ヒステリー]]を捉えようとした。
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 Van der Hart, Oらによれば、解離の諸症状は精神に現れる[[精神表現性解離症状]](psychoform dissociative symptoms)と身体に現れる[[身体表現性解離症状]](somatoform dissociative symptoms)に分けられ、変換症は、このうち身体表現性解離に含まれる。また精神表現性解離と身体表現性解離は、それぞれ陰性(機能の喪失)と陽性(正常では存在しない症状の出現)とに分けることができる。通常これら身体表現性と精神表現性、陰性と陽性の症状は互いに交代し合い、時に同時に存在する<ref name=ref1>'''van der Hart O, Nijenhuis ERS, Steele K'''<br>The Haunted Self: Structural dissociation and the treatment of chronic traumatization. <br>''W.W.Norton & Company,'' New York, 2006<br>('''野間俊一、岡野憲一郎訳'''<br>構造的解離:慢性外傷の理解と治療 上巻 基本概念編<br>''星和書店''、東京、2011)</ref>。陰性の身体表現性解離症状には、運動機能の喪失、種々の感覚の喪失などがある。陽性の身体表現性解離症状には、「させられ」的な身体感覚、[[チック]]や震えなどの身体運動、[[非てんかん性発作]]、外傷的出来事の再体験による感覚や運動などがある。
 Van der Hart, Oらによれば、解離の諸症状は精神に現れる[[精神表現性解離症状]](psychoform dissociative symptoms)と身体に現れる[[身体表現性解離症状]](somatoform dissociative symptoms)に分けられ、変換症は、このうち身体表現性解離に含まれる。また精神表現性解離と身体表現性解離は、それぞれ陰性(機能の喪失)と陽性(正常では存在しない症状の出現)とに分けることができる。通常これら身体表現性と精神表現性、陰性と陽性の症状は互いに交代し合い、時に同時に存在する<ref name=ref1>'''van der Hart O, Nijenhuis ERS, Steele K'''<br>The Haunted Self: Structural dissociation and the treatment of chronic traumatization. <br>''W.W.Norton & Company,'' New York, 2006<br>('''野間俊一、岡野憲一郎訳'''<br>構造的解離:慢性外傷の理解と治療 上巻 基本概念編<br>''星和書店''、東京、2011)</ref>。陰性の身体表現性解離症状には、運動機能の喪失、種々の感覚の喪失などがある。陽性の身体表現性解離症状には、「させられ」的な身体感覚、[[チック]]や震えなどの身体運動、[[非てんかん性発作]]、外傷的出来事の再体験による感覚や運動などがある。
==症状==
==症状==
 運動症状には、[[脱力]]・[[麻痺]]、[[振戦]]や[[ジストニア]]、[[ミオクローヌス]]などの[[異常運動]]、[[協調運動]]の障害、異常な肢位、[[歩行障害]]や[[失立失歩]]、[[嚥下困難]]、[[失声]]や[[構音障害]]、[[けいれん]]発作などがある。また感覚症状には、[[知覚麻痺]]や[[感覚脱失]]、[[複視]]や[[筒状視野]]などの[[視力]]障害、[[聴覚]]の変化、減弱、欠如、[[嗅覚]]異常、[[失神]]や[[昏睡]]に似た[[無反応エピソード]]などがある。
 運動症状には、[[脱力]]・[[麻痺]]、[[振戦]]や[[ジストニア]]、[[ミオクローヌス]]などの[[異常運動]]、[[協調運動]]の障害、異常な肢位、[[歩行障害]]や[[失立失歩]]、[[嚥下困難]]、[[失声]]や[[構音障害]]、[[けいれん]]発作などがある。また感覚症状には、[[知覚麻痺]]や[[感覚脱失]]、[[複視]]や[[筒状視野]]などの[[視力]]障害、[[聴覚]]の変化、減弱、欠如、[[嗅覚]]異常、[[失神]]や[[昏睡]]に似た[[無反応エピソード]]などがある。

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