「病識」の版間の差分

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 歴史的に見れば、英語圏では病識は力動精神医学の視点から[[防衛機制]]と考えられてきた時代がある。[[精神病後抑うつ]]もその視点から解釈された。防衛機制の考え方は、病識欠如の一部を説明しており、実際のケースに治療的関わりを行っていく上で、現在でも有用であろう。
 歴史的に見れば、英語圏では病識は力動精神医学の視点から[[防衛機制]]と考えられてきた時代がある。[[精神病後抑うつ]]もその視点から解釈された。防衛機制の考え方は、病識欠如の一部を説明しており、実際のケースに治療的関わりを行っていく上で、現在でも有用であろう。
=== 神経認知機能 ===
=== 神経認知機能 ===
 主に左半身麻痺の人において、「[[麻痺]]があたかもないように振るまったり、麻痺の存在に関心を示さない」現象が観察されており、ある障害については自覚しているが、ある障害については気づかないといった選択性があることも知られている。1990年代には、[[神経認知機能]]が統合失調症の人の社会機能に大きな影響を与えるとして注目され、病識の客観的な尺度の開発と相まって、複数の実証的研究が報告された。しかし近年のメタ解析では、病識と神経認知機能の関連は小さいと報告されている<ref name=Nair2014><pubmed>24355529</pubmed></ref>10)。Cognitive insight についても同様である。そして、単一の神経認知機能では病識をうまく説明できないとして、2010年代には[[社会認知]]やメタ認知との関連性を検討する研究が増えてきた。Pijnenborgら<ref name=Pijnenborg2020><pubmed>32569706</pubmed></ref>11)は、21研究を[[メタ解析]]して、clinical insightは脳の特定の部位との関連は見出されず、全脳の[[灰白質]]及び[[白質[[の縮小と、前頭部の灰白質の減少と関連していたとしている。そもそも clinical insight は多様な脳機能を基盤にしていると思われる。一方cognitive insight は[[海馬]]及び[[背外側前頭前野]]の構造や機能との関連が見いだされ、自己に関連した情報を保持したり統合する機能と関連していると考えられる。
 主に左半身麻痺の人において、「[[麻痺]]があたかもないように振るまったり、麻痺の存在に関心を示さない」現象が観察されており、ある障害については自覚しているが、ある障害については気づかないといった選択性があることも知られている。1990年代には、[[神経認知機能]]が統合失調症の人の社会機能に大きな影響を与えるとして注目され、病識の客観的な尺度の開発と相まって、複数の実証的研究が報告された。しかし近年のメタ解析では、病識と神経認知機能の関連は小さいと報告されている<ref name=Nair2014><pubmed>24355529</pubmed></ref>10)。Cognitive insight についても同様である。そして、単一の神経認知機能では病識をうまく説明できないとして、2010年代には[[社会認知]]やメタ認知との関連性を検討する研究が増えてきた。Pijnenborgら<ref name=Pijnenborg2020><pubmed>32569706</pubmed></ref>11)は、21研究を[[メタ解析]]して、clinical insightは脳の特定の部位との関連は見出されず、全脳の[[灰白質]]及び[[白質]]の縮小と、前頭部の灰白質の減少と関連していたとしている。そもそも clinical insight は多様な脳機能を基盤にしていると思われる。一方cognitive insight は[[海馬]]及び[[背外側前頭前野]]の構造や機能との関連が見いだされ、自己に関連した情報を保持したり統合する機能と関連していると考えられる。


=== 精神障害についてのスティグマ ===
=== 精神障害についてのスティグマ ===

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