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逐次サンプリングモデルは,ドリフト拡散モデルだけではない。図4に示すように,逐次サンプリングモデルは,エビデンスの蓄積に関する基準が絶対的か相対的か,対象とする時間が連続的か離散的か,蓄積するエビデンスが連続的か離散的か,ドリフト率が固定か変化するかなどによって分類することができる。ドリフト拡散モデルは,逐次サンプリングモデルの代表的なモデルであるが,モデルの設定においては複数あるモデルの1つの形式であると言える(代表的な逐次サンプリングモデルのモデル間の差異については,Ratcliff & Smith(2004)<ref><pubmed>15065913</pubmed></ref>を参照)。 | 逐次サンプリングモデルは,ドリフト拡散モデルだけではない。図4に示すように,逐次サンプリングモデルは,エビデンスの蓄積に関する基準が絶対的か相対的か,対象とする時間が連続的か離散的か,蓄積するエビデンスが連続的か離散的か,ドリフト率が固定か変化するかなどによって分類することができる。ドリフト拡散モデルは,逐次サンプリングモデルの代表的なモデルであるが,モデルの設定においては複数あるモデルの1つの形式であると言える(代表的な逐次サンプリングモデルのモデル間の差異については,Ratcliff & Smith(2004)<ref><pubmed>15065913</pubmed></ref>を参照)。 | ||
[[Image:LBAの概要.png|thumb|420px|<b>図5.線形弾道蓄積モデルにおける反応と反応時間の生成過程</b>]] | [[Image:LBAの概要.png|thumb|420px|<b>図5.線形弾道蓄積モデルにおける反応と反応時間の生成過程</b>]] | ||
ドリフト拡散モデル以外の代表的な逐次サンプリングモデルとして,線形弾道蓄積モデル<ref><pubmed>18243170</pubmed></ref>がある。図5にあるように,線形弾道蓄積モデルは,ドリフト拡散モデルと類似しているが,エビデンスの蓄積の基準が絶対的なことと確率的ではない点が異なる。ドリフト拡散モデルでは,反応はエビデンス蓄積が上の境界と下の境界のどちらに到達するかで決まる相対的なものであった。一方,線形弾道蓄積モデルでは,それぞれの反応は独立してエビデンスの蓄積を行って,最終的に先に閾値(<math>b</math>)に到達した反応が出力される(図5の場合,先に<math>b</math>に到達した反応Aが出力される)。エビデンスの蓄積が始まる点を開始点(<math>a</math>)と呼び,選択肢で同一のこともあるが,異なることもある。開始点の位置の違いは,エビデンスの蓄積の前に存在する選択肢に対するバイアスとして解釈される。ドリフト拡散モデルと同様にエビデンスの蓄積の速さはドリフト率(<math>d</math>)が決めるが,蓄積過程は線形かつ非確率的である。各試行のドリフト率(<math>d</math>)は,平均<math>v</math>,標準偏差<math>s</math>の正規分布に従い,各試行の開始点(<math>a</math>)は,0から<math>A</math>(開始点の上限)の一様分布に従う。決定時間は,<math>(b-a)/d</math>で求めることができ,非決定時間 (<math>\tau</math>)は,全試行で一定とする。<math>a</math>と<math>d</math>は,推定するパラメータではなく,<math>v, b, A, s, \tau</math>が推定するパラメータになる。線形弾道蓄積モデルは,ドリフト拡散モデルよりも推定するパラメータが少なく,2選択肢以外の状況にも適用できるので,ドリフト拡散モデルと合わせて今後の活用が期待できる。 | ドリフト拡散モデル以外の代表的な逐次サンプリングモデルとして,線形弾道蓄積モデル<ref><pubmed>18243170</pubmed></ref>がある。図5にあるように,線形弾道蓄積モデルは,ドリフト拡散モデルと類似しているが,エビデンスの蓄積の基準が絶対的なことと確率的ではない点が異なる。ドリフト拡散モデルでは,反応はエビデンス蓄積が上の境界と下の境界のどちらに到達するかで決まる相対的なものであった。一方,線形弾道蓄積モデルでは,それぞれの反応は独立してエビデンスの蓄積を行って,最終的に先に閾値(<math>b</math>)に到達した反応が出力される(図5の場合,先に<math>b</math>に到達した反応Aが出力される)。エビデンスの蓄積が始まる点を開始点(<math>a</math>)と呼び,選択肢で同一のこともあるが,異なることもある。開始点の位置の違いは,エビデンスの蓄積の前に存在する選択肢に対するバイアスとして解釈される。ドリフト拡散モデルと同様にエビデンスの蓄積の速さはドリフト率(<math>d</math>)が決めるが,蓄積過程は線形かつ非確率的である。各試行のドリフト率(<math>d</math>)は,平均<math>v</math>,標準偏差<math>s</math>の正規分布に従い,各試行の開始点(<math>a</math>)は,0から<math>A</math>(開始点の上限)の一様分布に従う。決定時間は,<math>(b-a)/d</math>で求めることができ,非決定時間 (<math>\tau</math>)は,全試行で一定とする。<math>a</math>と<math>d</math>は,推定するパラメータではなく,<math>v, b, A, s, \tau</math>が推定するパラメータになる。線形弾道蓄積モデルは,ドリフト拡散モデルよりも推定するパラメータが少なく,2選択肢以外の状況にも適用できるので,ドリフト拡散モデルと合わせて今後の活用が期待できる。 |
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