「くも膜下出血」の版間の差分

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 脳血管攣縮による遅発性虚血性神経障害を呈すると、重症例では[[脳梗塞]]に移行する。Dolschらによると遅発性神経学的脱落症状は32.5 %に認められ、そのうちの30%が死亡、34%に永続的な神経脱落症状が生じた<ref name=Dorsch1994><pubmed>18638721</pubmed></ref>。脳血管攣縮の頻度は、脳血管撮影上は50%以上、症候性のものは25.9 % 、CT上は全体で26% 、そのうち[[脳底槽]]で[[血腫量]]の多いくも膜下出血 (Fisher grade 3に相当)では38.5 %に認められた<ref name=Adams1987><pubmed>3658161</pubmed></ref>。治療方法による脳血管攣縮の頻度は、クリッピング術、コイル塞栓術で脳梗塞の発生頻度や予後に有意な差はみられないとする報告もあれば血管内治療で優れるとするものもある<ref name=Goddard2004><pubmed>15146002</pubmed></ref><ref name=Rabinstein2003><pubmed>12593618</pubmed></ref>。
 脳血管攣縮による遅発性虚血性神経障害を呈すると、重症例では[[脳梗塞]]に移行する。Dolschらによると遅発性神経学的脱落症状は32.5 %に認められ、そのうちの30%が死亡、34%に永続的な神経脱落症状が生じた<ref name=Dorsch1994><pubmed>18638721</pubmed></ref>。脳血管攣縮の頻度は、脳血管撮影上は50%以上、症候性のものは25.9 % 、CT上は全体で26% 、そのうち[[脳底槽]]で[[血腫量]]の多いくも膜下出血 (Fisher grade 3に相当)では38.5 %に認められた<ref name=Adams1987><pubmed>3658161</pubmed></ref>。治療方法による脳血管攣縮の頻度は、クリッピング術、コイル塞栓術で脳梗塞の発生頻度や予後に有意な差はみられないとする報告もあれば血管内治療で優れるとするものもある<ref name=Goddard2004><pubmed>15146002</pubmed></ref><ref name=Rabinstein2003><pubmed>12593618</pubmed></ref>。


 脳血管攣縮の重症度とくも膜下腔の血管周囲の血腫量との間には相関があるため<ref name=Dehdashti2004><pubmed>14530638</pubmed></ref>早期手術の目的の一つとして脳槽内への]]組織プラスミノゲンアクチベーター]] ([[t-PA]]) の術中投与<ref name=Findlay1995><pubmed>8587685</pubmed></ref>(保険適応外)や、手術時に設置した[[脳槽ドレナージ]]を用いた[[術後ウロキナーゼ灌流療法]](保険適応外)の脳血管攣縮予防における有用性も報告されている<ref name=Kodama2000><pubmed>10713187</pubmed></ref>。
 脳血管攣縮の重症度とくも膜下腔の血管周囲の血腫量との間には相関があるため<ref name=Dehdashti2004><pubmed>14530638</pubmed></ref>早期手術の目的の一つとして脳槽内への[[組織プラスミノゲンアクチベーター]] ([[t-PA]]) の術中投与<ref name=Findlay1995><pubmed>8587685</pubmed></ref>(保険適応外)や、手術時に設置した[[脳槽ドレナージ]]を用いた[[術後ウロキナーゼ灌流療法]](保険適応外)の脳血管攣縮予防における有用性も報告されている<ref name=Kodama2000><pubmed>10713187</pubmed></ref>。
脳血管攣縮に対する治療では、薬物療法としてわが国では[[ニゾフェノン]]<ref name=Saito1983><pubmed>6149485</pubmed></ref>、[[ファスジル]]<ref name=Shibuya1992><pubmed>1545249</pubmed></ref>、[[オザグレルナトリウム]]<ref name=Suzuki1989><pubmed>2569686</pubmed></ref>が承認・使用されている。海外ではカルシウムチャンネル拮抗薬[[ニモジピン]]が有効と報告されている<ref name=Allen1983><pubmed>6338383</pubmed></ref>が、ニモジピンはわが国では未承認であり、他の[[カルシウムチャンネル拮抗薬]]の有効性は示されていない。また[[スタチン]]系製剤の投与で、脳血管攣縮の頻度および遅発性脳虚血症状の頻度がともに減少することが報告されている<ref name=Tseng2005><pubmed>16049199</pubmed></ref>。
脳血管攣縮に対する治療では、薬物療法としてわが国では[[ニゾフェノン]]<ref name=Saito1983><pubmed>6149485</pubmed></ref>、[[ファスジル]]<ref name=Shibuya1992><pubmed>1545249</pubmed></ref>、[[オザグレルナトリウム]]<ref name=Suzuki1989><pubmed>2569686</pubmed></ref>が承認・使用されている。海外ではカルシウムチャンネル拮抗薬[[ニモジピン]]が有効と報告されている<ref name=Allen1983><pubmed>6338383</pubmed></ref>が、ニモジピンはわが国では未承認であり、他の[[カルシウムチャンネル拮抗薬]]の有効性は示されていない。また[[スタチン]]系製剤の投与で、脳血管攣縮の頻度および遅発性脳虚血症状の頻度がともに減少することが報告されている<ref name=Tseng2005><pubmed>16049199</pubmed></ref>。