「神経性やせ症」の版間の差分

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== 診断  ==
== 診断  ==


 神経性やせ症の診断について、表5に[[DSM-5]]<ref>American Psychiatric Association : Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed (DSM-5). American Psychiatric Publishing, Arlington, 2013</ref>と[[ICD-11]]<ref><pubmed>31084617<pubmed></ref>の診断基準を示した。それぞれの診断基準ですべて満たす場合に神経性やせ症と診断され、一部の項目を満たさない場合には、DSM-IVで特定不能の摂食障害、ICD-10で非定型神経性やせ症と診断される。DSM-IVの診断基準では、さらに過食や排出行動の有無により、摂食制限型と過食/排出型に分けられている。
 神経性やせ症の診断について、表5に[[DSM-5]]<ref>American Psychiatric Association : Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed (DSM-5). American Psychiatric Publishing, Arlington, 2013</ref>と[[ICD-11]]<ref><pubmed>31084617<pubmed></ref>の診断基準を示した。


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:過食/排出型:この3ヶ月間に過食や排出行動(自己誘発性嘔吐、下剤や利尿剤、浣腸剤の誤用など)を繰り返している。<br>
:過食/排出型:この3ヶ月間に過食や排出行動(自己誘発性嘔吐、下剤や利尿剤、浣腸剤の誤用など)を繰り返している。<br>
:該当すれば特定せよ:<br>
:該当すれば特定せよ:<br>
:部分寛解:以前には上記A、B、Cの全ての基準を満たしたが、今はA基準を一定期間満たさず、BまたはCの基準を満たしている。<br>
:部分寛解:以前には上記A、B、Cの全ての基準を満たしたが、今はA基準を一定期間満たさず、BまたはCの基準を満たしている。<br>
:完全寛解:以前には上記A、B、Cの全ての基準を満たしたが、今はどの基準も満たしていない。<br>
:完全寛解:以前には上記A、B、Cの全ての基準を満たしたが、今はどの基準も満たしていない。<br>


'''重症度について:'''<br>
'''重症度について:'''<br>
:重症度の最低レベルを、成人の場合にBMIで(以下参照)、児童・思春期の場合にBMIパ-センタイルで決める。以下の範囲はWHOの成人のやせ分類から導きだされている。児童・思春期の場合には、これに相当するBMIパ-センタイルを用いる。重症度は、臨床症状、機能障害の程度、管理の必要度に応じて増す。<br>
:重症度の最低レベルを、成人の場合にbody mass index (BMI)で(以下参照)、児童・思春期の場合にBMIパ-センタイルで決める。以下の範囲はWHOの成人のやせ分類から導きだされている。児童・思春期の場合には、これに相当するBMIパ-センタイルを用いる。重症度は、臨床症状、機能障害の程度、管理の必要度に応じて増す。<br>
:軽度:BMI ≧ 17 kg/m<sup>2</sup><br>
:軽度:BMI ≧ 17 kg/m<sup>2</sup><br>
:中等度:BMI 16-16.99 kg/m<sup>2</sup><br>
:中等度:BMI 16-16.99 kg/m<sup>2</sup><br>
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#身長、年齢、発達段階、および体重の履歴に対して著しく低い体重。これは、食物入手困難や内科的および精神疾患によらない。低体重は、成人においてbody mass index (BMI) 18.5 kg/m2未満、小児や思春期では各年齢のBMIの5パーセンタイル以下である。急激な体重減少(たとえば、6か月以内に元の体重の20%以上減少)も、他の診断基準が当てはまっていれば低体重の基準に当てはまる。子供や思春期では、体重減少ではなく、発達段階で期待される体重を得られない場合がある。
#身長、年齢、発達段階、および体重の履歴に対して著しく低い体重。これは、食物入手困難や内科的および精神疾患によらない。低体重は、成人においてBMI 18.5 kg/m<sup>2</sup>未満、小児や思春期では各年齢のBMIの5パーセンタイル以下である。急激な体重減少(たとえば、6か月以内に元の体重の20%以上減少)も、他の診断基準が当てはまっていれば低体重の基準に当てはまる。子供や思春期では、体重減少ではなく、発達段階で期待される体重を得られない場合がある。
#異常な低体重の達成および維持することを目的とした、食事制限やその他の行動が持続し、典型的には体重増加に対する極度の恐怖を伴う。行動はエネルギー摂取量を減らすことを目的として、絶食、低カロリー食品の選択、少量の食物の極端に緩慢な摂取、および食品の隠蔽または吐き出し、ならびに自己誘発性嘔吐および下剤、利尿薬や浣腸、糖尿病患者のインスリン投与の省略などがある。またエネルギー消費を増加させることを目的として、過剰な運動、過活動、意図的な寒冷への曝露、エネルギー消費を上げる薬剤(例:精神刺激薬、やせ薬、体重を減らすためのハーブ製品、甲状腺ホルモン剤など)の使用もある。
#異常な低体重の達成および維持することを目的とした、食事制限やその他の行動が持続し、典型的には体重増加に対する極度の恐怖を伴う。行動はエネルギー摂取量を減らすことを目的として、絶食、低カロリー食品の選択、少量の食物の極端に緩慢な摂取、および食品の隠蔽または吐き出し、ならびに自己誘発性嘔吐および下剤、利尿薬や浣腸、糖尿病患者のインスリン投与の省略などがある。またエネルギー消費を増加させることを目的として、過剰な運動、過活動、意図的な寒冷への曝露、エネルギー消費を上げる薬剤(例:精神刺激薬、やせ薬、体重を減らすためのハーブ製品、甲状腺ホルモン剤など)の使用もある。
#低体重は過大評価されており、人の自己評価の中心であるか、自分の体重や体型が正常または過剰であると不正確に認識されている。体重や体型へのこだわりについて明確に述べない場合、体重計で体重を繰り頻回にチェックする、巻き尺や鏡で体形をチェックする、食品のカロリー含有量を常に確認する、体重を減らす方法を調べる、または自宅に鏡を置くことを拒否する、ぴったりした服を避ける、体重を知ることを拒否、特定のサイズの服を購入するなどの極端な回避行動に現れる。
#低体重は過大評価されており、人の自己評価の中心であるか、自分の体重や体型が正常または過剰であると不正確に認識されている。体重や体型へのこだわりについて明確に述べない場合、体重計で体重を繰り頻回にチェックする、巻き尺や鏡で体形をチェックする、食品のカロリー含有量を常に確認する、体重を減らす方法を調べる、または自宅に鏡を置くことを拒否する、ぴったりした服を避ける、体重を知ることを拒否、特定のサイズの服を購入するなどの極端な回避行動に現れる。
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=== 鑑別診断 ===
=== 鑑別診断 ===
 やせをきたす身体疾患や精神疾患が鑑別の対象となる。身体疾患の鑑別に際して末梢血、血清蛋白質、電解質、肝・腎機能、脂質、消化器系、循環器系の検査や頭部CTスキャンなどがある。これらの諸検査は、症状や徴候、緊急度に応じて適宜選択して行うもので、闇雲に行うものではない。 やせをきたす内分泌疾患との鑑別については、 必ずしも内分泌学的検査によらなくても症状や徴候によって鑑別できる。やせをきたす精神疾患との鑑別において、神経性やせ症ほどやせる疾患は、統合失調症の拒食状態ぐらいで、容易に鑑別できる。
 やせをきたす身体疾患や[[精神疾患]]が鑑別の対象となる。身体疾患の鑑別に際して末梢血、血清タンパク質、電解質、肝・腎機能、脂質、消化器系、循環器系の検査や頭部[[CT]]スキャンなどがある。これらの諸検査は、症状や徴候、緊急度に応じて適宜選択して行うもので、闇雲に行うものではない。やせをきたす内分泌疾患との鑑別については、必ずしも[[内分泌]]学的検査によらなくても症状や徴候によって鑑別できる。やせをきたす精神疾患との鑑別において、神経性やせ症ほどやせる疾患は、[[統合失調症]]の拒食状態ぐらいで、容易に鑑別できる。


== 治療  ==
== 治療  ==

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