「ヒストン脱メチル化酵素」の版間の差分

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== 歴史・背景 ==
== 歴史・背景 ==
[[ファイル:Methylation-lysine.PNG|thumb|'''図1. メチル化リジン'''<br>Wikipediaより。]]
[[ファイル:Methylation-lysine.PNG|thumb|'''図1. メチル化リジン'''<br>Wikipediaより。]]
 ヒストン脱メチル化酵素の探索は、1964年に遊離[http://wj:メチルリシン モノ]/[[wj:メチルリシン|ジメチル化リジン]]('''図1''')を脱[[ヒストン#.E3.83.A1.E3.83.81.E3.83.AB.E5.8C.96|メチル化]]する酵素の存在が報告されたことに始まる<ref name=Kim1964><pubmed>14257609</pubmed></ref>(ref 1)。その後、メチル化ヒストンを脱メチル化する酵素の存在を示唆する報告もなされ<ref name=Paik1973><pubmed>4704060</pubmed></ref><ref name=Paik1974><pubmed>4441079</pubmed></ref>(ref 2, 3)、小分子の脱メチル化が[[酸化酵素]]によって触媒されることなどから、脱メチル化反応も酸化酵素によって誘導されるのではと考えられるようになった<ref name=Chinenov2002><pubmed>11893502</pubmed></ref><ref name=Bannister2002><pubmed>12110177</pubmed></ref>(ref 4, 5)。しかし、その分子実体は長年にわたり不明であった。
 ヒストン脱メチル化酵素の探索は、1964年に遊離[[wj:メチルリシン|モノ]]/[[wj:メチルリシン|ジメチル化リジン]]('''図1''')を脱[[ヒストン#.E3.83.A1.E3.83.81.E3.83.AB.E5.8C.96|メチル化]]する酵素の存在が報告されたことに始まる<ref name=Kim1964><pubmed>14257609</pubmed></ref>(ref 1)。その後、メチル化ヒストンを脱メチル化する酵素の存在を示唆する報告もなされ<ref name=Paik1973><pubmed>4704060</pubmed></ref><ref name=Paik1974><pubmed>4441079</pubmed></ref>(ref 2, 3)、小分子の脱メチル化が[[酸化酵素]]によって触媒されることなどから、脱メチル化反応も酸化酵素によって誘導されるのではと考えられるようになった<ref name=Chinenov2002><pubmed>11893502</pubmed></ref><ref name=Bannister2002><pubmed>12110177</pubmed></ref>(ref 4, 5)。しかし、その分子実体は長年にわたり不明であった。


 そのような中、Shiらの研究グループは、フラビンアデニンジヌクレオチド (flavin adenine dinucleotide, FAD)依存的アミン酸化酵素に配列が類似している[[KIAA0601]]というタンパク質が、様々な[[ヒストン脱アセチル化酵素]]複合体の構成因子であることに注目し、この分子のヒストン脱メチル化酵素としての可能性を調査した。その結果、KIAA0601がモノ/ジメチル化されたヒストン3の4番目のリジン(H3K4)の脱メチル化反応を触媒する酵素であることを示し、[[リジン特異的脱メチル化酵素]] ([[lysine-specific demethylase 1]], [[LSD1]])と名付け、2004年に報告した<ref name=Shi2004><pubmed>15620353</pubmed></ref>(ref 6)。またこの発見により、それまで不可逆的な修飾であると考えられていたヒストンのメチル化は、アセチル化同様に可逆的な修飾であることが証明された。
 そのような中、Shiらの研究グループは、フラビンアデニンジヌクレオチド (flavin adenine dinucleotide, FAD)依存的アミン酸化酵素に配列が類似している[[KIAA0601]]というタンパク質が、様々な[[ヒストン脱アセチル化酵素]]複合体の構成因子であることに注目し、この分子のヒストン脱メチル化酵素としての可能性を調査した。その結果、KIAA0601がモノ/ジメチル化されたヒストン3の4番目のリジン(H3K4)の脱メチル化反応を触媒する酵素であることを示し、[[リジン特異的脱メチル化酵素]] ([[lysine-specific demethylase 1]], [[LSD1]])と名付け、2004年に報告した<ref name=Shi2004><pubmed>15620353</pubmed></ref>(ref 6)。またこの発見により、それまで不可逆的な修飾であると考えられていたヒストンのメチル化は、アセチル化同様に可逆的な修飾であることが証明された。


 最初のヒストン脱メチル化酵素の発見から2年後、Zhangらの研究グループによって、ヒストンH3の36番目のリジン残基(H3K36)を特異的に脱メチル化する新規酵素[[Jumonjiドメイン含有タンパク質ファミリー]] ([[JmjC Domain-Containing Histone Demethylation Protein 1]], [[JHDM1]]/[[FBXL11]])が、[[クロマトグラフィー]]を用いた生化学的手法により精製された<ref name=Tsukada2006><pubmed>16362057</pubmed></ref>(Ref 7)。また、JHDM1が持っているJumonji-C (Jmjc)ドメインは、Fe(II)及び[[α-ケトグルタル酸]](α-KG) 依存的にヒストン脱メチル化を誘導し、この酵素活性が[[酵母]]から[[ヒト]]まで保存されていることが明らかにされた<ref name=Tsukada2006><pubmed>16362057</pubmed></ref>
 最初のヒストン脱メチル化酵素の発見から2年後、Zhangらの研究グループによって、ヒストンH3の36番目のリジン残基(H3K36)を特異的に脱メチル化する新規酵素[[Jumonjiドメイン含有タンパク質ファミリー]] ([[JmjC Domain-Containing Histone Demethylation Protein 1]], [[JHDM1]]/[[FBXL11]])が、[[クロマトグラフィー]]を用いた生化学的手法により精製された<ref name=Tsukada2006><pubmed>16362057</pubmed></ref>(Ref 7)。また、JHDM1が持っているJumonji-C (Jmjc)ドメインは、Fe(II)及び[[α-ケトグルタル酸]]依存的にヒストン脱メチル化を誘導し、この酵素活性が[[酵母]]から[[ヒト]]まで保存されていることが明らかにされた<ref name=Tsukada2006><pubmed>16362057</pubmed></ref>
(ref 7)。
(ref 7)。


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