「目的指向行動」の版間の差分

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 目的指向行動の動機である目的([[報酬]])の価値を低下させたときに行動の実行が抑制されるかどうかで目的指向性を評価する手法を[[価値減弱試験]](outcome devaluation test)と呼ぶ。例えば、[[オペラント条件づけ]]により、レバーを押すと報酬としてエサが獲得できるという学習を行った個体に対し、レバー押し実験前に報酬のエサを自由に摂食させると、満腹によってエサの報酬価値は相対的に低下する([[devaluation]])。この条件でレバー押し実験を行った時のレバー押し回数を、devaluationを行っていない条件でのレバー押し回数と比較する。仮に、実験個体のレバー押し行動が目的指向的であった場合、レバー押し行動(response)の動機はエサの獲得という結果(outcome)の相対的価値に依存するため、エサの報酬価値が低下するとレバー押し回数は減少すると予測される。一方で、習慣的にレバー押しを行っていた場合は、レバー押し実験装置への移動という状況刺激(stimulus)に応答してレバー押し行動(response)を行うというS-R連関に従っており、報酬価値の変動には影響されにくい。よって、devaluationによるレバー押し回数の変動は、目的指向行動と比較して小さくなる。
 目的指向行動の動機である目的([[報酬]])の価値を低下させたときに行動の実行が抑制されるかどうかで目的指向性を評価する手法を[[価値減弱試験]](outcome devaluation test)と呼ぶ。例えば、[[オペラント条件づけ]]により、レバーを押すと報酬としてエサが獲得できるという学習を行った個体に対し、レバー押し実験前に報酬のエサを自由に摂食させると、満腹によってエサの報酬価値は相対的に低下する([[devaluation]])。この条件でレバー押し実験を行った時のレバー押し回数を、devaluationを行っていない条件でのレバー押し回数と比較する。仮に、実験個体のレバー押し行動が目的指向的であった場合、レバー押し行動(response)の動機はエサの獲得という結果(outcome)の相対的価値に依存するため、エサの報酬価値が低下するとレバー押し回数は減少すると予測される。一方で、習慣的にレバー押しを行っていた場合は、レバー押し実験装置への移動という状況刺激(stimulus)に応答してレバー押し行動(response)を行うというS-R連関に従っており、報酬価値の変動には影響されにくい。よって、devaluationによるレバー押し回数の変動は、目的指向行動と比較して小さくなる。


 比較的単純な試験デザインであることから、[[げっ歯類]]でも行いやすい試験方法であり、[[破壊実験]]、[[オプトジェネティクス]]や[[ケモジェネティクス]]を用いた神経活動操作、[[Ca2+インジケーター]]を用いたin vivo神経活動記録などの多くの検討が行われている。[[眼窩前頭皮質]]、[[内側前頭前皮質]]、[[島皮質]]、[[線条体]]、[[視床]]、[[扁桃体]][[基底外側部]]、[[海馬]]など、様々な脳領域がdevaluationに対する感受性に関与することが報告されている<ref name=Gremel2013><pubmed>23921250</pubmed></ref><ref name=Tran-Tu-Yen2009><pubmed>19614748</pubmed></ref><ref name=Smith2012><pubmed>23112197</pubmed></ref><ref name=Hart2016><pubmed>27881782</pubmed></ref><ref name=Parkes2013><pubmed>23678118</pubmed></ref><ref name=Vandaele2023><pubmed>36636348</pubmed></ref><ref name=Bradfield2017><pubmed>28242795</pubmed></ref>。
 比較的単純な試験デザインであることから、[[げっ歯類]]でも行いやすい試験方法であり、[[破壊実験]]、[[オプトジェネティクス]]や[[ケモジェネティクス]]を用いた神経活動操作、[[Ca2+インジケーター|Ca<sup>2+</sup>インジケーター]]を用いたin vivo神経活動記録などの多くの検討が行われている。[[眼窩前頭皮質]]、[[内側前頭前皮質]]、[[島皮質]]、[[線条体]]、[[視床]]、[[扁桃体]][[基底外側部]]、[[海馬]]など、様々な脳領域がdevaluationに対する感受性に関与することが報告されている<ref name=Gremel2013><pubmed>23921250</pubmed></ref><ref name=Tran-Tu-Yen2009><pubmed>19614748</pubmed></ref><ref name=Smith2012><pubmed>23112197</pubmed></ref><ref name=Hart2016><pubmed>27881782</pubmed></ref><ref name=Parkes2013><pubmed>23678118</pubmed></ref><ref name=OHare2016><pubmed>26804995</pubmed></ref><ref name=Vandaele2023><pubmed>36636348</pubmed></ref><ref name=Bradfield2017><pubmed>28242795</pubmed></ref>。


=== R-O連関変更時の柔軟性の評価 ===
=== R-O連関変更時の柔軟性の評価 ===

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