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==疾患との関わり== | ==疾患との関わり== | ||
===脆弱X精神遅滞症候群=== | ===脆弱X精神遅滞症候群=== | ||
CPEBタンパク質が特定のヒト疾患の原因因子として報告された例はこれまでのところないが、いくつかの疾患との関連が報告されている。CPEB1は脆弱X精神遅滞症候群(FXS)の原因因子であるRNA結合タンパク質FMRPと相互作用する<ref name=Udagawa2013><pubmed>24141422</pubmed></ref>34。FXSはFMRPの機能欠失により発症する。FMRPは翻訳抑制因子として機能し、FMRPノックアウトマウスの脳や、FXS患者由来の細胞ではタンパク質合成が亢進していることが報告されており、これが病態の一つと考えられている<ref name=Darnell2013><pubmed>23584741</pubmed></ref> | CPEBタンパク質が特定のヒト疾患の原因因子として報告された例はこれまでのところないが、いくつかの疾患との関連が報告されている。CPEB1は脆弱X精神遅滞症候群(FXS)の原因因子であるRNA結合タンパク質FMRPと相互作用する<ref name=Udagawa2013><pubmed>24141422</pubmed></ref>34。FXSはFMRPの機能欠失により発症する。FMRPは翻訳抑制因子として機能し、FMRPノックアウトマウスの脳や、FXS患者由来の細胞ではタンパク質合成が亢進していることが報告されており、これが病態の一つと考えられている<ref name=Darnell2013><pubmed>23584741</pubmed></ref>35。FMRPはシナプス刺激に応答した翻訳の過剰な活性化を抑える働きを持つと考えられている。一方CPEBはFMRPとは逆にシナプス刺激に応答して翻訳を促進する機能を持つ。FMRPとCPEB1は多くの共通した標的mRNAを持つことから両者が共通した標的mRNA発現のバランスを調整していると考えられる。実際、FMRPと反対の働きをするCPEB1の発現をFMRPノックアウトマウスにおいて抑制することにより、亢進したタンパク質合成レベルが正常レベルに低下し、FXS病態が改善されることが示されている<ref name=Udagawa2013 />34。 | ||
===ハンチントン病=== | ===ハンチントン病=== | ||
ハンチントン病(HD)患者やHDのマウスモデルの線条体ではCPEB1の発現が上昇し、CPEB4の発現が低下していることが報告されている<ref name=Pico2021><pubmed>34586830</pubmed></ref>36。この発現変化により全転写産物の17.3%のポリA鎖長が変化し、多くの神経変性疾患関連因子の発現が変動していることが明らかにされた。興味深いことに、このCPEB1 ,4の発現変化により別の神経疾患であるビオチン- | ハンチントン病(HD)患者やHDのマウスモデルの線条体ではCPEB1の発現が上昇し、CPEB4の発現が低下していることが報告されている<ref name=Pico2021><pubmed>34586830</pubmed></ref>36。この発現変化により全転写産物の17.3%のポリA鎖長が変化し、多くの神経変性疾患関連因子の発現が変動していることが明らかにされた。興味深いことに、このCPEB1 ,4の発現変化により別の神経疾患であるビオチン-チアミン応答性大脳基底核疾患の原因となるSLC19Cの発現が低下することが見出された。さらに、HDマウスモデルにチアミンピロリン酸を処理することにより一部のHD様表現系が改善されることが明らかにされた<ref name=Pico2021 />36。 | ||
===その他=== | ===その他=== |