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しかしながら、プリオンドメインが別のタンパク質との相互作用を介して機能している可能性もあり、プリオン仮説についてはさらなる検証が必要と考えられる。Orb2によるオリゴマー化を介したポリA鎖制御機構についても慎重な検証が必要である。なお、哺乳類のCPEB1ではプリオン様の性質は示されておらず、哺乳類CPEB1による翻訳制御と学習と記憶の制御機構がアメフラシのApCPEBによるポリA鎖制御機構と同様であるかは明らかでない。 | しかしながら、プリオンドメインが別のタンパク質との相互作用を介して機能している可能性もあり、プリオン仮説についてはさらなる検証が必要と考えられる。Orb2によるオリゴマー化を介したポリA鎖制御機構についても慎重な検証が必要である。なお、哺乳類のCPEB1ではプリオン様の性質は示されておらず、哺乳類CPEB1による翻訳制御と学習と記憶の制御機構がアメフラシのApCPEBによるポリA鎖制御機構と同様であるかは明らかでない。 | ||
一方、哺乳類のCPEB2-4はN末端ドメインを介して液-液相分離による液滴を形成し、その機能に重要な役割を果たす可能性が指摘されている<ref name=Guillen-Boixet2016><pubmed>27802129</pubmed></ref>。CPEB4はN末端の天然変性領域を介して液-液相分離による液滴を形成するが、細胞周期の[[M期]]において[[Cdk1]]および[[Erk2]]によりN末端ドメインが過リン酸化されるとモノマー型に変換され活性化されることが報告されている<ref name=Guillen-Boixet2016><pubmed>27802129</pubmed></ref> | 一方、哺乳類のCPEB2-4はN末端ドメインを介して液-液相分離による液滴を形成し、その機能に重要な役割を果たす可能性が指摘されている<ref name=Guillen-Boixet2016><pubmed>27802129</pubmed></ref>。CPEB4はN末端の天然変性領域を介して液-液相分離による液滴を形成するが、細胞周期の[[M期]]において[[Cdk1]]および[[Erk2]]によりN末端ドメインが過リン酸化されるとモノマー型に変換され活性化されることが報告されている<ref name=Guillen-Boixet2016><pubmed>27802129</pubmed></ref>。CPEB2-4による翻訳制御機構の詳細はまだ明らかでないが、[[CPEB3]]ノックアウトマウスは海馬依存的な学習と記憶を亢進させることが報告されている<ref name=Chao2013><pubmed>24155305</pubmed></ref>。 | ||
===その他=== | ===その他=== | ||
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===ハンチントン病=== | ===ハンチントン病=== | ||
[[ハンチントン病]]患者やマウスモデルの[[線条体]]ではCPEB1の発現が上昇し、CPEB4の発現が低下していることが報告されている<ref name=Pico2021><pubmed>34586830</pubmed></ref>。この発現変化により全転写産物の17.3%のポリA鎖長が変化し、多くの[[神経変性疾患]]関連因子の発現が変動していることが明らかにされた。興味深いことに、このCPEB1 ,4の発現変化により別の神経疾患である[[ビオチン]]-[[チアミン]]応答性[[大脳基底核]]疾患の原因となる[[SLC19C]]の発現が低下することが見出された。さらに、ハンチントン病マウスモデルにチアミンピロリン酸を処理することにより一部のハンチントン病様表現系が改善されることが明らかにされた<ref name=Pico2021 /> | [[ハンチントン病]]患者やマウスモデルの[[線条体]]ではCPEB1の発現が上昇し、CPEB4の発現が低下していることが報告されている<ref name=Pico2021><pubmed>34586830</pubmed></ref>。この発現変化により全転写産物の17.3%のポリA鎖長が変化し、多くの[[神経変性疾患]]関連因子の発現が変動していることが明らかにされた。興味深いことに、このCPEB1 ,4の発現変化により別の神経疾患である[[ビオチン]]-[[チアミン]]応答性[[大脳基底核]]疾患の原因となる[[SLC19C]]の発現が低下することが見出された。さらに、ハンチントン病マウスモデルにチアミンピロリン酸を処理することにより一部のハンチントン病様表現系が改善されることが明らかにされた<ref name=Pico2021 />。 | ||
===その他=== | ===その他=== |