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== エコーロケーション音声と聴覚系の適応 == | == エコーロケーション音声と聴覚系の適応 == | ||
コウモリの超音波音声は口または鼻から発され、通常複数の倍音を伴う(図1)<ref name=Grinnell2018 /><ref name=Yamada2016><pubmed>27566319</pubmed></ref>[1,2]。コウモリがエコーロケーションに用いる音声は、彼らの採餌生態に適応していると考えられている<ref name=Neuweiler1984>Neuweiler, G. (1984).<br>Foraging, echolocation and audition in bats. Naturwissenschaften. 1984;71: 446-455. doi:10.1007/BF00455897"</ref>[3]。開けた空間で飛翔昆虫を捉える種は、採餌飛行時には数ミリ秒から二十ミリ秒ほどの長さの周波数変調(frequency-modulated, 以下FM)型の音声を放射する。FM型の音声を使用するコウモリはFMコウモリと言われ、エコーロケーションを行う多くの種がFMコウモリに含まれる。代表的な種は、オオクビワコウモリ(Eptesicus fuscus)やトビイロホオヒゲコウモリ(Myotis | コウモリの超音波音声は口または鼻から発され、通常複数の倍音を伴う(図1)<ref name=Grinnell2018 /><ref name=Yamada2016><pubmed>27566319</pubmed></ref>[1,2]。コウモリがエコーロケーションに用いる音声は、彼らの採餌生態に適応していると考えられている<ref name=Neuweiler1984>Neuweiler, G. (1984).<br>Foraging, echolocation and audition in bats. Naturwissenschaften. 1984;71: 446-455. doi:10.1007/BF00455897"</ref>[3]。開けた空間で飛翔昆虫を捉える種は、採餌飛行時には数ミリ秒から二十ミリ秒ほどの長さの周波数変調(frequency-modulated, 以下FM)型の音声を放射する。FM型の音声を使用するコウモリはFMコウモリと言われ、エコーロケーションを行う多くの種がFMコウモリに含まれる。代表的な種は、オオクビワコウモリ(Eptesicus fuscus)やトビイロホオヒゲコウモリ(Myotis lucifugus)などである。 | ||
一方で、茂みの中で羽ばたく昆虫を捕食する種は、周波数定常(constant-frequency; 以下CF)型とFM型の組み合わせ音を用いる。茂みのような複雑な環境では、標的となる昆虫からのエコーに加え、エコーロケーションによる検知可能な範囲に存在する物体からの大量のエコー(クラッター)も同時にコウモリへ返ってくる。CF-FM型の音声をエコーロケーションに用いる種(以下、CF-FMコウモリ)には、キクガシラコウモリ属とカグラコウモリ属のコウモリ、ウオクイコウモリ属、クチビルコウモリ属の一部が含まれ、中でもキクガシラコウモリ(Rhinolophus ferrumequinum)やヒゲコウモリ(Pteronotus pernellii)がよく研究されてきた。CF-FMコウモリは、標的昆虫の羽ばたきによってエコーCF部に生じる周波数及び振幅変調を利用し獲物を検知しているとされる<ref name=Schnitzler2011><pubmed>20857119</pubmed></ref>[4]。 | |||
[[ファイル:Hase Echolocation Fig1.png|サムネイル|'''図1. エコーロケーション音声のスペクトログラム'''<br>コウモリはエコーロケーション音声の特徴によってFM型(a、アブラコウモリ''Pipistrellus abramus'')とCF-FM型(b, ニホンキクガシラコウモリ''Rhinolophus ferrumequinum nippon'')に大別される。参考文献<ref name=Yamada2016 />[2]より。]] | |||
== 距離の計算 == | == 距離の計算 == |