「両眼立体視」の版間の差分

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◆ 水晶体調節 (Accommodation)
◆ 水晶体調節 (Accommodation)


 様々な奥行き手がかりは、異なった距離範囲で働き、互いに補完し合う<ref name=Cutting1995>"Cutting, J.E., & Vishton, P.M. (1995).<br>Perceiving layout and knowing distances: the integration, relative potency, and contextual use of different information about depth. In: Epstein, W., & Rogers, S. (eds): Perception of Space and Motion. pp. 69-117, Academic Press, San Diego. [[ISBN: 978-0-12240530-3]] </ref>(Cutting & Vishton, 1995)。例えば、遠い山並みの個々の山の奥行き関係は、遮蔽(手前の山の輪郭は見え、遠い山の輪郭は見えない)や色彩遠近(遠い山は青味がかって見える)で知ることができるが、遠すぎるために両眼視差を使うことができない。一方、数百メートル以内の距離範囲では両眼視差は最も鋭敏で定量的な奥行き手がかりであり<ref name=Palmisano2010><pubmed>20884568</pubmed></ref><ref name=Read2021><pubmed>34283925</pubmed></ref>(Palmisano, Gillam, Govan, Allison,& Harris, 2010; Read, 2021)、多様な局面で役割を果たしている。例として、精密な手動作<ref name=Servos1992><pubmed>1455724</pubmed></ref><ref name=Watt2000><pubmed>10906373</pubmed></ref><ref name=Syrimi2015><pubmed>25998354</pubmed></ref>(Servos, Goodale, & Jakobson, 1992; Watt & Bradshaw, 2000; Syrimi & Ali, 2015)、環境内での移動<ref name=Godber1981><pubmed>6788186</pubmed></ref><ref name=Bonnen2019>"Bonnen, K., Matthis, J.S., Gibaldi, A., Banks, M.S., Levi, D., & Hayhole, M. (2019)." <br>A role for stereopsis in walking over complex terrains. Journal of Vision, 19(10): 178b.[DOI: 10.1167/19.10.178b|[DOI]]</ref>(Godbar, 1987; Bonnen, Matthis, Gibaldi, Banks, Levi, & Hayhole, 2019)、大きさの知覚の恒常性<ref name=Tanaka2015><pubmed>26311782</pubmed></ref>(Tanaka & Fujita, 2015)、鏡面反射に基づく物体の構造や光沢の理解<ref name=Blake1990><pubmed>2296307</pubmed></ref>(Blake & Bülthoff, 1990)、 物体の輪郭の明確な知覚<ref name=Ponce2008><pubmed>18812074</pubmed></ref>(Ponce & Born, 2008)、反射的輻輳開散運動<ref name=Masson1997><pubmed>9305842</pubmed></ref>(Masson, Busettini, &Miles, 1997)がある。
 様々な奥行き手がかりは、異なった距離範囲で働き、互いに補完し合う<ref name=Cutting1995>'''Cutting, J.E., & Vishton, P.M. (1995).'''<br>Perceiving layout and knowing distances: the integration, relative potency, and contextual use of different information about depth. In: Epstein, W., & Rogers, S. (eds): Perception of Space and Motion. pp. 69-117, Academic Press, San Diego. {{ISBN|978-0-12240530-3}}</ref>(Cutting & Vishton, 1995)。例えば、遠い山並みの個々の山の奥行き関係は、遮蔽(手前の山の輪郭は見え、遠い山の輪郭は見えない)や色彩遠近(遠い山は青味がかって見える)で知ることができるが、遠すぎるために両眼視差を使うことができない。一方、数百メートル以内の距離範囲では両眼視差は最も鋭敏で定量的な奥行き手がかりであり<ref name=Palmisano2010><pubmed>20884568</pubmed></ref><ref name=Read2021><pubmed>34283925</pubmed></ref>(Palmisano, Gillam, Govan, Allison,& Harris, 2010; Read, 2021)、多様な局面で役割を果たしている。例として、精密な手動作<ref name=Servos1992><pubmed>1455724</pubmed></ref><ref name=Watt2000><pubmed>10906373</pubmed></ref><ref name=Syrimi2015><pubmed>25998354</pubmed></ref>(Servos, Goodale, & Jakobson, 1992; Watt & Bradshaw, 2000; Syrimi & Ali, 2015)、環境内での移動<ref name=Godber1981><pubmed>6788186</pubmed></ref><ref name=Bonnen2019>'''Bonnen, K., Matthis, J.S., Gibaldi, A., Banks, M.S., Levi, D., & Hayhole, M. (2019).''' <br>A role for stereopsis in walking over complex terrains. Journal of Vision, 19(10): 178b.[[DOI: 10.1167/19.10.178b|[DOI]]]</ref>(Godbar, 1987; Bonnen, Matthis, Gibaldi, Banks, Levi, & Hayhole, 2019)、大きさの知覚の恒常性<ref name=Tanaka2015><pubmed>26311782</pubmed></ref>(Tanaka & Fujita, 2015)、鏡面反射に基づく物体の構造や光沢の理解<ref name=Blake1990><pubmed>2296307</pubmed></ref>(Blake & Bülthoff, 1990)、 物体の輪郭の明確な知覚<ref name=Ponce2008><pubmed>18812074</pubmed></ref>(Ponce & Born, 2008)、反射的輻輳開散運動<ref name=Masson1997><pubmed>9305842</pubmed></ref>(Masson, Busettini, &Miles, 1997)がある。


=== 研究の歴史的背景 ===
=== 研究の歴史的背景 ===
 両眼視差が立体知覚(奥行きの知覚)を生み出すことは、イギリスの科学者チャールズ・ホィートストン(Charles Wheatstone、1802-1875)が証明した<ref name=Wheatstone1838>Wheatstone, C. (1838).<br>Contributions to the physiology of vision. Part the first. On some remarkable, and hitherto unobserved phenomena of binocular vision. Philosophical Transaction of Royal Society of London, 128, 371-394.</pubmed></ref><ref name=Wade2012>"Wade, N.S.J., & Ono, H. (2012).<br>Early studies of binocular and stereoscopic depth. Japanese Psychological Research, 54, 54-70. [DOI: 10.1111/j.1468-5844.2011.00505.x|[DOI]]
 両眼視差が立体知覚(奥行きの知覚)を生み出すことは、イギリスの科学者チャールズ・ホィートストン(Charles Wheatstone、1802-1875)が証明した<ref name=Wheatstone1838>Wheatstone, C. (1838).<br>Contributions to the physiology of vision. Part the first. On some remarkable, and hitherto unobserved phenomena of binocular vision. Philosophical Transaction of Royal Society of London, 128, 371-394.</ref><ref name=Wade2012>'''Wade, N.S.J., & Ono, H. (2012).'''<br>Early studies of binocular and stereoscopic depth. Japanese Psychological Research, 54, 54-70. [[DOI: 10.1111/j.1468-5844.2011.00505.x|[DOI]]]
</ref>(Wheatstone, 1838; Wade & Ono, 2012)。彼は二枚の鏡を90°の角度で貼り合わせ、右の鏡を右目で見て右パネルの図が見えるようにし、左の鏡を左目で見ることで左パネルの図が見えるように配置した('''図3'''、ハプロスコープ)。左右の図は、形や位置がわずかに異なっており、その違いが、図形の頂点や辺に両眼視差を生み出す。ホィートストンは、ハプロスコープを通して眺めると、紙に描かれた図形が立体的に感じられることを示した。
</ref>(Wheatstone, 1838; Wade & Ono, 2012)。彼は二枚の鏡を90°の角度で貼り合わせ、右の鏡を右目で見て右パネルの図が見えるようにし、左の鏡を左目で見ることで左パネルの図が見えるように配置した('''図3'''、ハプロスコープ)。左右の図は、形や位置がわずかに異なっており、その違いが、図形の頂点や辺に両眼視差を生み出す。ホィートストンは、ハプロスコープを通して眺めると、紙に描かれた図形が立体的に感じられることを示した。


 1960年代になり、ベラ・ユレシュ(Béla Julesz, 1928-2003)は、ランダムなドットパターンを左右の目に提示し、左右の目の間でドットパターンに位置ずれをつけておくと、立体知覚が生じることを見出した<ref name=Julesz1960>"Julesz, B. (1960).<br>Binocular depth perception of computer-generated patterns. The Bell System Technical Journal, 39, 1125-1162.[[DOI: 10.1002/j.1538-7305.1960.tb03954.x|[DOI]]</ref>(Julesz, 1960)。この実験は、片目像に絵画的手がかりが一切なくても、左右の目が受け止めるドットの間の位置ずれ、すなわち両眼視差に基づいて脳が奥行きを算出する機構を持つことを確立した。
 1960年代になり、ベラ・ユレシュ(Béla Julesz, 1928-2003)は、ランダムなドットパターンを左右の目に提示し、左右の目の間でドットパターンに位置ずれをつけておくと、立体知覚が生じることを見出した<ref name=Julesz1960>'''Julesz, B. (1960).'''<br>Binocular depth perception of computer-generated patterns. The Bell System Technical Journal, 39, 1125-1162.[[DOI: 10.1002/j.1538-7305.1960.tb03954.x|[DOI]]]</ref>(Julesz, 1960)。この実験は、片目像に絵画的手がかりが一切なくても、左右の目が受け止めるドットの間の位置ずれ、すなわち両眼視差に基づいて脳が奥行きを算出する機構を持つことを確立した。


== 個人差と発達 ==
== 個人差と発達 ==
 全人口の数%(最新データでは7%)が、両眼立体視ができない立体視盲と推定されている<ref name=Chopin2019><pubmed>30776852</pubmed></ref>(Chopin, Bavelier, & Levi, 2019)。立体視盲の多くは白内障、斜視、不同視、弱視などに起因するが、両目とも良い視力を持ち両眼融合もできていながら、両眼立体視ができない人もいる。また、両眼立体視が可能でも、どのくらい小さな両眼視差を感じることができるか(立体視力)は人により大きく異なる<ref name=Coutant1993><pubmed>8510945</pubmed></ref><ref name=Zaroff2003><pubmed>12556426</pubmed></ref><ref name=Hess2015><pubmed>27433314</pubmed></ref><ref name=Oishi2018><pubmed>30429321</pubmed></ref>(Coutant, & Westheimer, 1993; Zaroff, Knutelska, & Frumkes. 2003; Hess, To, Zhou, Wang, & Cooperstock, 2015; Oishi, Takemura, Aoki, Fujita, & Amano, 2018)。両眼立体視の不全は、日常作業(車の運転、階段の登り降り、切符を自動改札スロットに入れる操作)、精密な手仕事(外科医による手術)、スポーツ(野球のボールを打つこと、バスケットボールをネットに投げ入れること)に影響を及ぼす。
 全人口の数%(最新データでは7%)が、両眼立体視ができない立体視盲と推定されている<ref name=Chopin2019><pubmed>30776852</pubmed></ref>(Chopin, Bavelier, & Levi, 2019)。立体視盲の多くは白内障、斜視、不同視、弱視などに起因するが、両目とも良い視力を持ち両眼融合もできていながら、両眼立体視ができない人もいる。また、両眼立体視が可能でも、どのくらい小さな両眼視差を感じることができるか(立体視力)は人により大きく異なる<ref name=Coutant1993><pubmed>8510945</pubmed></ref><ref name=Zaroff2003><pubmed>12556426</pubmed></ref><ref name=Hess2015><pubmed>27433314</pubmed></ref><ref name=Oishi2018><pubmed>30429321</pubmed></ref>(Coutant, & Westheimer, 1993; Zaroff, Knutelska, & Frumkes. 2003; Hess, To, Zhou, Wang, & Cooperstock, 2015; Oishi, Takemura, Aoki, Fujita, & Amano, 2018)。両眼立体視の不全は、日常作業(車の運転、階段の登り降り、切符を自動改札スロットに入れる操作)、精密な手仕事(外科医による手術)、スポーツ(野球のボールを打つこと、バスケットボールをネットに投げ入れること)に影響を及ぼす。


 ヒトにおける両眼立体視は、生後16週ごろに急速に発達し、その後ゆっくりと変化して、10歳ごろに成人レベルに達する<ref name=Birch1982><pubmed>6981241</pubmed></ref>(Birch, Gwiazda, & Held, 1982)。両眼立体視の発達には、幼児期に左右の目が均等な視覚入力を受けることが大事であり、白内障、斜視、不同視、弱視などの眼科的問題、または眼帯装着などによって、視覚入力の左右眼間バランスが崩れると阻害される<ref name=Levi2015><pubmed>25637854</pubmed></ref>(Levi, Knill, & Bavelier, 2015)。この不均衡視覚入力の発達阻害効果は幼児期の一時期のみに限られ、成人が眼帯を装着しても問題は起こらない。また、立体視盲の成人が、斜視矯正手術や白内障手術を受け、左右の目が均等に入力を持つようになっても、多くの場合、両眼立体視を獲得することは難しい(ただし、獲得例も報告されている。<ref name=Ding2011><pubmed>21896742</pubmed></ref><ref name=バリー2010>スーザン・バリー (2010)<br>視覚はよみがえる〜三次元のクオリア, 筑摩書房 [ISBN: 978-4480015068] </ref> Ding & Levi, 2011; バリー, 2010)。このように、両眼立体視を可能にする神経回路の形成には臨界期(感受性期)がある。
 ヒトにおける両眼立体視は、生後16週ごろに急速に発達し、その後ゆっくりと変化して、10歳ごろに成人レベルに達する<ref name=Birch1982><pubmed>6981241</pubmed></ref>(Birch, Gwiazda, & Held, 1982)。両眼立体視の発達には、幼児期に左右の目が均等な視覚入力を受けることが大事であり、白内障、斜視、不同視、弱視などの眼科的問題、または眼帯装着などによって、視覚入力の左右眼間バランスが崩れると阻害される<ref name=Levi2015><pubmed>25637854</pubmed></ref>(Levi, Knill, & Bavelier, 2015)。この不均衡視覚入力の発達阻害効果は幼児期の一時期のみに限られ、成人が眼帯を装着しても問題は起こらない。また、立体視盲の成人が、斜視矯正手術や白内障手術を受け、左右の目が均等に入力を持つようになっても、多くの場合、両眼立体視を獲得することは難しい(ただし、獲得例も報告されている。<ref name=Ding2011><pubmed>21896742</pubmed></ref><ref name=バリー2010>'''スーザン・バリー (2010).'''<br>視覚はよみがえる〜三次元のクオリア, 筑摩書房 [ISBN: 978-4480015068] </ref> Ding & Levi, 2011; バリー, 2010)。このように、両眼立体視を可能にする神経回路の形成には臨界期(感受性期)がある。


== 動物における両眼立体視 ==
== 動物における両眼立体視 ==
 両眼立体視の能力は、ヒト以外にも、哺乳類(サル、ネコ、ウマ、ヒツジ)、鳥類(フクロウ、ハヤブサ)、両生類(ヒキガエル)、昆虫(カマキリ、トンボ、アブ)、頭足類(イカ)が持っており、動物の進化の過程で数回に渡って独立に進化したと考えられる<ref name=Pettigrew1986>"Pettigrew, J.D. (1986).<br>The evolution of binocular vision. In Visual Neuroscience (eds. Pettigrew, J.D., Sanderson, K., & Lewick, W. ). pp. 208-222. New York: Cambridge University Press. </ref><ref name=Nityananda2017><pubmed>28724702</pubmed></ref>(Pettigrew, 1986; Read, 2021; Nityananda & Read, 2017)。二つの目を持つ動物種のほとんどが両眼視野(左右の目で見る視野の重複)を多かれ少なかれ持つが、これらの動物種のうち、どのくらいの種が両眼立体視を行うかは不明である。
 両眼立体視の能力は、ヒト以外にも、哺乳類(サル、ネコ、ウマ、ヒツジ)、鳥類(フクロウ、ハヤブサ)、両生類(ヒキガエル)、昆虫(カマキリ、トンボ、アブ)、頭足類(イカ)が持っており、動物の進化の過程で数回に渡って独立に進化したと考えられる<ref name=Pettigrew1986>'''Pettigrew, J.D. (1986).'''<br>The evolution of binocular vision. In Visual Neuroscience (eds. Pettigrew, J.D., Sanderson, K., & Lewick, W. ). pp. 208-222. New York: Cambridge University Press. </ref><ref name=Nityananda2017><pubmed>28724702</pubmed></ref>(Pettigrew, 1986; Read, 2021; Nityananda & Read, 2017)。二つの目を持つ動物種のほとんどが両眼視野(左右の目で見る視野の重複)を多かれ少なかれ持つが、これらの動物種のうち、どのくらいの種が両眼立体視を行うかは不明である。


== 神経機構 ==
== 神経機構 ==
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=== ヒトにおける両眼立体視の神経機構 ===
=== ヒトにおける両眼立体視の神経機構 ===
 ヒトにおいても、頭頂葉、側頭葉の多くの領域が両眼視差の処理に関与している<ref name=Welchman2016><pubmed>28532360</pubmed></ref>(Welchman, 2016)。背側視覚経路の活動が絶対視差に強く依存し、腹側視覚経路は絶対視差と相対視差の両方の影響を受ける<ref name=Neri2004><pubmed>15331652</pubmed></ref>(Neri, Bridge, & Heeger, 2004)、二つの経路を低次から高次の領域へと進むに連れて、徐々に両眼相関表現から両眼対応表現への変換が起きる<ref name=Bridge2007><pubmed>18217810</pubmed></ref><ref name=Preston2008><pubmed>18971473</pubmed></ref>(Bridge, & Parker, 2007; Preston, Kourtzi, & Welchman, 2008)など、サルでの知見と一致する点も多いが、異なる点もある。ヒトでは、V3A野が両眼視差に対して非常に強く、かつ、視差の大きさに感受性の高い反応を示すのはその一例である<ref name=Preston2008 />(Preston, Kourtzi, & Welchman, 2008)。また、ヒトにおける両眼視差処理には右半球優位性が認められる<ref name=Carmon1969>"Carmon A, & Bechtoldt HP. (1969). <br>Dominance of the right cerebral hemisphere for stereopsis. Neuropsychologia, 7, 29–39. [DOI: 10.1016/0028-3932(69)90042-6|[DOI]]
 ヒトにおいても、頭頂葉、側頭葉の多くの領域が両眼視差の処理に関与している<ref name=Welchman2016><pubmed>28532360</pubmed></ref>(Welchman, 2016)。背側視覚経路の活動が絶対視差に強く依存し、腹側視覚経路は絶対視差と相対視差の両方の影響を受ける<ref name=Neri2004><pubmed>15331652</pubmed></ref>(Neri, Bridge, & Heeger, 2004)、二つの経路を低次から高次の領域へと進むに連れて、徐々に両眼相関表現から両眼対応表現への変換が起きる<ref name=Bridge2007><pubmed>18217810</pubmed></ref><ref name=Preston2008><pubmed>18971473</pubmed></ref>(Bridge, & Parker, 2007; Preston, Kourtzi, & Welchman, 2008)など、サルでの知見と一致する点も多いが、異なる点もある。ヒトでは、V3A野が両眼視差に対して非常に強く、かつ、視差の大きさに感受性の高い反応を示すのはその一例である<ref name=Preston2008 />(Preston, Kourtzi, & Welchman, 2008)。また、ヒトにおける両眼視差処理には右半球優位性が認められる<ref name=Carmon1969>'''Carmon A, & Bechtoldt HP. (1969). '''<br>Dominance of the right cerebral hemisphere for stereopsis. Neuropsychologia, 7, 29–39. [[DOI: 10.1016/0028-3932(69)90042-6|[DOI]]]</ref><ref name=Benton1970>'''Benton AL, Hécaen H. (1970).'''<br>Stereoscopic vision in patients with unilateral cerebral disease. Neurology 20(11), 1084. [[DOI: 10.1212/WNL.20.11.1084|[DOI]]]</ref><ref name=Nishida2001><pubmed>11447346</pubmed></ref>(Carmon, & Bechtoldt, 1969; Benton, & Hécaen, 1970; Nishida, Hayashi, Iwami, Kimura, Kani, Ito, Shiino, & Suzuki, 2001)。さらに、V2野では両眼視差に基づく図地分離に関する処理、V3A野では両眼視差勾配に基づく面の傾き(slant)の算出がなされている<ref name=Ban2015><pubmed>26156985</pubmed></ref>(Ban, & Welchman, 2015)。
</ref><ref name=Benton1970>"Benton AL, Hécaen H. (1970).<br>Stereoscopic vision in patients with unilateral cerebral disease. Neurology 20(11), 1084
[DOI: 10.1212/WNL.20.11.1084|[DOI]]</ref><ref name=Nishida2001><pubmed>11447346</pubmed></ref>(Carmon, & Bechtoldt, 1969; Benton, & Hécaen, 1970; Nishida, Hayashi, Iwami, Kimura, Kani, Ito, Shiino, & Suzuki, 2001)。さらに、V2野では両眼視差に基づく図地分離に関する処理、V3A野では両眼視差勾配に基づく面の傾き(slant)の算出がなされている<ref name=Ban2015><pubmed>26156985</pubmed></ref>(Ban, & Welchman, 2015)。


=== 脳損傷による両眼立体視の障害 ===
=== 脳損傷による両眼立体視の障害 ===

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