「エストロゲン」の版間の差分

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=== 脳における合成 ===
=== 脳における合成 ===
 脳においても、末梢と同様、17β-エストラジオールはシトクロムP450アロマターゼ(CYP19A1)によってテストステロンから合成される。
 副腎と生殖腺に存在するステロイドホルモン合成に関与する酵素のほとんどが脳でも発現している<ref name=Compagnone2000><pubmed>10662535</pubmed></ref><ref name=DoRego2009><pubmed>19505496</pubmed></ref>。例えば、steroidogenic acute regulatory protein(StAR)、translocator protein(TSPO)、シトクロムP450scc、シトクロムP450 17α、シトクロムP450アロマターゼ、および3β-ヒドロキシ-Δ⁵-ステロイドデヒドロゲナーゼ (3β-hydroxy-Δ5-steroid dehydrogenase, 3β-HSD)と17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ (17β-hydroxysteroid dehydrogenases, 17β-HSD)の複数のサブタイプがヒトおよびげっ歯類の脳で検出されている<ref name=Compagnone2000><pubmed>10662535</pubmed></ref><ref name=DoRego2009><pubmed>19505496</pubmed></ref><ref name=Munetsuna2009><pubmed>19497980</pubmed></ref>。転写産物の相対数は、StAR ではウシ副腎の 1/100 ~ 1/200 程度、シトクロムP450sccでは 1/200,000 未満、シトクロムP450 17αおよび 3β-HSD では 1/10,000 ~ 1/20,000 程度である <ref name=Yamazaki2005><pubmed>16038956</pubmed></ref>。
 副腎と生殖腺に存在するステロイドホルモン合成に関与する酵素のほとんどが脳でも発現している<ref name=Compagnone2000><pubmed>10662535</pubmed></ref><ref name=DoRego2009><pubmed>19505496</pubmed></ref>。例えば、steroidogenic acute regulatory protein(StAR)、translocator protein(TSPO)、シトクロムP450scc、シトクロムP450 17α、シトクロムP450アロマターゼ、および3β-ヒドロキシ-Δ⁵-ステロイドデヒドロゲナーゼ (3β-hydroxy-Δ5-steroid dehydrogenase, 3β-HSD)と17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ (17β-hydroxysteroid dehydrogenases, 17β-HSD)の複数のサブタイプがヒトおよびげっ歯類の脳で検出されている<ref name=Compagnone2000><pubmed>10662535</pubmed></ref><ref name=DoRego2009><pubmed>19505496</pubmed></ref><ref name=Munetsuna2009><pubmed>19497980</pubmed></ref>。転写産物の相対数は、StAR ではウシ副腎の 1/100 ~ 1/200 程度、シトクロムP450sccでは 1/200,000 未満、シトクロムP450 17αおよび 3β-HSD では 1/10,000 ~ 1/20,000 程度である <ref name=Yamazaki2005><pubmed>16038956</pubmed></ref>。


 コルチコイド合成に必要であるシトクロムP450c21、シトクロムP450 11β-1、およびシトクロムP450 11β-2も少量ではあるが脳で検出されている<ref name=Higo2011><pubmed>21829438</pubmed></ref>。脳内に豊富に発現するシトクロムP450 2Dアイソフォームは<ref name=Hiroi1998><pubmed>9555068</pubmed></ref><ref name=McFadyen1998><pubmed>9586955</pubmed></ref>、ステロイド骨格の21位を水酸化することから<ref name=Kishimoto2004><pubmed>14563706</pubmed></ref>、シトクロム P450 2Dアイソフォームはコルチコイド合成に寄与している可能性がある。雄ラットの海馬で発現している転写産物の相対数は、シトクロムP450c21では副腎の1/20,000 程度、P450 2D4では肝臓の1/20,000 程度、シトクロムP450 11β-1およびP450 11β-2では副腎の1/5,000 ~ 1/10,000程度である<ref name=Higo2011><pubmed>21829438</pubmed></ref>。
 シトクロムP450アロマターゼは、ヒト15番染色体のq21.2領域に1つの遺伝子としてコードされている。生殖腺、骨、乳房、脂肪、血管組織、皮膚、胎盤、脳など、多くの組織で発現しているが、スプライシングにより組織特異的な転写産物が生じる。mRNA非翻訳領域をコードする第一エクソンにおける組織特異的なプロモーターが、シトクロムP450アロマターゼの組織特異的な転写に寄与する。プロモーター1.fが脳特異的プロモーターであると考えられている('''図2''')。尚、すべての転写産物が同一のタンパク質に翻訳される。
 
 5α-還元酵素は、プロゲステロン、テストステロン、および 11-デオキシコルチコステロンをそれぞれの 5α-ジヒドロステロイドに変換する酵素である。一部の5α-ジヒドロステロイドは、3α-ヒドロキシステロイド脱水素酵素 (3α-HSD) によってさらに代謝される。5α-還元酵素と3α-HSD のアイソフォームが脳内で検出されている <ref name=Compagnone2000><pubmed>10662535</pubmed></ref><ref name=DoRego2009><pubmed>19505496</pubmed></ref>。Baulieuらは、ステロイドホルモンの硫酸エステルもニューロステロイドに含まれると主張している<ref name=Baulieu1997><pubmed>9238846</pubmed></ref>。げっ歯類の脳にプレグネノロン硫酸エステルが存在するかどうかについては議論の余地があるが、ヒトの脳には相当量のプレグネノロン硫酸エステルとDHEA硫酸エステルが存在する <ref name=Schumacher2008><pubmed>18068870</pubmed></ref>。脳内ではsteroid sulfotransferaseとsteroid sulfataseが検出されている <ref name=Compagnone2000><pubmed>10662535</pubmed></ref><ref name=DoRego2009><pubmed>19505496</pubmed></ref><ref name=Schumacher2008><pubmed>18068870</pubmed></ref>。


== 受容体 ==
== 受容体 ==