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阪上 洋行
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北里大学・医学部・解剖学
<font size="+1">[https://researchmap.jp/hiroyukisakagami 阪上 洋行]</font><br>
''北里大学・医学部・解剖学''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2025年4月24日 原稿完成日:2025年4月27日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/wadancnp 和田 圭司](国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)
</div>


{{box|text= ADPリボシル化因子(Arf)は、Rasスーパーファミリーに属する低分子量GTP結合タンパク質で、哺乳類ではArf1からArf6の6種類の分子(ヒトではARF2以外の5分子)が存在する。ArfはGTP結合型とGDP結合型の2つのコンフォメーションを変換させて、細胞内小胞輸送やアクチン細胞骨格の再構築を制御する分子スイッチとして機能する。神経系において、Arfは軸索、樹状突起、棘突起の形成と維持、細胞移動、シナプス小胞サイクル、シナプス可塑性などの多彩な機能に関与する。}}
英:ADP ribosylation factor<br>
英略語:Arf
{{box|text= ADPリボシル化因子(Arf)は、Rasスーパーファミリーに属する低分子量GTP結合タンパク質で、哺乳類ではArf1からArf6の6種類の分子(ヒトではARF2以外の5分子)が存在する。ArfはGTP結合型とGDP結合型の2つのコンフォメーションを変換させて、細胞内小胞輸送やアクチン細胞骨格の再構築を制御する分子スイッチとして機能する。神経系において、Arfは軸索、樹状突起、棘突起の形成と維持、細胞移動、シナプス小胞サイクル、シナプス可塑性などの多彩な機能に関与する。「ADPリボシル化因子」の名称は、試験管内でのコレラ毒素の[[補酵素]]としての性質に由来するもので、必ずしも生理的な機能を反映するものではない。}}


== 発見の経緯とその後 ==
== 発見の経緯とその後 ==
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== 細胞内局在 ==
== 細胞内局在 ==
 Arfは様々な組織に幅広く発現する<ref name=Hosaka1996><pubmed>8947846</pubmed></ref>。内因性Arfの細胞内局在は、分子間の高い同一性から特異的な[[抗体]]の作製が難しく、依然明らかにされていない。[[培養細胞]]への[[強制発現系]]を用いた局在解析から、Arf1-5は[[小胞体]]、[[ゴルジ装置]]、[[エンドソーム]]に主に局在するのに対して、Arf6は細胞膜とエンドソームに局在することが報告されている<ref name=D'Souza-Schorey2006><pubmed>16633337</pubmed></ref><ref name=Radhakrishna1997><pubmed>9314528</pubmed></ref>。[[CRISPR-Cas9]]を用いた[[ゲノム編集]]技術によりクラスI Arf (Arf1, Arf3)とクラスII Arf (Arf4, Arf5)のC末領域にタグをノックインした内因性Arfタンパク質の細胞内局在に関する[[超解像度顕微鏡]]解析の報告によると、[[HeLa細胞]]において、クラスIとクラスII Arfとも[[小胞体–ゴルジ体中間区画]]([[ERGIC]])、ゴルジ装置、[[管状小胞状]]の構造に部分的に共存しながら分布するが、同じ細胞小器官において異なるナノドメインへの局在も示すことから、クラスIとII のArfの各分子は、重複する機能とともに特異的な機能を持つものと考えられる<ref name=Wong-Dilworth2023><pubmed>37102998</pubmed></ref>。
 Arfは様々な組織に幅広く発現する<ref name=Hosaka1996><pubmed>8947846</pubmed></ref>。内因性Arfの細胞内局在は、分子間の高い同一性から特異的な[[抗体]]の作製が難しく、依然明らかにされていない。[[培養細胞]]への[[強制発現系]]を用いた局在解析から、Arf1-5は[[小胞体]]、[[ゴルジ装置]]、[[エンドソーム]]に主に局在するのに対して、Arf6は細胞膜とエンドソームに局在することが報告されている<ref name=D'Souza-Schorey2006><pubmed>16633337</pubmed></ref><ref name=Radhakrishna1997><pubmed>9314528</pubmed></ref>。[[CRISPR-Cas9]]を用いた[[ゲノム編集]]技術によりクラスI Arf (Arf1, Arf3)とクラスII Arf (Arf4, Arf5)のC末領域にタグをノックインした内因性Arfタンパク質の細胞内局在に関する[[超解像度顕微鏡]]解析の報告によると、[[HeLa細胞]]において、クラスIとクラスII Arfとも[[小胞体–ゴルジ体中間区画]]([[ERGIC]])、ゴルジ装置、[[管状小胞状]]の構造に部分的に共存しながら分布するが、同じ細胞小器官において異なるナノドメインへの局在も示すことから、クラスIとII のArfの各分子は、重複する機能とともに特異的な機能を持つものと考えられる<ref name=Wong-Dilworth2023><pubmed>37102998</pubmed></ref>。
[[ファイル:Sakagami Arf Fig.png|サムネイル|'''図. マウスArfの活性化制御分子(GEFとGAP)ファミリーとドメイン構造'''<br>哺乳類のArfGEFは15分子6ファミリーからなり、GEF活性に必須の約200アミノ酸からなるSec7領域を持つ。ArfGAPは31分子10ファミリーに分類されている。<br>ALPS, amphipathic lipid packaging sensor; ANK, ankyrin repeats; BAR, Bin/Amphiphysin/Rvs domain; CC, coiled-coil motif; DCB, dimerization and cyclophilin-binding domain; FAT, focal adhesion targeting domain; HDS, homology downstream of Sec7; HUS, homology upstream of Sec7; IQ, IQ motif; PH, pleckstrin homology domain; RA, Ras-associating domain; SAM, sterile &alpha; motif domain; SH3, Src-homology 3 domain; SLD, synaptic localization domain]]


[[ファイル:Sakagami Arf Fig.jpg|サムネイル|'''図. マウスArfの活性化制御分子(GEFとGAP)ファミリーとドメイン構造'''<br>哺乳類のArfGEFは15分子6ファミリーからなり、GEF活性に必須の約200アミノ酸からなるSec7領域を持つ。ArfGAPは31分子10ファミリーに分類されている。<br>ALPS, amphipathic lipid packaging sensor; ANK, ankyrin repeats; BAR, Bin/Amphiphysin/Rvs domain; CC, coiled-coil motif; DCB, dimerization and cyclophilin-binding domain; FAT, focal adhesion targeting domain; HDS, homology downstream of Sec7; HUS, homology upstream of Sec7; IQ, IQ motif; PH, pleckstrin homology domain; RA, Ras-associating domain; SAM, sterile &alpha; motif domain; SH3, Src-homology 3 domain; SLD, synaptic localization domain;]]
== 活性化制御 ==
== 活性化制御 ==
 ArfのGDP-GTPサイクルは[[グアニンヌクレオチド交換因子]]([[GEF]])と[[GTPase活性化因子]]([[GAP]])により厳密に調節されている。
 ArfのGDP-GTPサイクルは[[グアニンヌクレオチド交換因子]]([[GEF]])と[[GTPase活性化因子]]([[GAP]])により厳密に調節されている。
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 2004年Sheenらは異所性灰白質を伴う小頭症の原因遺伝子としてクラスI ArfのGEFであるヒト[[BIG2]] ([[ARFGEF2]])を同定した<ref name=Sheen2004><pubmed>14647276</pubmed></ref>。マウスBIG2は胎生期の脳室帯に豊富に発現し、Arf-GEF ([[BIG1]]、BIG2、[[GBF1]])に対する[[阻害剤]][[ブレフェルジンA]]の胎児期脳室帯への投与やBig2ノックアウトマウスにおいて、神経上皮細胞間の[[N-カドへリン]]を介した細胞接着が障害され、脳室帯の構造の破綻が生じる<ref name=Ferland2009><pubmed>18996916</pubmed></ref><ref name=Zhang2012><pubmed>22956851</pubmed></ref>。その後、ヒトARF1も異所性灰白質の原因遺伝子として報告され<ref name=Ishida2023><pubmed>36345169</pubmed></ref>、BIG2によるARF1の活性化が、神経上皮細胞間のN-カドへリン依存的な細胞接着の制御を介して脳室帯の構造維持に関与する可能性が示唆される。
 2004年Sheenらは異所性灰白質を伴う小頭症の原因遺伝子としてクラスI ArfのGEFであるヒト[[BIG2]] ([[ARFGEF2]])を同定した<ref name=Sheen2004><pubmed>14647276</pubmed></ref>。マウスBIG2は胎生期の脳室帯に豊富に発現し、Arf-GEF ([[BIG1]]、BIG2、[[GBF1]])に対する[[阻害剤]][[ブレフェルジンA]]の胎児期脳室帯への投与やBig2ノックアウトマウスにおいて、神経上皮細胞間の[[N-カドへリン]]を介した細胞接着が障害され、脳室帯の構造の破綻が生じる<ref name=Ferland2009><pubmed>18996916</pubmed></ref><ref name=Zhang2012><pubmed>22956851</pubmed></ref>。その後、ヒトARF1も異所性灰白質の原因遺伝子として報告され<ref name=Ishida2023><pubmed>36345169</pubmed></ref>、BIG2によるARF1の活性化が、神経上皮細胞間のN-カドへリン依存的な細胞接着の制御を介して脳室帯の構造維持に関与する可能性が示唆される。
 
 
 また、胎生期のマウス脳室帯の神経上皮細胞において、[[EphB2]]-[[ephrin B1]]シグナルは、Arf6の活性化による頂端面での[[インテグリンβ1]]のエンドサイトーシスを抑制し、インテグリンの表面発現を適切に維持することにより、脳室帯の構造維持、非対称分裂、脳室帯から分裂後の細胞離脱を制御することが報告されている<ref name=Arvanitis2013><pubmed>23578932</pubmed></ref>。
 また、胎生期のマウス脳室帯の神経上皮細胞において、[[EphB2]]-[[ephrin B1]]シグナルは、Arf6の活性化による頂端面での[[インテグリンβ1]]のエンドサイトーシスを抑制し、インテグリンの表面発現を適切に維持することにより、脳室帯の構造維持、非対称分裂、脳室帯から分裂後の細胞離脱を制御することが報告されている<ref name=Arvanitis2013><pubmed>23578932</pubmed></ref>。


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 Arf6は、脊髄神経節ニューロンの軸索や[[PC12]]細胞の突起において、インテグリンを含む[[輸送小胞]]の逆行性輸送に関与する<ref name=Eva2012><pubmed>22836268</pubmed></ref>。さらにGTP結合型Arf6は、エフェクターのJIP3/JIP4と結合することにより、JIP3/JIP4の[[ダイナクチン]]/[[ダイニン]]複合体との相互作用とダイニンのモーター活性を促進し、[[オートファゴソーム]]の逆行性軸索輸送を制御することが海馬初代培養細胞で報告されている<ref name=Cason2023><pubmed>37909920</pubmed></ref>。軸索でのArf6の活性制御機構として、中枢神経系細胞において、Arf6-GEFであるEFA6Aは、[[軸索初節]]に豊富に局在し、[[軸索起部]]においてArf6の活性化を促し、軸索輸送を調節している可能性が報告されている<ref name=Eva2017><pubmed>28935671</pubmed></ref>。
 Arf6は、脊髄神経節ニューロンの軸索や[[PC12]]細胞の突起において、インテグリンを含む[[輸送小胞]]の逆行性輸送に関与する<ref name=Eva2012><pubmed>22836268</pubmed></ref>。さらにGTP結合型Arf6は、エフェクターのJIP3/JIP4と結合することにより、JIP3/JIP4の[[ダイナクチン]]/[[ダイニン]]複合体との相互作用とダイニンのモーター活性を促進し、[[オートファゴソーム]]の逆行性軸索輸送を制御することが海馬初代培養細胞で報告されている<ref name=Cason2023><pubmed>37909920</pubmed></ref>。軸索でのArf6の活性制御機構として、中枢神経系細胞において、Arf6-GEFであるEFA6Aは、[[軸索初節]]に豊富に局在し、[[軸索起部]]においてArf6の活性化を促し、軸索輸送を調節している可能性が報告されている<ref name=Eva2017><pubmed>28935671</pubmed></ref>。


 一方、Arf4とArf5のダブルノックアウトマウス (Arf4/5 DKO)は、[[プロパノール]]や[[ガバペンチン]]反応性の[[本態性振戦]]様の[[不随意運動]]を示す。さらに、Arf4/5 DKOマウスの[[小脳プルキンエ細胞]]において、[[電位依存性ナトリウムチャネル]][[Nav1.6]]の軸索起始部での局在が障害され、自発的な連続発火が低下することから、クラスII Arfが小胞輸送経路を介した軸索起始部でのイオンチャネルの発現を制御する可能性が示唆されている<ref name=Hosoi2019><pubmed>31201232</pubmed></ref>。
 一方、Arf4とArf5のダブルノックアウトマウス (Arf4/5 DKO)は、[[プロパノール]]や[[ガバペンチン]]反応性の[[本態性振戦]]様の[[不随意運動]]を示す。さらに、Arf4/5 DKOマウスの[[小脳]][[プルキンエ細胞]]において、[[電位依存性ナトリウムチャネル]][[Nav1.6]]の軸索起始部での局在が障害され、自発的な連続発火が低下することから、クラスII Arfが小胞輸送経路を介した軸索起始部でのイオンチャネルの発現を制御する可能性が示唆されている<ref name=Hosoi2019><pubmed>31201232</pubmed></ref>。


=== 樹状突起形成 ===
=== 樹状突起形成 ===
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 一方、Arf1のラット[[副腎髄質]][[褐色細胞腫]]由来PC12細胞における[[有芯小胞]]の形成への機能関与の報告はある<ref name=Faundez1997><pubmed>9245782</pubmed></ref>が、クラスI/II Arfの神経細胞のシナプス小胞サイクルへの関与に関する実験証拠はない。
 一方、Arf1のラット[[副腎髄質]][[褐色細胞腫]]由来PC12細胞における[[有芯小胞]]の形成への機能関与の報告はある<ref name=Faundez1997><pubmed>9245782</pubmed></ref>が、クラスI/II Arfの神経細胞のシナプス小胞サイクルへの関与に関する実験証拠はない。


== シナプス可塑性 ==
=== シナプス可塑性 ===
 [[シナプス可塑性]]のうち、[[長期増強]] ([[LTP]])と[[長期抑圧]] ([[LTD]])は、シナプス刺激に伴うシナプス後膜でのAMPARの長期的な発現量の増加と減少によりそれぞれ引き起こされるが、小胞輸送経路はAMPARのシナプス後膜での発現量を調節する主要な制御機構である。さらに、樹状突起スパイン内部のアクチン細胞骨格の再構築は、シナプス可塑性に伴う形態の変化とともに、細胞膜の湾曲、[[取り込み小胞]]の切断や輸送を介してシナプス後膜でのAMPARの動態と密接に関連する。
 [[シナプス可塑性]]のうち、[[長期増強]] ([[LTP]])と[[長期抑圧]] ([[LTD]])は、シナプス刺激に伴うシナプス後膜でのAMPARの長期的な発現量の増加と減少によりそれぞれ引き起こされるが、小胞輸送経路はAMPARのシナプス後膜での発現量を調節する主要な制御機構である。さらに、樹状突起スパイン内部のアクチン細胞骨格の再構築は、シナプス可塑性に伴う形態の変化とともに、細胞膜の湾曲、[[取り込み小胞]]の切断や輸送を介してシナプス後膜でのAMPARの動態と密接に関連する。


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== 神経疾患との関わり ==
== 神経疾患との関わり ==
=== 脳形成障害 ===
=== 脳形成障害 ===
 Sheenら(2004)は、小脳症と脳室周囲異所性灰白質を持つトルコ家系からクラスI Arfに対するGEFであるBIG2/ARFGEF2のホモ接合型[[ミスセンス変異]]を同定した<ref name=Sheen2004><pubmed>14647276</pubmed></ref>。さらにゲノムの翻訳部領域においてミスセンス変異が生じることが通常ないゲノム領域(missense-depleted region)に着目した、先天性脳構造異常の患者に対する[[エクソーム解析]]により、[[MRI]]で脳室周囲結節性異所性灰白質を示す発達障害とともに[[注意欠損多動性障害]]を示す男児からARF1のGDP結合部位のミスセンス変異(p.Tyr35His)が同定された<ref name=Ge2016><pubmed>28868155</pubmed></ref>。その後、ARF1遺伝子のde novoミスセンス変異がさらに13ヶ所見出されている<ref name=deSainteAgathe2023><pubmed>37185208</pubmed></ref><ref name=Ishida2023><pubmed>36345169</pubmed></ref>。ARF1遺伝子変異を持つ患者は、[[知的障害]]とともに小脳症、異所性灰白質、脳梁の菲薄化などの種々の程度の脳構造異常を伴う。小脳症と脳室周囲異所性灰白質の機序として、BIG2→ARF1経路の障害による脳室上皮細胞間の細胞接着を介した脳室帯構造維持の破綻や神経幹細胞の細胞増殖の障害とともに脳室帯離脱後の細胞移動障害などが考えられている。
 Sheenら(2004)は、小脳症と脳室周囲異所性灰白質を持つトルコ家系からクラスI Arfに対するGEFであるBIG2/ARFGEF2のホモ接合型[[ミスセンス変異]]を同定した<ref name=Sheen2004><pubmed>14647276</pubmed></ref>。さらにゲノムの翻訳部領域においてミスセンス変異が生じることが通常ないゲノム領域(missense-depleted region)に着目した、先天性脳構造異常の患者に対する[[エクソーム解析]]により、[[MRI]]で脳室周囲結節性異所性灰白質を示す発達障害とともに[[注意欠如・多動性障害]]を示す男児からARF1のGDP結合部位のミスセンス変異(p.Tyr35His)が同定された<ref name=Ge2016><pubmed>28868155</pubmed></ref>。その後、ARF1遺伝子のde novoミスセンス変異がさらに13ヶ所見出されている<ref name=deSainteAgathe2023><pubmed>37185208</pubmed></ref><ref name=Ishida2023><pubmed>36345169</pubmed></ref>。ARF1遺伝子変異を持つ患者は、[[知的障害]]とともに小脳症、異所性灰白質、脳梁の菲薄化などの種々の程度の脳構造異常を伴う。小脳症と脳室周囲異所性灰白質の機序として、BIG2→ARF1経路の障害による脳室上皮細胞間の細胞接着を介した脳室帯構造維持の破綻や神経幹細胞の細胞増殖の障害とともに脳室帯離脱後の細胞移動障害などが考えられている。


 また、[[常染色体顕性遺伝]]性の先天性脳形成異常の患者からARF3遺伝子の2種類のde novoのミスセンス変異が同定されている<ref name=Sakamoto2021><pubmed>34346499</pubmed></ref>。ARF3遺伝子変異患者が呈した脳形成障害は、進行性の[[大脳]]や[[脳幹]]の萎縮あるいは非進行性の小脳低形成で2症例間で異なるが、いずれの患者も著明な発育遅延、てんかん、知的障害を伴う。
 また、[[常染色体顕性遺伝]]性の先天性脳形成異常の患者からARF3遺伝子の2種類のde novoのミスセンス変異が同定されている<ref name=Sakamoto2021><pubmed>34346499</pubmed></ref>。ARF3遺伝子変異患者が呈した脳形成障害は、進行性の[[大脳]]や[[脳幹]]の萎縮あるいは非進行性の小脳低形成で2症例間で異なるが、いずれの患者も著明な発育遅延、てんかん、知的障害を伴う。