「Mediator of cell motility 1」の版間の差分

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==== シグナル伝達制御 ====
==== シグナル伝達制御 ====
 MEMO1は受容体型チロシンキナーゼの細胞内アダプタータンパク質として、シグナル伝達経路の一端を担っている。ERBB2の細胞内領域に存在する複数のリン酸化部位のうち、1227番目のリン酸化チロシンを含む配列に特異的に結合し<ref name=Marone2004><pubmed>15156151</pubmed></ref>、ERBB2リガンド(Heregulin β1(HRG)など)に対する細胞応答を調節する。MEMO1の下流では、Ras homolog family member A(RhoA)やMammalian diaphanous-related formin 1(mDia)、Actin cross-linking factor 7(ACF7)といった細胞骨格系の制御分子が働き、微小管のリモデリングを介してがん細胞の遊走能を促進する(後述の「細胞骨格系の制御」を参照)<ref name=Zaoui2010><pubmed>20937854</pubmed></ref><ref name=Zaoui2008><pubmed>18955552</pubmed></ref>。同定された当初は、MEMO1が既知のリン酸化チロシン結合ドメインを持たないことから、ERBB2との結合はSHC adaptor proteinなどを介した間接的な相互作用だと考えられた。しかし、その後のQiuらによるX線結晶構造解析の結果、MEMO1は自身のジオキシゲナーゼ酵素活性部位に相当するアミノ酸領域(putativeな金属イオン結合ポケット)を介してERBB2と直接結合することが示された(図1、2)<ref name=Qiu2008><pubmed>18045866</pubmed></ref>。
 MEMO1は受容体型チロシンキナーゼの細胞内アダプタータンパク質として、シグナル伝達経路の一端を担っている。ERBB2の細胞内領域に存在する複数の[[リン酸化]]部位のうち、1227番目のリン酸化[[チロシン]]を含む配列に特異的に結合し<ref name=Marone2004><pubmed>15156151</pubmed></ref>、ERBB2リガンド([[Heregulin β1]]([[HRG]])など)に対する細胞応答を調節する。MEMO1の下流では、[[ras homolog family member A]]([[RhoA]])や[[mammalian diaphanous-related formin 1]]([[mDia]])、[[actin cross-linking factor 7]]([[ACF7]])といった細胞骨格系の制御分子が働き、[[微小管]]のリモデリングを介してがん細胞の[[遊走能]]を促進する(後述の「[[Mediator of ERBB2-driven cell motility 1#細胞骨格系の制御|細胞骨格系の制御]]」を参照)<ref name=Zaoui2010><pubmed>20937854</pubmed></ref><ref name=Zaoui2008><pubmed>18955552</pubmed></ref>。同定された当初は、MEMO1が既知のリン酸化チロシン結合ドメインを持たないことから、ERBB2との結合は[[SHC adaptor protein]]などを介した間接的な相互作用だと考えられた。しかし、その後のQiuらによるX線結晶構造解析の結果、MEMO1は自身のジオキシゲナーゼ酵素活性部位に相当するアミノ酸領域(putativeな金属イオン結合ポケット)を介してERBB2と直接結合することが示された(図1、2)<ref name=Qiu2008><pubmed>18045866</pubmed></ref>。


 ERBB2以外にも、MEMO1はFibroblast growth factor receptor 1(FGFR1)の細胞内領域と結合し、その下流のPhosphatidylinositol-3 kinase (PI3K)-Akt経路を正に制御する<ref name=Haenzi2014><pubmed>24056085</pubmed></ref>。また、Insulin like growth factor 1 receptor(IGF1R)を介したシグナル伝達では、IGF1Rの細胞内アダプタータンパク質であるInsulin receptor substrate 1 (IRS1)とMEMO1が相互作用することで、PI3K-Akt経路の活性化と、その下流のSnail活性化および上皮間葉転換の誘導が生じ、がん細胞の転移能獲得につながることが示されている<ref name=Sorokin2013><pubmed>22824790</pubmed></ref>。受容体型チロシンキナーゼ以外にも、エストロゲン受容体やSphingosine-1-phosphate receptor 1(S1PR1)を介したシグナルの調節に関与することも報告されている<ref name=Frei2016><pubmed>27472465</pubmed></ref><ref name=Kondo2014><pubmed>24714781</pubmed></ref>。
 ERBB2以外にも、MEMO1は[[Fibroblast growth factor receptor 1]]([[FGFR1]])の細胞内領域と結合し、その下流の[[phosphatidylinositol-3 kinase]] ([[PI3K]])-[[Akt]]経路を正に制御する<ref name=Haenzi2014><pubmed>24056085</pubmed></ref>。また、[[insulin like growth factor 1 receptor]]([[IGF1R]])を介したシグナル伝達では、IGF1Rの細胞内アダプタータンパク質である[[insulin receptor substrate 1]] ([[IRS1]])とMEMO1が相互作用することで、PI3K-Akt経路の活性化と、その下流の[[Snail]]活性化および[[上皮間葉転換]]の誘導が生じ、がん細胞の転移能獲得につながることが示されている<ref name=Sorokin2013><pubmed>22824790</pubmed></ref>。受容体型チロシンキナーゼ以外にも、[[エストロゲン]]受容体やSphingosine-1-phosphate receptor 1(S1PR1)を介したシグナルの調節に関与することも報告されている<ref name=Frei2016><pubmed>27472465</pubmed></ref><ref name=Kondo2014><pubmed>24714781</pubmed></ref>。


==== 細胞骨格系の制御 ====
==== 細胞骨格系の制御 ====
 MEMO1は微小管線維のラメリポディアへの伸展に重要な役割を果たしている。がん細胞株を用いた研究で、ERBB2リガンドの添加によってMEMO1がラメリポディアにリクルートされることが示されている<ref name=Marone2004><pubmed>15156151</pubmed></ref>。この際、RhoA、mDia、Adenomatous polyposis coli(APC)、Cytoplasmic linker associated protein 2(CLASP2)、ACF7といった細胞骨格制御タンパク質がMEMO1依存的にラメリポディアにリクルートされ、ラメリポディアにおいて微小管線維を捕捉し安定化させる<ref name=Zaoui2010><pubmed>20937854</pubmed></ref><ref name=Zaoui2008><pubmed>18955552</pubmed></ref>。また、MEMO1は、ERBB2の下流でPhospholipase C gamma 1(PLCγ1)と協調してCofilinの活性を制御し、アクチンダイナミクスの制御にも関わる<ref name=Meira2009><pubmed>19223396</pubmed></ref>。
 MEMO1は微小管線維の[[ラメリポディア]]への伸展に重要な役割を果たしている。がん細胞株を用いた研究で、ERBB2リガンドの添加によってMEMO1がラメリポディアにリクルートされることが示されている<ref name=Marone2004><pubmed>15156151</pubmed></ref>。この際、RhoA、mDia、[[adenomatous polyposis coli]]([[APC]])、[[cytoplasmic linker associated protein 2]](CLASP2)、ACF7といった細胞骨格制御タンパク質がMEMO1依存的にラメリポディアにリクルートされ、ラメリポディアにおいて微小管線維を捕捉し安定化させる<ref name=Zaoui2010><pubmed>20937854</pubmed></ref><ref name=Zaoui2008><pubmed>18955552</pubmed></ref>。また、MEMO1は、ERBB2の下流で[[phospholipase Cγ1]](PLCγ1)と協調して[[cofilin]]の活性を制御し、アクチンダイナミクスの制御にも関わる<ref name=Meira2009><pubmed>19223396</pubmed></ref>。


==== 細胞内レドックス制御 ====
==== 細胞内レドックス制御 ====
 精製タンパク質を用いた実験でMEMO1が銅(II)イオンを還元する活性を示すことが明らかとなった<ref name=MacDonald2014><pubmed>24917593</pubmed></ref>。バクテリアのジオキシゲナーゼにおいて酵素活性に重要なヒスチジン残基に相当する、192番目のヒスチジン(図1、2)を変異させたMEMO1では、この銅イオン還元活性が大きく低下する。乳がん細胞株を用いた研究で、MEMO1がRhoAやShcの酸化還元状態(システイン残基のチオール基の修飾状態)を調節すること、およびラメリポディアにおいて局所的に活性酸素種(reactive oxygen species)を増加させることがわかっている<ref name=MacDonald2014><pubmed>24917593</pubmed></ref>。
 精製タンパク質を用いた実験でMEMO1が銅(II)イオンを還元する活性を示すことが明らかとなった<ref name=MacDonald2014><pubmed>24917593</pubmed></ref>。バクテリアのジオキシゲナーゼにおいて酵素活性に重要な[[ヒスチジン]]残基に相当する、192番目のヒスチジン('''図1、2''')を変異させたMEMO1では、この銅イオン還元活性が大きく低下する。乳がん細胞株を用いた研究で、MEMO1がRhoAや[[Shc]]の酸化還元状態([[システイン]]残基の[[チオール基]]の修飾状態)を調節すること、およびラメリポディアにおいて局所的に[[活性酸素]]種(reactive oxygen species)を増加させることがわかっている<ref name=MacDonald2014><pubmed>24917593</pubmed></ref>。


=== 細胞、個体レベルでの機能 ===
=== 細胞、個体レベルでの機能 ===
 MEMO1の全身性遺伝子欠損マウスでは、胎生期のE13.5以降から浮腫や出血を呈し、胎性致死となる<ref name=Haenzi2014><pubmed>24056085</pubmed></ref><ref name=Kondo2014><pubmed>24714781</pubmed></ref>。タモキシフェン誘導性Creを有するトランスジェニックマウスとMEMO1のfloxマウスを掛け合わせ、生後にタモキシフェンを投与することで胎性致死を回避した条件的MEMO1全身性遺伝子欠損マウスでは、低身長、低体重、脊柱後湾、精子形成不全、脱毛、寿命短縮などの全身症状が生じる<ref name=Haenzi2014><pubmed>24056085</pubmed></ref>。各組織に着目した次のような研究によって、MEMO1の多様な役割が細胞レベル、個体レベルで明らかとなってきている。
 MEMO1の全身性遺伝子欠損マウスでは、胎生期のE13.5以降から[[浮腫]]や[[出血]]を呈し、[[胎性致死]]となる<ref name=Haenzi2014><pubmed>24056085</pubmed></ref><ref name=Kondo2014><pubmed>24714781</pubmed></ref>。[[タモキシフェン]]誘導性[[Cre]]を有する[[トランスジェニックマウス]]とMEMO1の[[flox]]マウスを掛け合わせ、生後にタモキシフェンを投与することで胎性致死を回避した条件的MEMO1全身性遺伝子欠損マウスでは、低身長、低体重、[[脊柱後湾]]、[[精子]]形成不全、脱毛、寿命短縮などの全身症状が生じる<ref name=Haenzi2014><pubmed>24056085</pubmed></ref>。各組織に着目した次のような研究によって、MEMO1の多様な役割が細胞レベル、個体レベルで明らかとなってきている。


==== 大脳皮質の発生 ====
==== 大脳皮質の発生 ====
 哺乳類の大脳皮質の形成過程では、放射状グリア細胞と呼ばれる神経幹細胞が脳室帯に存在し、脳表面の基底膜側に向けて伸びる一本の長い突起(basal process、基底膜側突起)によって基底膜と接着している(「放射状グリア細胞」参照)。放射状グリア細胞は、神経細胞の産生だけでなく、神経細胞の移動の足場としても働いている。放射状グリア細胞においてMEMO1は、微小管線維の束状化を介して基底膜側突起の形態維持に寄与している<ref name=Nakagawa2019><pubmed>31277925</pubmed></ref>。マウスにおいて、放射状グリア細胞でMEMO1遺伝子を欠損させると、基底膜側突起の過剰な枝分かれが生じ、興奮性神経細胞の放射状移動(皮質板に向けた移動)と大脳皮質層構造の形成に異常が生じることが明らかとなった<ref name=Nakagawa2019><pubmed>31277925</pubmed></ref>。MEMO1を欠損した放射状グリア細胞では、微小管のマイナス端結合タンパク質であるCalmodulin-regulated spectrin-associated protein 2(CAMSAP2)の基底膜側突起内存在量が増加することによって非中心体性の微小管形成が亢進し、これが基底膜側突起自体の枝分かれにつながる<ref name=Nakagawa2019><pubmed>31277925</pubmed></ref>。ヒト胎児由来の培養神経幹細胞でMEMO1をノックダウンした場合でも突起の過剰分岐が生じることから<ref name=Nakagawa2019><pubmed>31277925</pubmed></ref>、放射状グリア細胞におけるMEMO1の機能はヒトでも保存されていると考えられる。
 哺乳類の大脳皮質の形成過程では、[[放射状グリア細胞]]と呼ばれる[[神経幹細胞]]が[[脳室帯]]に存在し、脳表面の[[基底膜]]側に向けて伸びる一本の長い突起(basal process、基底膜側突起)によって基底膜と接着している(「[[放射状グリア細胞]]」参照)。放射状グリア細胞は、神経細胞の産生だけでなく、神経細胞の移動の足場としても働いている。放射状グリア細胞においてMEMO1は、微小管線維の束状化を介して基底膜側突起の形態維持に寄与している<ref name=Nakagawa2019><pubmed>31277925</pubmed></ref>。マウスにおいて、放射状グリア細胞でMEMO1遺伝子を欠損させると、基底膜側突起の過剰な枝分かれが生じ、興奮性神経細胞の放射状移動(皮質板に向けた移動)と大脳皮質層構造の形成に異常が生じることが明らかとなった<ref name=Nakagawa2019><pubmed>31277925</pubmed></ref>。MEMO1を欠損した放射状グリア細胞では、微小管のマイナス端結合タンパク質であるCalmodulin-regulated spectrin-associated protein 2(CAMSAP2)の基底膜側突起内存在量が増加することによって非中心体性の微小管形成が亢進し、これが基底膜側突起自体の枝分かれにつながる<ref name=Nakagawa2019><pubmed>31277925</pubmed></ref>。ヒト胎児由来の培養神経幹細胞でMEMO1をノックダウンした場合でも突起の過剰分岐が生じることから<ref name=Nakagawa2019><pubmed>31277925</pubmed></ref>、放射状グリア細胞におけるMEMO1の機能はヒトでも保存されていると考えられる。


==== 小脳の発生 ====
==== 小脳の発生 ====
 小脳発生における選択的ポリA付加反応の役割に着目した研究で、小脳顆粒細胞において、MEMO1のmRNAに3'側非翻訳領域の長さが異なる2種類のアイソフォームが存在することが明らかとなった<ref name=Jereb2018><pubmed>29578408</pubmed></ref>。顆粒細胞の前駆細胞には3'側非翻訳領域の短いmRNAが多く、分化の進んだ顆粒細胞には3'側非翻訳領域の長いmRNAが多い。長いMEMO1アイソフォームはmiR-124の標的配列を含んでいるため、分化した顆粒細胞ではMEMO1のタンパク質発現がmiR-124依存的に抑制される。MEMO1遺伝子欠損マウスでは、小脳顆粒細胞前駆細胞の増殖能低下と小脳の低形成が生じる。すなわち、MEMO1は顆粒細胞の増殖を正に制御しており、この機能が必要な前駆細胞の期間中、短いmRNA アイソフォームを発現することによってmiR-124依存的な抑制を回避し、MEMO1の発現を維持していると想定される。したがって、小脳顆粒細胞の発生において、選択的ポリA付加によってMEMO1は時期特異的な役割を発揮していると考えられる<ref name=Jereb2018><pubmed>29578408</pubmed></ref>。
 小脳発生における選択的ポリA付加反応の役割に着目した研究で、小脳[[顆粒細胞]]において、MEMO1のmRNAに3'側非翻訳領域の長さが異なる2種類のアイソフォームが存在することが明らかとなった<ref name=Jereb2018><pubmed>29578408</pubmed></ref>。顆粒細胞の前駆細胞には3'側非翻訳領域の短いmRNAが多く、分化の進んだ顆粒細胞には3'側非翻訳領域の長いmRNAが多い。長いMEMO1アイソフォームは[[miR-124]]の標的配列を含んでいるため、分化した顆粒細胞ではMEMO1のタンパク質発現がmiR-124依存的に抑制される。MEMO1遺伝子欠損マウスでは、小脳顆粒細胞前駆細胞の増殖能低下と小脳の低形成が生じる。すなわち、MEMO1は顆粒細胞の増殖を正に制御しており、この機能が必要な前駆細胞の期間中、短いmRNAアイソフォームを発現することによってmiR-124依存的な抑制を回避し、MEMO1の発現を維持していると想定される。したがって、小脳顆粒細胞の発生において、選択的ポリA付加によってMEMO1は時期特異的な役割を発揮していると考えられる<ref name=Jereb2018><pubmed>29578408</pubmed></ref>。
 MEMO1はバーグマングリア細胞にも発現している。MEMO1遺伝子の欠損によってバーグマングリアの組織内分布の乱れと放射状線維の低形成が生じる<ref name=Nakagawa2019><pubmed>31277925</pubmed></ref>。バーグマングリアの放射状線維は、生後発達期の小脳顆粒細胞の外顆粒層から内顆粒層への細胞移動の足場として重要であり、実際にMEMO1遺伝子欠損マウスでは顆粒細胞の移動が障害され外顆粒層に異所的な残存が認められる<ref name=Nakagawa2019><pubmed>31277925</pubmed></ref>。
 MEMO1は[[バーグマングリア細胞]]にも発現している。MEMO1遺伝子の欠損によってバーグマングリアの組織内分布の乱れと放射状線維の低形成が生じる<ref name=Nakagawa2019><pubmed>31277925</pubmed></ref>。バーグマングリアの放射状線維は、生後発達期の小脳[[顆粒細胞]]の[[外顆粒層]]から[[内顆粒層]]への細胞移動の足場として重要であり、実際にMEMO1遺伝子欠損マウスでは顆粒細胞の移動が障害され外顆粒層に異所的な残存が認められる<ref name=Nakagawa2019><pubmed>31277925</pubmed></ref>。


==== 骨形成 ====
==== 骨形成 ====
 MEMO1は骨組織の形成にも重要な役割を担う。MEMO1遺伝子欠損マウスでは、頭蓋顔面骨格の形成(特に2次口蓋骨の形成)および大腿骨の骨梁形成に異常が認められる<ref name=Moor2018><pubmed>30038965</pubmed></ref><ref name=Van Otterloo2016><pubmed>26746790</pubmed></ref>。MEMO1を欠損した骨芽細胞ではEpidermal growth factor(EGF)やFibroblast growth factor 2(FGF2)への応答性が低下しており、これが骨形成異常の原因だと考えられている<ref name=Moor2018><pubmed>30038965</pubmed></ref>。
 MEMO1は骨組織の形成にも重要な役割を担う。MEMO1遺伝子欠損マウスでは、頭蓋顔面骨格の形成(特に2次口蓋骨の形成)および[[大腿骨]]の[[骨梁]]形成に異常が認められる<ref name=Moor2018><pubmed>30038965</pubmed></ref><ref name=Van Otterloo2016><pubmed>26746790</pubmed></ref>。MEMO1を欠損した骨芽細胞ではEpidermal growth factor(EGF)やFibroblast growth factor 2(FGF2)への応答性が低下しており、これが骨形成異常の原因だと考えられている<ref name=Moor2018><pubmed>30038965</pubmed></ref>。


==== 血管形成 ====
==== 血管形成 ====
 MEMO1の全身性遺伝子欠損マウスは胎性致死となるが、重度の出血がその要因の一つだと考えられており、MEMO1機能と血管形成との関連が示唆される<ref name=Haenzi2014><pubmed>24056085</pubmed></ref><ref name=Kondo2014><pubmed>24714781</pubmed></ref>。その一方で、MEMO1遺伝子欠損マウス胎仔において血管の形態的異常は認められない<ref name=Kondo2014><pubmed>24714781</pubmed></ref>。血管内皮細胞特異的にMEMO1遺伝子を欠損させたマウスの胎仔でも同様の出血がみられることから、血管内皮細胞におけるMEMO1の機能が血管形成に重要であると考えられている<ref name=Kondo2014><pubmed>24714781</pubmed></ref>。
 MEMO1の全身性遺伝子欠損マウスは胎性致死となるが、重度の出血がその要因の一つだと考えられており、MEMO1機能と血管形成との関連が示唆される<ref name=Haenzi2014><pubmed>24056085</pubmed></ref><ref name=Kondo2014><pubmed>24714781</pubmed></ref>。その一方で、MEMO1遺伝子欠損マウス胎仔において血管の形態的異常は認められない<ref name=Kondo2014><pubmed>24714781</pubmed></ref>。血管内皮細胞特異的にMEMO1遺伝子を欠損させたマウスの胎仔でも同様の出血がみられることから、[[血管内皮]]細胞におけるMEMO1の機能が血管形成に重要であると考えられている<ref name=Kondo2014><pubmed>24714781</pubmed></ref>。


== 疾患との関わり ==
== 疾患との関わり ==

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