「成長円錐」の版間の差分

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ケージドカルシウム光解離法を用いて、成長円錐内に局所的なカルシウムシグナルを励起すると、成長円錐の旋回運動を誘導することができる。また、様々な軸索ガイダンス因子の濃度勾配に遭遇した成長円錐内で非対称なカルシウムイオン濃度上昇が観察されること、成長円錐内のカルシウムシグナルを遮断すると成長円錐の誘引-反発応答が消失することから、局所的なカルシウムシグナルは誘引性、反発性を問わず軸索ガイダンスシグナルの中心的役割を担っていると考えられている。  
ケージドカルシウム光解離法を用いて、成長円錐内に局所的なカルシウムシグナルを励起すると、成長円錐の旋回運動を誘導することができる。また、様々な軸索ガイダンス因子の濃度勾配に遭遇した成長円錐内で非対称なカルシウムイオン濃度上昇が観察されること、成長円錐内のカルシウムシグナルを遮断すると成長円錐の誘引-反発応答が消失することから、局所的なカルシウムシグナルは誘引性、反発性を問わず軸索ガイダンスシグナルの中心的役割を担っていると考えられている。  


成長円錐の誘引、反発という全く逆の応答の両方にカルシウムシグナルが関与することは非常に興味深く、カルシウムシグナルによる誘引-反発の決定機構として、現在2つのモデルが提唱されている。
成長円錐の誘引、反発という全く逆の応答の両方にカルシウムシグナルが関与することは非常に興味深く、カルシウムシグナルによる誘引-反発の決定機構として、現在2つのモデルが提唱されている。  


1つは成長円錐内で上昇するカルシウムイオン濃度の絶対量による差が誘引-反発を決定するというモデルで、高カルシウムイオンの流入は誘引性応答を、低カルシウムイオン流入は反発性応答を誘導するというものである。例えば、ネトリン-1に対する成長円錐の誘引は、L型電位依存性カルシウムチャネル、あるいはリアノジン受容体を選択的に阻害することで反発に変わるが、このモデルではカルシウム流入源の選択的阻害によりカルシウムシグナルが小さくなり誘引が反発に転換すると説明されている。
1つは成長円錐内で上昇するカルシウムイオン濃度の絶対量による差が誘引-反発を決定するというモデルで、高カルシウムイオンの流入は誘引性応答を、低カルシウムイオン流入は反発性応答を誘導するというものである。例えば、ネトリン-1に対する成長円錐の誘引は、L型電位依存性カルシウムチャネル、あるいはリアノジン受容体を選択的に阻害することで反発に変わるが、このモデルではカルシウム流入源の選択的阻害によりカルシウムシグナルが小さくなり誘引が反発に転換すると説明されている。  


2つ目は誘引-反発はカルシウムの絶対量でなく流入するカルシウムチャネルの種類に依存するというモデルで、小胞体ストアからのカルシウム放出は誘引性の誘発に十分というものである。実際に、ケージドカルシウム光解離法により誘導される誘引性旋回運動にはリアノジン受容体からのカルシウム依存性カルシウム放出が必要で、リアノジン受容体を不活化した条件で高いカルシウムイオン濃度上昇を引き起こしても誘引性応答は誘導されない。また、ケージドIP<sub>3</sub>の光解離による局所的IP<sub>3</sub>依存性カルシウム放出も成長円錐の誘引性旋回運動を誘導するのに十分である。このモデルでは、各種カルシウムチャネルの近傍に存在するカルシウム感受性分子の種類の違いが誘引-反発の応答を決定するというものである。  
2つ目は誘引-反発はカルシウムの絶対量でなく流入するカルシウムチャネルの種類に依存するというモデルで、小胞体ストアからのカルシウム放出は誘引性の誘発に十分というものである。実際に、ケージドカルシウム光解離法により誘導される誘引性旋回運動にはリアノジン受容体からのカルシウム依存性カルシウム放出が必要で、リアノジン受容体を不活化した条件で高いカルシウムイオン濃度上昇を引き起こしても誘引性応答は誘導されない。また、ケージドIP<sub>3</sub>の光解離による局所的IP<sub>3</sub>依存性カルシウム放出も成長円錐の誘引性旋回運動を誘導するのに十分である。このモデルでは、各種カルシウムチャネルの近傍に存在するカルシウム感受性分子の種類の違いが誘引-反発の応答を決定するというものである。  
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==== 膜トラフィッキング  ====
==== 膜トラフィッキング  ====


==== 局所タンパク質合成と分解  ====


成長円錐には小胞体やmRNA、リボソーム、翻訳制御因子等タンパク質の翻訳合成に必要な分子機構が備わっており、成長円錐において実際にタンパク質合成が起きていることは古くから知られていた。近年、このタンパク質の局所翻訳が軸索ガイダンス因子が誘導する成長円錐の旋回運動に関与することが報告されている。


==== 局所タンパク質合成と分解  ====
Holtのグループは、細胞体から切り離した軸索の成長円錐のネトリン-1に応答するがタンパク質合成阻害剤により消失することを報告した。このことは成長円錐の旋回運動には成長円錐における局所タンパク質合成が必要であることを示している。その後、BDNF、Sema3A、Slit2など、他の軸索ガイダンス因子ついても成長円錐の旋回運動の誘導に局所タンパク質合成が必要であることが報告されている。


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