「受容野」の版間の差分

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 逆相関法において遅延時間を変えることで得られる、細胞がスパイクを発する直前の空間受容野の時系列が時空間受容野そのものになる。このように効率よく時空間受容野を求めることができることは逆相関法の大きな利点である。この構造は空間2次元+時間1次元の合計3次元の構造となるので紙面等で表すのは不便である。このため時空間受容野を表すときは、ある軸に沿って空間受容野を積分して2次元で表す場合が多い(後図5参照)。
 逆相関法において遅延時間を変えることで得られる、細胞がスパイクを発する直前の空間受容野の時系列が時空間受容野そのものになる。このように効率よく時空間受容野を求めることができることは逆相関法の大きな利点である。この構造は空間2次元+時間1次元の合計3次元の構造となるので紙面等で表すのは不便である。このため時空間受容野を表すときは、ある軸に沿って空間受容野を積分して2次元で表す場合が多い(後図5参照)。
===網膜、視床中継核でみられる古典的受容野構造===
 眼球に入った視覚情報は、視細胞で受容されたのち、双極細胞、網膜神経節細胞と伝達され、視神経を介して視床外側膝状体(Lateral Geniculate Nucleus, LGN)を経て、大脳皮質第一次視覚野(Primary visual cortex, V1野)へと至る。この経路を皮質下視覚伝導路と呼ぶ。以下にこの経路における受容野構造をみていく。
 外界の光を電気信号に変換する役割を果たす視細胞には桿体、錐体と2種類のものがあり、それぞれ暗所視および明所視、色覚に関与していると考えられているが、その受容野構造はともに概ね円状で、受容野サイズは非常に小さく、中心窩では視角にして0.5分程度(1/120度)である。
 視細胞からの入力を受け取る双極細胞や次の段階に位置する網膜神経節細胞は、受容野の中心領域に明るい光を照射したときに興奮応答し、暗い光を照射したとき(あるいは明るい光をオフしたとき)に抑制応答するON中心型タイプと、暗い光に興奮し明るい光に抑制を受けるOFF中心型タイプに分化している。いずれのタイプも、中心領域の周辺に光を照射したときには、中心領域と逆の応答をする。すなわち、ON中心型の周辺部では明るい光に抑制、暗い光に興奮応答がみられ、OFF中心型の周辺部では明るい光に興奮、暗い光に抑制応答がみられる。そこで、前者の受容野構造をON中心OFF周辺型(図2A)、逆のタイプをOFF中心ON周辺型とも呼んでいる(図2B)。中心領域と周辺領域は同心円状に配置しており、2つの領域が逆の反応を示すことからこのような受容野構造を中心周辺拮抗型とぶ。このような構造をもつ細胞は、図2Cのような2次元のサイン波でテストしたとき、明るい光がON領域に、暗い光がOFF領域に十分入るときには反応するが(左)、位相がずれたり(中)や周期がずれると(右)ほとんど反応しないことから、明暗コントラストで定義されるエッジの幅や位置の情報を伝達していると捉えることができる。工学的な見地からは、このような細胞はサイン波の空間周波数(=周期の逆数)や位相の情報を伝達していると捉えることができる。
 中心周辺拮抗型の受容野構造は2つのガウス関数の差分であるDOG(Difference of Gaussian)関数で表すことができる(図2A, B下段)。また線形性をもつために、細胞の応答は入力刺激とDOG関数の線形畳み込みで近似できる。ただし、このような近似が十分に成り立つ細胞とそうでない細胞が存在し、前者をX細胞、後者をY細胞という。
 LGNの受容野構造は網膜神経節細胞とほぼ同一であり、中心—周辺の同心円構造をもつ。これは個々のLGNニューロンが1つの網膜神経節細胞からのみ投射を受けることで(1つの網膜神経節細胞は5から50個のLGN細胞に入力を送っている)、その反応特性が形成されているためである。
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