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英:Hypothalamus | |||
視床下部とは、間脳に位置し、内分泌や自律機能の調節を行う総合中枢である。ヒトの場合は脳重量のわずか0.3%程度を占めるにすぎない小さな組織であるが、多くの神経核から構成されており、体温維持や摂食行動、性行動や睡眠覚醒など多様な機能を協調して管理することで生体の恒常性維持に重要な役割を果たしている。中脳以下の自律機能を司る中枢がそれぞれ呼吸運動や血管運動などの個別の自律機能を調節するのに対して、視床下部は交感神経・副交感神経機能や内分泌を統合的に調節している。系統発生的には古い脳領域であり、摂食行動、性行動、睡眠といった本能行動や怒りや不安などの情動行動の中枢である。 | 視床下部とは、間脳に位置し、内分泌や自律機能の調節を行う総合中枢である。ヒトの場合は脳重量のわずか0.3%程度を占めるにすぎない小さな組織であるが、多くの神経核から構成されており、体温維持や摂食行動、性行動や睡眠覚醒など多様な機能を協調して管理することで生体の恒常性維持に重要な役割を果たしている。中脳以下の自律機能を司る中枢がそれぞれ呼吸運動や血管運動などの個別の自律機能を調節するのに対して、視床下部は交感神経・副交感神経機能や内分泌を統合的に調節している。系統発生的には古い脳領域であり、摂食行動、性行動、睡眠といった本能行動や怒りや不安などの情動行動の中枢である。 | ||
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=== 視交叉上核(Suprachiasmatic nucleus: SCN) === | === 視交叉上核(Suprachiasmatic nucleus: SCN) === | ||
視床下部の底部、視交叉のすぐ上に位置する一対の神経核で、密集した大型の神経細胞から構成されている(一般に視床下部の神経核は主として散在性の小細胞から構成されている)。視交叉上核には神経ホルモンであるバゾプレシンあるいはオキシトシンを含む神経分泌ニューロンの細胞体が存在し、そこから延びる軸索は下垂体後葉に投射して毛細血管に神経分泌している。視交叉上核は体内時計の中枢としても知られている(Welsh, Takahasi, Kay, 2010-Annu Rev Physiol) | 視床下部の底部、視交叉のすぐ上に位置する一対の神経核で、密集した大型の神経細胞から構成されている(一般に視床下部の神経核は主として散在性の小細胞から構成されている)。視交叉上核には神経ホルモンであるバゾプレシンあるいはオキシトシンを含む神経分泌ニューロンの細胞体が存在し、そこから延びる軸索は下垂体後葉に投射して毛細血管に神経分泌している。視交叉上核は体内時計の中枢としても知られている(Welsh, Takahasi, Kay, 2010-Annu Rev Physiol)。視交叉上核を破壊された動物では、規則正しい睡眠・覚醒リズムが完全になくなってしまう。視交叉上核は光の情報を目から受け取る。目の網膜において光を感受できる細胞は、古くから知られている視細胞の桿体細胞、錐体細胞のみではなく、網膜神経節細胞の一部にも存在する。これらの細胞はメラノプシンと呼ばれる感光色素を含んでおり、網膜視床下部路を通って視交叉上核に達する。視交叉上核の細胞は、体内から取り出され外界からの刺激がない状態で培養されても、自律的にリズムを刻み続けることができる<ref>Welsh@Reppert, 1995-Neuron</ref>。視交叉上核は日長の情報を網膜から受け取り、他の情報と統合し、松果体へ送信していると考えられている。松果体ではこの情報に応答してホルモンであるメラトニンを分泌する。メラトニン分泌は夜間に高く昼間に低い。 | ||
=== 結節乳頭体核(Tuberomammillary nucleus: TMN) === | === 結節乳頭体核(Tuberomammillary nucleus: TMN) === | ||
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=== 腹内側核(Ventromedial hypothalamic nucleus: VMN) === | === 腹内側核(Ventromedial hypothalamic nucleus: VMN) === | ||
腹内側核は視床下部の中で最も大きく明瞭な核であり、小型または中型の細胞から構成されている。満腹中枢としての機能は1940年代におこなわれた腹内側核の除去が動物に肥満をもたらすという様々な実験結果から提唱されたものであり、1970年代に肥満をもたらしているのは室傍核など腹内側核の周辺組織の受けた損傷であるという反論があったものの、現在でも有効である | 腹内側核は視床下部の中で最も大きく明瞭な核であり、小型または中型の細胞から構成されている。満腹中枢としての機能は1940年代におこなわれた腹内側核の除去が動物に肥満をもたらすという様々な実験結果から提唱されたものであり、1970年代に肥満をもたらしているのは室傍核など腹内側核の周辺組織の受けた損傷であるという反論があったものの、現在でも有効である<ref>King, 2006-Physiology and Behavior</ref> | ||
== 視床下部の機能について == | == 視床下部の機能について == | ||
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== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
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(執筆者: 担当編集委員:) |
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