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=== リピートRNA毒性 === | === リピートRNA毒性 === | ||
異常伸長したリピート配列は両方向性に転写され、GGGGCCリピートおよびその逆鎖であるCCCCGGリピートを含むリピートRNAが産生される。これらのリピートRNAはRNA結合タンパク質(RBP: RNA-binding protein)と異常な相互作用を獲得して、RBPの生理的な分布や機能を撹乱し得る。特に、リピートRNAは異常な高次構造を形成してRNA fociと呼ばれるRNA凝集体を形成し、種々のRBPと共凝集することが示されている<ref name=DeJesusHernandez2011><pubmed>21944778</pubmed></ref>[3]<ref name=Haeusler2014><pubmed>24598541</pubmed></ref>[36]。例えば、GGGGCCリピートRNAが形成するRNA fociは、hnRNPH, hnRNPF, hnRNPA1, ALYREF, SRSF2, nucleolinといった多数のRBPと共局在し<ref name=Haeusler2014><pubmed>24598541</pubmed></ref>[36]<ref name=Conlon2016>Conlon E.G., Lu L., Sharma A., Yamazaki T., Tang T., Shneider N.A., Manley J.L. (2016). eLife, 5:e17820. https://doi.org/10.7554/eLife.17820.030</ref>[37]<ref name=Lee2013><pubmed>24290757</pubmed></ref>[38]<ref name=CooperKnock2014><pubmed>24866055</pubmed></ref>[39]hnRNPHのRNA fociへの共凝集は標的mRNAのスプライシング異常を来すことが報告されている<ref name=Conlon2016> | 異常伸長したリピート配列は両方向性に転写され、GGGGCCリピートおよびその逆鎖であるCCCCGGリピートを含むリピートRNAが産生される。これらのリピートRNAはRNA結合タンパク質(RBP: RNA-binding protein)と異常な相互作用を獲得して、RBPの生理的な分布や機能を撹乱し得る。特に、リピートRNAは異常な高次構造を形成してRNA fociと呼ばれるRNA凝集体を形成し、種々のRBPと共凝集することが示されている<ref name=DeJesusHernandez2011><pubmed>21944778</pubmed></ref>[3]<ref name=Haeusler2014><pubmed>24598541</pubmed></ref>[36]。例えば、GGGGCCリピートRNAが形成するRNA fociは、hnRNPH, hnRNPF, hnRNPA1, ALYREF, SRSF2, nucleolinといった多数のRBPと共局在し<ref name=Haeusler2014><pubmed>24598541</pubmed></ref>[36]<ref name=Conlon2016>Conlon E.G., Lu L., Sharma A., Yamazaki T., Tang T., Shneider N.A., Manley J.L. (2016). eLife, 5:e17820. https://doi.org/10.7554/eLife.17820.030</ref>[37]<ref name=Lee2013><pubmed>24290757</pubmed></ref>[38]<ref name=CooperKnock2014><pubmed>24866055</pubmed></ref>[39]hnRNPHのRNA fociへの共凝集は標的mRNAのスプライシング異常を来すことが報告されている<ref name=Conlon2016><pubmed> 27623008 </pubmed></ref>[37]。 | ||
[[ファイル:Nagai C9orf72 Fig3.jpg|サムネイル|'''図3. RAN翻訳'''<br>'''(A)''' RAN翻訳は、C9orf72連鎖性ALS/FTDなど、遺伝子の非翻訳領域内のリピート伸長変異を原因とするノンコーディングリピート病の病態に関与する非古典的な翻訳機構である。リピートRNAを鋳型として、AUGコドン非依存的に翻訳が開始し、異常なリピートペプチドを産生する。翻訳は全ての読み枠で進行する。<br>'''(B)''' C9orf72連鎖性ALS/FTD においては、GGGGCCおよびCCCCGGリピートRNAを鋳型として、RAN翻訳によって合計5種類のDPRが産生される。]] | [[ファイル:Nagai C9orf72 Fig3.jpg|サムネイル|'''図3. RAN翻訳'''<br>'''(A)''' RAN翻訳は、C9orf72連鎖性ALS/FTDなど、遺伝子の非翻訳領域内のリピート伸長変異を原因とするノンコーディングリピート病の病態に関与する非古典的な翻訳機構である。リピートRNAを鋳型として、AUGコドン非依存的に翻訳が開始し、異常なリピートペプチドを産生する。翻訳は全ての読み枠で進行する。<br>'''(B)''' C9orf72連鎖性ALS/FTD においては、GGGGCCおよびCCCCGGリピートRNAを鋳型として、RAN翻訳によって合計5種類のDPRが産生される。]] | ||
=== RAN翻訳とDPR毒性 === | === RAN翻訳とDPR毒性 === | ||
非翻訳領域由来のリピートRNAは、AUG開始コドンを欠くものの、RAN翻訳によって異常なDPRが産生される。RAN翻訳は鋳型となるRNAにリピート配列が含まれる際に、AUG開始コドン非存在下に翻訳が開始し、リピートペプチドが産生される非古典的な翻訳であり('''図3A''')、元々2011年に、同じく遺伝子非翻訳領域で異常伸長したリピート配列を原因とする脊髄小脳失調症8型(CAGリピート)および筋強直性ジストロフィー1型(CTGリピート)で発見された<ref name=Zu2011><pubmed>21173221</pubmed></ref>[40]。AUGコドン非依存的な翻訳開始には、リピートRNAが形成する高次構造が重要であると示唆されている<ref name=Zu2011><pubmed>21173221</pubmed></ref>[40]。3種類全ての読み枠で翻訳が進行するため、GGGGCCリピートRNAからはDPRとしてポリグリシン-アルギニン(polyGR)、ポリグリシン-アラニン(polyGA)、ポリグリシン-プロリン(polyGP)ペプチドが、CCCCGGリピートRNAからはポリグリシン-プロリン(polyGP)、ポリプロリン-アルギニン(polyPR)、ポリプロリン-アラニン(polyPA)ペプチドが産生され、実際に患者脳や髄液で検出される('''図3B''')<ref name=Mori2013a><pubmed>23393093</pubmed></ref>[41]<ref name=Mori2013b><pubmed>24132570</pubmed></ref>[42]<ref name=Ash2013><pubmed>23415312</pubmed></ref>[43]<ref name=Zu2013><pubmed>24248382</pubmed></ref>[44]<ref name=Gendron2013><pubmed>24129584</pubmed></ref>[45]。 | 非翻訳領域由来のリピートRNAは、AUG開始コドンを欠くものの、RAN翻訳によって異常なDPRが産生される。RAN翻訳は鋳型となるRNAにリピート配列が含まれる際に、AUG開始コドン非存在下に翻訳が開始し、リピートペプチドが産生される非古典的な翻訳であり('''図3A''')、元々2011年に、同じく遺伝子非翻訳領域で異常伸長したリピート配列を原因とする脊髄小脳失調症8型(CAGリピート)および筋強直性ジストロフィー1型(CTGリピート)で発見された<ref name=Zu2011><pubmed>21173221</pubmed></ref>[40]。AUGコドン非依存的な翻訳開始には、リピートRNAが形成する高次構造が重要であると示唆されている<ref name=Zu2011><pubmed>21173221</pubmed></ref>[40]。3種類全ての読み枠で翻訳が進行するため、GGGGCCリピートRNAからはDPRとしてポリグリシン-アルギニン(polyGR)、ポリグリシン-アラニン(polyGA)、ポリグリシン-プロリン(polyGP)ペプチドが、CCCCGGリピートRNAからはポリグリシン-プロリン(polyGP)、ポリプロリン-アルギニン(polyPR)、ポリプロリン-アラニン(polyPA)ペプチドが産生され、実際に患者脳や髄液で検出される('''図3B''')<ref name=Mori2013a><pubmed>23393093</pubmed></ref>[41]<ref name=Mori2013b><pubmed>24132570</pubmed></ref>[42]<ref name=Ash2013><pubmed>23415312</pubmed></ref>[43]<ref name=Zu2013><pubmed>24248382</pubmed></ref>[44]<ref name=Gendron2013><pubmed>24129584</pubmed></ref>[45]。 | ||