「メチル化CpG結合タンパク質2」の版間の差分

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== 構造 ==
== 構造 ==
[[ファイル:Tsujimura MeCP2 Fig1.png|サムネイル|'''図1. MECP2遺伝子から発現する二つのアイソフォーム'''<br>MECP2-e1アイソフォームは選択的スプライシングによりエクソン2が除去される。MECP2-e2アイソフォームはエクソン2のATGより翻訳される。]]
=== 遺伝子構造 ===
=== 遺伝子構造 ===
 MECP2遺伝子は4つのエクソンから成り、エクソン2の選択的スプライシングにより2つの異なるアイソフォームをコードしている(図1)。MECP2aによってコードされるMeCP2-e1アイソフォームは、エクソン1によってコードされる24アミノ酸を含み、エクソン2によってコードされる9アミノ酸を欠いている。一方、MECP2bによってコードされるMeCP2-e2アイソフォームの転写開始部位はエクソン2にある。さらに、MECP2遺伝子には複数のポリアデニル化部位を含む保存性の高い3’末端非翻訳領域があり、これにより代替的に4つの異なる転写産物を産生する<ref name=Chahrour2007><pubmed>17988628</pubmed></ref> (Chahrour M & Zoghbi HY Neuron, 56, 422-437, 2007)。
 MECP2遺伝子は4つのエクソンから成り、エクソン2の選択的スプライシングにより2つの異なるアイソフォームをコードしている(図1)。MECP2aによってコードされるMeCP2-e1アイソフォームは、エクソン1によってコードされる24アミノ酸を含み、エクソン2によってコードされる9アミノ酸を欠いている。一方、MECP2bによってコードされるMeCP2-e2アイソフォームの転写開始部位はエクソン2にある。さらに、MECP2遺伝子には複数のポリアデニル化部位を含む保存性の高い3’末端非翻訳領域があり、これにより代替的に4つの異なる転写産物を産生する<ref name=Chahrour2007><pubmed>17988628</pubmed></ref> (Chahrour M & Zoghbi HY Neuron, 56, 422-437, 2007)。
[[ファイル:Tsujimura MeCP2 Fig2.png|サムネイル|'''図2: MECP2の遺伝子構造およびレット症候群患者にみられる主なMECP2遺伝子の変異'''<br>オレンジがメチル化DNA結合ドメイン(MBD)、緑が転写抑制ドメイン(TRD)、紫がNCOR-SMRT interaction domain (NID)ドメイン、青がAT-hookドメインを示している。レット症候群患者にみられる代表的なナンセンス変異(赤文字)とミスセンス変異(青文字)。]]
図1: MECP2遺伝子から発現する二つのアイソフォーム
MECP2-e1アイソフォームは選択的スプライシングによりエクソン2が除去される。MECP2-e2アイソフォームはエクソン2のATGより翻訳される。
 
=== タンパク質構造 ===
=== タンパク質構造 ===
 メチル化DNA結合ドメイン(MBD)、転写抑制ドメイン(TRD)、NCOR-SMRT interaction domain (NID)ドメイン、3つのAT-hookドメインなどの機能ドメインを有している<ref name=Lyst2015><pubmed>25732612</pubmed></ref> (Lyst MJ & Bird A, Nat Rev Genet, 16(5), 261-75, 2015)(図2)。MeCP2はMBDを介して高度にメチル化されたヘテロクロマチン領域と相互作用する。転写抑制ドメインはMeCP2の転写抑制活性に重要なドメインであり、TRD内に位置するNIDを介してNCOR-SMRT転写抑制複合体と相互作用し標的遺伝子の転写を抑制する。AT-hookドメインはAT配列が豊富なDNA領域への相互作用を媒介する機能ドメインであり遺伝学的にMECP2の機能に重要な役割を果たしていることが示されている<ref name=Baker2013><pubmed>23452848</pubmed></ref> (Baker SA et al., Cell 152(5), 984-996, 2013)。
 メチル化DNA結合ドメイン(MBD)、転写抑制ドメイン(TRD)、NCOR-SMRT interaction domain (NID)ドメイン、3つのAT-hookドメインなどの機能ドメインを有している<ref name=Lyst2015><pubmed>25732612</pubmed></ref> (Lyst MJ & Bird A, Nat Rev Genet, 16(5), 261-75, 2015)(図2)。MeCP2はMBDを介して高度にメチル化されたヘテロクロマチン領域と相互作用する。転写抑制ドメインはMeCP2の転写抑制活性に重要なドメインであり、TRD内に位置するNIDを介してNCOR-SMRT転写抑制複合体と相互作用し標的遺伝子の転写を抑制する。AT-hookドメインはAT配列が豊富なDNA領域への相互作用を媒介する機能ドメインであり遺伝学的にMECP2の機能に重要な役割を果たしていることが示されている<ref name=Baker2013><pubmed>23452848</pubmed></ref> (Baker SA et al., Cell 152(5), 984-996, 2013)。


 MBDドメインによるメチル化DNAへの結合様式については結晶構造解析により原子レベルでの研究が報告されている。関連タンパク質MBD1のMBDとメチル化DNAとの複合体の溶液構造は、MBD内の疎水性残基のパッチによって特異的結合が媒介されることが示唆された<ref name=Ohki2001><pubmed>11371345</pubmed></ref> (Ohki I et al., Cell 105, 487-497, 2001)。しかしながら、その後の研究によりDNAと結合したMeCP2 MBDの共結晶構造から、結合特異性はDNAの主溝(Major Groove)のメチル化依存的な水和の認識によってもたらされることが示唆されている<ref name=Ho2008><pubmed>18313390</pubmed></ref> (Ho KL et al., Mol Cell 29, 525-531, 2008)。
 MBDドメインによるメチル化DNAへの結合様式については結晶構造解析により原子レベルでの研究が報告されている。関連タンパク質MBD1のMBDとメチル化DNAとの複合体の溶液構造は、MBD内の疎水性残基のパッチによって特異的結合が媒介されることが示唆された<ref name=Ohki2001><pubmed>11371345</pubmed></ref> (Ohki I et al., Cell 105, 487-497, 2001)。しかしながら、その後の研究によりDNAと結合したMeCP2 MBDの共結晶構造から、結合特異性はDNAの主溝(Major Groove)のメチル化依存的な水和の認識によってもたらされることが示唆されている<ref name=Ho2008><pubmed>18313390</pubmed></ref> (Ho KL et al., Mol Cell 29, 525-531, 2008)。
図2: MECP2の遺伝子構造およびレット症候群患者にみられる主なMECP2遺伝子の変異
オレンジがメチル化DNA結合ドメイン(MBD)、緑が転写抑制ドメイン(TRD)、紫がNCOR-SMRT interaction domain (NID)ドメイン、青がAT-hookドメインを示している。レット症候群患者にみられる代表的なナンセンス変異(赤文字)とミスセンス変異(青文字)。


== サブファミリー ==
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