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 En1遺伝子座にEn2をノックインしたマウスの解析によると、En1とEn2は機能的に冗長である<ref name=Hanks1995><pubmed>7624797</pubmed></ref>[12]。一方、En1遺伝子座にショウジョウバエのenをノックインしたマウスでは、四肢の表現型のみが見られる<ref name=Hanks1998><pubmed>9778510</pubmed></ref>[13]。このノックインマウスからさらに内在性En2を除去すると中脳と小脳の発生に異常が生ずる<ref name=Sgaier2007><pubmed>17537797</pubmed></ref>[14]。これは、En2のみを欠くマウスが小脳に小さな欠損を呈するものの生存可能かつ生殖可能であるのと対照的である<ref name=Joyner1991><pubmed>1672471</pubmed></ref>[15]。
 En1遺伝子座にEn2をノックインしたマウスの解析によると、En1とEn2は機能的に冗長である<ref name=Hanks1995><pubmed>7624797</pubmed></ref>[12]。一方、En1遺伝子座にショウジョウバエのenをノックインしたマウスでは、四肢の表現型のみが見られる<ref name=Hanks1998><pubmed>9778510</pubmed></ref>[13]。このノックインマウスからさらに内在性En2を除去すると中脳と小脳の発生に異常が生ずる<ref name=Sgaier2007><pubmed>17537797</pubmed></ref>[14]。これは、En2のみを欠くマウスが小脳に小さな欠損を呈するものの生存可能かつ生殖可能であるのと対照的である<ref name=Joyner1991><pubmed>1672471</pubmed></ref>[15]。


[[ファイル:Araki Engrailed Fig1.png|サムネイル|'''図1. Engrailedタンパク質の構造'''<br>ニワトリEn2をモデルとして示す。緑は高セリン領域を示す。薄紫のバーはホメオドメイン(HD)中のαヘリックスを示す<ref name=Kissinger1990><pubmed>1977522</pubmed></ref>[30]。4D9はEnに関する研究でしばしば用いられるモノクローナル抗体であり、本図ではそのエピトープが含まれる領域を示す<ref name=Patel1989><pubmed>2570637</pubmed></ref>[47]。ショウジョウバエEnではCATアッセイによりEH1とEH2の間の一部の領域(アミノ酸228〜282)が転写抑制活性を有することが示されているが<ref name=Han1993><pubmed>8334991</pubmed></ref>[48]、この領域は脊椎動物のEnとの相同性は見られない。(*) MeisはEnに直接結合するが、Enのどの部分に結合するかは不明である。]]
== 構造 ==
== 構造 ==
=== 遺伝子およびmRNA ===
=== 遺伝子およびmRNA ===
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=== 中脳および後脳の初期発生 ===
=== 中脳および後脳の初期発生 ===
 初期胚において、En1とEn2は、中脳後脳境界(MHB)オーガナイザーの維持や、中脳間脳境界(DMB)の確立と維持を通じて、発生中の脳の領域化に寄与する<ref name=Joyner1991><pubmed>1672471</pubmed></ref>[15]<ref name=Araki1999><pubmed>10529429</pubmed></ref>[22]<ref name=Wurst1994><pubmed>7925010</pubmed></ref>[89]<ref name=Joyner1996><pubmed>8741855</pubmed></ref>[90]<ref name=Matsunaga2000><pubmed>10804178</pubmed></ref>[91]<ref name=Scholpp2003><pubmed>12917294</pubmed></ref>[92]。脳の領域化においてEnは専ら転写因子として機能し、細胞間シグナル分子としての役割は小さい、とする報告がある一方<ref name=Lesaffre2007><pubmed>17229313</pubmed></ref>[93]、DMBの確立にはEnが分泌されることが必要であることも示されている<ref name=Rampon2015><pubmed>25926358</pubmed></ref>[26]。また、DMBとMHBの確立にはPbxとの協調も必要である<ref name=Erickson2007><pubmed>16959235</pubmed></ref>[25]。前述の通り、En1とEn2は機能的に冗長ではあるが<ref name=Hanks1998><pubmed>9778510</pubmed></ref>[12]、En1は小脳と上丘の発生にE9より前のみ必要であり<ref name=Sgaier2007><pubmed>17537797</pubmed></ref>[14]、En1の欠失によりE9.5までにMHB近傍で細胞死が増加する<ref name=Chi2003><pubmed> 12736208</pubmed></ref>(Chi et al., 2003)。一方で、En1は下丘の、En2は小脳の発生において、より長期にわたり機能が要求される<ref name=Sgaier2007><pubmed>17537797</pubmed></ref>[14]。さらに、脳の領域化後においても、Enは中脳後脳領域内での勾配的または局所的な発現を通じて、領域内のパターン形成に寄与する。この機能は、神経回路形成、特定のニューロンの発生、および中脳後脳内における微細構造の形成に関与する<ref name=Logan1996><pubmed>8805331</pubmed></ref>[50]<ref name=Itasaki1991><pubmed>1811932</pubmed></ref>[59]<ref name=Millen1995><pubmed>8575294</pubmed></ref>[81]<ref name=Omi2014><pubmed>24803658</pubmed></ref>[83]。
 初期胚において、En1とEn2は、中脳後脳境界(MHB)オーガナイザーの維持や、中脳間脳境界(DMB)の確立と維持を通じて、発生中の脳の領域化に寄与する<ref name=Joyner1991><pubmed>1672471</pubmed></ref>[15]<ref name=Araki1999><pubmed>10529429</pubmed></ref>[22]<ref name=Wurst1994><pubmed>7925010</pubmed></ref>[89]<ref name=Joyner1996><pubmed>8741855</pubmed></ref>[90]<ref name=Matsunaga2000><pubmed>10804178</pubmed></ref>[91]<ref name=Scholpp2003><pubmed>12917294</pubmed></ref>[92]。脳の領域化においてEnは専ら転写因子として機能し、細胞間シグナル分子としての役割は小さい、とする報告がある一方<ref name=Lesaffre2007><pubmed>17229313</pubmed></ref>[93]、DMBの確立にはEnが分泌されることが必要であることも示されている<ref name=Rampon2015><pubmed>25926358</pubmed></ref>[26]。また、DMBとMHBの確立にはPbxとの協調も必要である<ref name=Erickson2007><pubmed>16959235</pubmed></ref>[25]。前述の通り、En1とEn2は機能的に冗長ではあるが<ref name=Hanks1998><pubmed>9778510</pubmed></ref>[12]、En1は小脳と上丘の発生にE9より前のみ必要であり<ref name=Sgaier2007><pubmed>17537797</pubmed></ref>[14]、En1の欠失によりE9.5までにMHB近傍で細胞死が増加する<ref name=Chi2003><pubmed>12736208</pubmed></ref>(Chi et al., 2003)。一方で、En1は下丘の、En2は小脳の発生において、より長期にわたり機能が要求される<ref name=Sgaier2007><pubmed>17537797</pubmed></ref>[14]。さらに、脳の領域化後においても、Enは中脳後脳領域内での勾配的または局所的な発現を通じて、領域内のパターン形成に寄与する。この機能は、神経回路形成、特定のニューロンの発生、および中脳後脳内における微細構造の形成に関与する<ref name=Logan1996><pubmed>8805331</pubmed></ref>[50]<ref name=Itasaki1991><pubmed>1811932</pubmed></ref>[59]<ref name=Millen1995><pubmed>8575294</pubmed></ref>[81]<ref name=Omi2014><pubmed>24803658</pubmed></ref>[83]。


=== 神経回路形成 ===
=== 神経回路形成 ===