「グレリン」の版間の差分

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== 疾患との関わり ==
== 疾患との関わり ==
 神経性食欲不振症(anorexia nervosa, AN)は、やせ、異常な食行動、体型認識のゆがみ、無月経などを特徴とする疾患である。AN患者ではやせの重症度と血中グレリン濃度が相関し、症状の改善に伴いグレリン濃度も正常化することから、グレリンとANの病態との深い関連が示唆される
 グレリンは[[食欲]]亢進作用を持つため、食欲不振を伴う疾患(神経性食欲不振症、慢性疾患、高齢者の食欲低下、抗がん剤治療に伴う食欲不振など)の治療への応用が期待されている
<ref name=Ariyasu2001><pubmed>11600536</pubmed></ref>
<ref name=Tschop2000><pubmed>11057670</pubmed></ref><ref name=Nakazato2001><pubmed>11196643</pubmed></ref>(47,48)。
<ref name=Blom2005><pubmed>15699223</pubmed></ref>
=== 神経性食欲不振症 ===
<ref name=Otto2001><pubmed>11720888</pubmed></ref>(75–77)。
 [[神経性食欲不振症]]はやせ、異常な[[食行動]]、体型認識のゆがみ、無月経などを特徴とする疾患である。患者ではやせの重症度と血中グレリン濃度が相関し、症状の改善に伴いグレリン濃度も正常化することから、グレリンと神経性食欲不振症の病態との深い関連が示唆される<ref name=Ariyasu2001><pubmed>11600536</pubmed></ref><ref name=Blom2005><pubmed>15699223</pubmed></ref><ref name=Otto2001><pubmed>11720888</pubmed></ref>(75–77)。また、高グレリン濃度が成長ホルモンや[[ACTH]]、[[プロラクチン]]、[[コルチゾール]]の上昇を介して[[無月経]]や行動変化を引き起こしている可能性もある。しかし、臨床試験では十分な効果が得られず、逆に摂食量が減少する例も報告され、治療の困難さを示している。
また、高グレリン濃度が成長ホルモンやACTH、プロラクチン、コルチゾールの上昇を介して無月経や行動変化を引き起こしている可能性もある。一方、グレリンは食欲亢進作用を持つため、食欲不振を伴う疾患(神経性食欲不振症、慢性疾患、高齢者の食欲低下、抗がん剤治療に伴う食欲不振など)の治療への応用が期待されている
 
<ref name=Tschop2000><pubmed>11057670</pubmed></ref>
=== がん悪液質 ===
<ref name=Nakazato2001><pubmed>11196643</pubmed></ref>(47,48)
 [[悪液質]]は[[がん]]、[[後天性免疫不全症候群]]([[acquired immunodeficiency syndrome]], [[AIDS]])、[[慢性心不全]]、[[慢性閉塞性肺疾患]]([[chronic obstructive pulmonary disease]], [[COPD]])などに伴い発症し、特にがん患者の約90%が悪液質を呈する。従来、有効な治療薬がなかったが、グレリン受容体GHS-R1aの選択的[[アゴニスト]]として[[アナモレリン]]が開発され、経口投与可能な治療薬として2021年に日本で『[[エドルミズ]]』として承認された<ref name=Garcia2013><pubmed>22699302</pubmed></ref>(78)。
しかし、神経性食欲不振症に対する臨床試験では十分な効果が得られず、逆に摂食量が減少する例も報告され、治療の困難さを示している。。一方で、がん悪液質への応用研究は進展した。がん悪液質はがん、後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome , AIDS)、慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease, COPD)などに伴い発症し、特にがん患者の約90%が悪液質を呈する。従来、有効な治療薬がなかったが、GHSとしてアナモレリンが開発され、経口投与可能な治療薬として2021年に日本で『エドルミズ』として承認された
<ref name=Garcia2013><pubmed>22699302</pubmed></ref>(78)。
グレリンの発見から22年を経て、がん悪液質の治療薬として実用化に至ったことは重要な進展であり、今後、他疾患への応用にも期待が寄せられている。
グレリンの発見から22年を経て、がん悪液質の治療薬として実用化に至ったことは重要な進展であり、今後、他疾患への応用にも期待が寄せられている。


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