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=== 共通の作用機序 === | === 共通の作用機序 === | ||
Dopamine神経系は、[[中脳辺縁系]]、[[中脳皮質系]]、[[黒質線条体系]]、[[下垂体漏斗系]]の4つの回路がある。Dopamine受容体はD<sub>1</sub>からD<sub>5</sub>まで5種類のsubtypeが存在し、脳内分布も異なる。また存在する場所によっては、[[シナプス前部位受容体]]([[自己受容体]])や[[シナプス後部位受容体]]に分けられる。幻覚や妄想などの精神病症状は、中脳辺縁系においてdopamine神経の過活動が生じて[[神経終末]]からのdopamine放出が増加し、シナプス後部のD<sub>2</sub>受容体が過剰に刺激されて生じると推定されている。現在使用可能なすべての抗精神病薬は、程度の差はあるがシナプス後部位D<sub>2</sub>受容体に対して遮断作用を有し、中脳辺縁系のdopamineの過剰な伝達を阻害して精神病症状を緩和すると推定されている<ref name="ref2"><pubmed> 15289815 </pubmed></ref>。 | |||
前述したように''in vitro''では、抗精神病薬の臨床用量とD<sub>2</sub>受容体阻害能は正の相関を示すが、D<sub>2</sub>受容体阻害作用が強ければ強いほど抗精神病効果が高まるわけではない。抗精神病薬の用量を上げてD<sub>2</sub>受容体の阻害がある一定のレベルを超えると、臨床効果は頭打ちとなり、EPSや過鎮静などの副作用の発現頻度が増加する。 | |||
抗精神病薬がヒト脳内のD<sub>2</sub>受容体とどのような結合状態にあるかに関して、1990年代後半から[[Positron Emission Tomography]] (PET)や[[Single Photon Emission]] Computed Tomography (SPECT)を用いた脳画像研究が盛んに行われ、患者の脳内 (''in vivo'')での挙動が視覚的に把握できるようになり、新しい知見が得られた。すなわち、抗精神病薬投与による抗精神病効果の出現には、65~70% 以上の[[線条体]]でのD<sub>2</sub>受容体の占拠率が必要であるが、80%以上占拠するとEPSの頻度が有意に増加する。したがって、治療効果を最大にしてEPSを最小限にするための至適な線条体D<sub>2</sub> 受容体の占拠率は、65~80%であることが判明した。 | |||
しかし、多数のPETやSPECT研究結果を分析したStoneら <ref><pubmed> 18303092 </pubmed></ref>の[[メタ解析]]では、線条体のD<sub>2</sub>受容体阻害は治療効果よりもEPSの発現に関与し、抗精神病効果に関係するのは[[側頭葉皮質]]のD<sub>2</sub>受容体であると主張している。しかし、側頭葉皮質以外のD<sub>2</sub>受容体も抗精神病効果に関与する可能性は十分あり、今後真の標的部位を探求する脳画像研究が必要である。 | |||
=== 第2世代抗精神病薬の薬理学的特徴 === | === 第2世代抗精神病薬の薬理学的特徴 === | ||
ほとんどのSGAは、有効治療用量内ではEPSや高prolactin血症の発現頻度が少ない。このSGAのメリットは、薬理学的にFGAとはいくつか異なった作用機序に由来する。ただし、D<sub>2</sub>受容体阻害作用を除いて、すべてのSGAに共通する薬理学的作用機序はいまだ明らかでない。 Meltzerら<ref><pubmed> 2571717 </pubmed></ref>は1989年に、SGAの「非定型性 (atypicality)」すなわちEPSを惹起しない用量範囲内で抗精神病効果を示すという特性に対して最も重要なのは、D<sub>2</sub>受容体遮断作用に比べて5-HT<sub>2A</sub>受容体遮断作用が相対的に強いことであると主張し、「serotonin- | ほとんどのSGAは、有効治療用量内ではEPSや高prolactin血症の発現頻度が少ない。このSGAのメリットは、薬理学的にFGAとはいくつか異なった作用機序に由来する。ただし、D<sub>2</sub>受容体阻害作用を除いて、すべてのSGAに共通する薬理学的作用機序はいまだ明らかでない。 Meltzerら<ref><pubmed> 2571717 </pubmed></ref>は1989年に、SGAの「非定型性 (atypicality)」すなわちEPSを惹起しない用量範囲内で抗精神病効果を示すという特性に対して最も重要なのは、D<sub>2</sub>受容体遮断作用に比べて5-HT<sub>2A</sub>受容体遮断作用が相対的に強いことであると主張し、「serotonin-dopamine仮説」を提唱した。[[縫線核]]を起始核とする[[serotonin神経]]は、[[中脳黒質]]から線条体に投射するdopamine神経に対して抑制的に作用しており、dopamine神経上の5-HT<sub>2A</sub>受容体を遮断することで、dopamine神経の抑制が解除(脱抑制)されてdopamineの放出を促進し、抗精神病薬によるD<sub>2</sub>受容体遮断を一部緩和してEPSを軽減すると考えられている。 | ||
またD<sub>2</sub>受容体遮断作用に5-HT<sub>2A</sub>受容体遮断作用が加わると、前頭前野や[[海馬]]でdopamineの放出が亢進して、陰性症状や認知機能障害に対して効果を発揮すると推定されている。 | |||
次に多くのSGAは、FGAよりもD<sub>2</sub>受容体遮断作用が弱いという特徴がある。抗精神病薬のD<sub>2</sub>受容体に対する親和性の強さは、内因性のdopamineと比較して強い場合には固い結合 (tight binding)、弱い場合には緩い結合 (loose binding)と呼ばれる。また抗精神病薬とD<sub>2</sub>受容体との結合-解離の時間経過に関して、PETやSPECTによる研究および血漿中prolactin値の変動などにより、1日1回投与でも24時間以上D<sub>2</sub>受容体の阻害が持続する抗精神病薬と、24時間以内にD<sub>2</sub>受容体の占拠率が速やかに低下するか、D<sub>2</sub>受容体から速やかに解離する薬物に分類される。 | |||
KapurとSeemanら <ref><pubmed> 11229973 </pubmed></ref>は、抗精神病薬がいかに速くD<sub>2</sub>受容体に結合するかよりも、D<sub>2</sub>受容体からいかに速く解離するか(k<sub>off</sub>で示す)が、SGAの“非定型性”に重要であるとする「急速解離 (fast dissociation)仮説」を提唱した。すなわちすべての抗精神病薬は、D<sub>2</sub>受容体からの解離の速度にかかわらず、その占拠率に応じて持続性の dopamine伝達を抑制する。しかし、D<sub>2</sub>受容体から素早く解離できる薬剤は、ストレスなどによるdopamineの一過性の過剰放出に反応して速やかに置換することで、dopamine伝達をより生理的に近い状態に保持できると考えた。Loose bindingは、内因性のdopamineよりD<sub>2</sub>受容体に対する親和性が弱いclozapine、quetiapine、olanzapineでEPSが少ない理由の一つとなり、fast dissociationはclozapine、quetiapine、perospironeによるEPSや高prolactin血症の発現頻度が少ない機序を説明可能である。しかしrisperidoneは、内因性のdopamineより強く結合し、1日1回投与でも24時間以上D<sub>2</sub>受容体の阻害が持続する抗精神病薬であり、彼らの理論に当てはまらない。同様に、SGAのblonanserinやolanzapineは遅いk<sub>off</sub>を示す。したがって「serotonin-dopamine仮説」や「急速解離仮説」は、多くのSGAの作用機序を説明できるのは事実であるが、すべてのSGAに共通した機序ではない点に留意する必要がある <ref name="ref2"><pubmed> 15289815 </pubmed></ref>。 | |||
SGAの中には5-HT<sub>2C</sub>、[[5-HT<sub>6</sub>]]、[[5-HT<sub>7</sub>]]受容体遮断作用や[[5-HT<sub>1A</sub>]]受容体部分作動作用を有する薬剤がある。5-HT<sub>1A</sub>受容体は、縫線核ではシナプス前の[[細胞体]]に自己受容体として存在し、5-HT ニューロンの発火率を抑制する。また辺縁系や大脳皮質ではシナプス後に存在し、発火率を抑制している。Clozapine、perospirone、quetiapineおよびziprasidoneは、5-HT<sub>1A</sub>受容体部分作動作用を有しており、D<sub>2</sub>と5-HT<sub>2A</sub>受容体間の相互作用と5-HT<sub>1A</sub>受容体の機能的活性化を介して、前頭葉皮質のdopamine遊離を促進することで、陰性症状や認知機能障害、不安・抑うつ症状に対する効果が期待できる可能性がある。 | |||
=== Dopamine部分作動薬の作用機序 === | === Dopamine部分作動薬の作用機序 === | ||
Aripiprazoleは、D<sub>2</sub> 受容体の部分作動薬でありD<sub>2</sub> | Aripiprazoleは、D<sub>2</sub> 受容体の部分作動薬でありD<sub>2</sub> に高い親和性を示すが、その固有活性は内因性のdopamineよりも低い。この特性によりシナプス間隙のdopamine量に応じて、[[遮断薬]](antagonist)あるいは[[作動薬]](agonist)として作用が変化する。例えばdopamineが過剰な状態では、シナプス前のdopamine自己受容体に作動薬として働き、dopamineの合成と放出を抑制する。またシナプス後D<sub>2</sub>受容体には遮断薬として働いて、抗精神病効果を発揮すると推定されている。一方、dopamine伝達が低下した状態では、aripiprazoleは機能的に本来の作動薬として作用し、dopamine機能を調節することで、D<sub>2</sub>受容体の完全遮断薬であるFGAがもたらすようなdopamine神経伝達の低下状態が持続することを防ぐことが可能となる。なお、aripiprazoleは5-HT<sub>1A</sub>受容体部分作動作用も有しているが、臨床効果にどれほど寄与するかは不明である。 | ||
== | == 有効性 == | ||
=== 陽性症状と陰性症状 === | === 陽性症状と陰性症状 === | ||
SGAとFGAの有効性を比較した150本の無作為化二重盲検比較試験のメタ解析 <ref name="ref3"><pubmed> 19058842 </pubmed></ref>では、4種類のSGA (amisulpiride、clozapine、olanzapine、risperidone) | SGAとFGAの有効性を比較した150本の無作為化二重盲検比較試験のメタ解析 <ref name="ref3"><pubmed> 19058842 </pubmed></ref>では、4種類のSGA (amisulpiride、clozapine、olanzapine、risperidone) が、[[陽性症状]]に対してFGAよりも有意に高いeffect size (-0.13~-0.36)を示したが、他のSGA (aripiprazole、quetiapine、sertindole、ziprasidone、zotepine) は、FGAと有意差がみられなかった。陰性症状に対しても、上記の4種類のSGAが、FGAよりも有意に高いeffect size (-0.13~-0.32)を示したが、他のSGAは、FGAと有意差を認めなかった。ただし、一次性の陰性症状に対する有効性は、低用量のamisulpirideを除いて明らかではなく、SGAの一部は、抑うつ症状に対する改善効果や低いEPS発現率を介して、二次性の陰性症状に効果を発揮している可能性がある<ref name="ref1" />。 | ||
抗精神病薬の短期間の有効性 (efficacy)を検証する臨床試験は、厳密に統制された条件下で実施するため、その結果が日常臨床にすぐに還元できるとは限らない。そこで、対象患者や併用薬などの制限を緩和し、実際の臨床現場の実情を反映した総合的な治療効果(有用性:effectiveness)を示す評価指標を用いたより長期のアウトカム(effectiveness)試験が、デザインされ実施されてきた。その代表的な試験は、米国政府主導で実施された[[Clinical Antipsychotic Trials of Intervention Effectiveness]] (CATIE)である <ref><pubmed> 16172203 </pubmed></ref>。CATIEは1,493名の慢性期統合失調症患者を対象とした3相から成る18か月間の多施設二重盲検比較試験で、主要評価項目は「あらゆる理由による治療中断」である。第I相では、SGA4剤 (olanzapine、 quetiapine、 risperidone、ziprasidone)とFGAのperphenazineが比較され、olanzapineが最も低い治療中断率(64%)を示したが、その他のSGAは陽性症状や陰性症状に対してperphenazineと有意な違いを示さなかった。 | |||
498名の初回エピソード統合失調症患者を対象とした[[European First-Episode Schizophrenia Trial]] (EUFEST)は、1年間の多施設オープン無作為化試験であり、amisulpride、olanzapine、quetiapineおよびziprasidoneのeffectivenessが、低用量のhaloperidolと比較された <ref><pubmed> 18374841 </pubmed></ref>。この試験の主要評価項目も「あらゆる理由による治療中断」であった。治療中断率はamisulpride 40%、olanzapine 33%、quetiapine 53%、ziprasidone 45%、 haloperidol 72%であり、SGAはhaloperidolより有意に治療中断率が低かった。しかし、陽性症状や陰性症状に関しては、薬剤群間で有意な差はみられなかった。したがって、CATIE とEUFEST 試験の結果からは、SGAがFGAより陽性症状や陰性症状に関して明らかに優っているわけではなく、薬剤間の違いも大きくないことが判明した。 | |||
=== 認知機能障害に対する効果 === | === 認知機能障害に対する効果 === | ||
統合失調症の認知機能障害は、患者の社会的・職業的機能に影響するため疾患の中核的障害と考えられ、重要な治療標的となっている。現在までの知見で、SGAはFGAより認知機能改善効果が若干大きい可能性がある。例えばWoodwardら <ref><pubmed> 15784157 </pubmed></ref>は、SGAとFGAを比較した14本の無作為化比較試験をメタ解析し、SGA4剤 (clozapine、olanzapine、risperidone、quetiapine) | 統合失調症の認知機能障害は、患者の社会的・職業的機能に影響するため疾患の中核的障害と考えられ、重要な治療標的となっている。現在までの知見で、SGAはFGAより認知機能改善効果が若干大きい可能性がある。例えばWoodwardら <ref><pubmed> 15784157 </pubmed></ref>は、SGAとFGAを比較した14本の無作為化比較試験をメタ解析し、SGA4剤 (clozapine、olanzapine、risperidone、quetiapine)の[[global cognitive index]]のeffect sizeは0.24で、FGAより改善効果が若干優れ、項目別では学習と処理速度が有意であった。また認知機能改善プロフィールは薬剤ごとに異なる可能性を示唆した。 | ||
=== 抑うつ症状に対する効果 === | === 抑うつ症状に対する効果 === | ||
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Leuchtら <ref name="ref3" />は、FGAとSGAを比較した14本の長期投与試験についてメタ解析を実施し再発率を検討した。その結果、olanzapine、risperidoneおよびsertindoleは、FGAよりも有意に再発予防効果が優れていた。この理由として、有効性が高いためかadherenceが向上したためか、あるいはその両者によるかは不明である。 | Leuchtら <ref name="ref3" />は、FGAとSGAを比較した14本の長期投与試験についてメタ解析を実施し再発率を検討した。その結果、olanzapine、risperidoneおよびsertindoleは、FGAよりも有意に再発予防効果が優れていた。この理由として、有効性が高いためかadherenceが向上したためか、あるいはその両者によるかは不明である。 | ||
== | == 副作用 == | ||
抗精神病薬は中枢性、末梢性に多様な副作用を示すが、その出現頻度や程度は薬物ごとに異なり用量も影響する。副作用はD<sub>2</sub> | 抗精神病薬は中枢性、末梢性に多様な副作用を示すが、その出現頻度や程度は薬物ごとに異なり用量も影響する。副作用はD<sub>2</sub> 受容体、[[ムスカリン性acetylcholine (Ach)受容体]]、[[adrenaline (α<sub>1</sub>)受容体]]、[[histamine (H<sub>1</sub>)受容体]]が、抗精神病薬で遮断された結果生じるものが多い <ref name="ref1" />。多くの副作用は投与早期に出現し、長期投与で耐性を生じやすいが、持続的使用の後出現するものもある。軽微な副作用は、抗精神病薬の減量や薬物の変更、副作用止めの薬物の追加などで対応可能な場合が多い。しかし、頻度は低いが[[悪性症候群]]など重篤な副作用もある。一般的にSGAは、FGAと比較して、EPS、過鎮静、抗コリン性副作用の発現頻度は低いが、体重増加や[[高血糖]]など代謝性の副作用に注意が必要である。 | ||
=== 錐体外路症状 === | === 錐体外路症状 === | ||
抗精神病薬が黒質線条体系のD<sub>2</sub>受容体を遮断した結果、脳内のdopamineとAchのバランスが崩れて出現する。Haloperidolなど高力価薬で多く、低力価薬やSGAでは少ない。投与開始後早期に現れる急性のEPSと、長期投与で出現する遅発性のEPSがある。 | 抗精神病薬が黒質線条体系のD<sub>2</sub>受容体を遮断した結果、脳内のdopamineとAchのバランスが崩れて出現する。Haloperidolなど高力価薬で多く、低力価薬やSGAでは少ない。投与開始後早期に現れる急性のEPSと、長期投与で出現する遅発性のEPSがある。 急性のEPSとして、[[急性ジストニア]] (dystonia)、parkinsonism、アカシジア (akathisia)がある。急性dystoniaは、眼球上転、舌・頚部・体幹のねじれや突っ張りが特徴的である。Parkinsonismは、[[筋固縮]]、[[振戦]]、[[無動]] (akinesia)を3徴候とし、[[仮面様顔貌]]、[[小刻み歩行]]や流涎もみられる。Akathisia(静座不能症)は、「じっとしていられない、足がムズムズする」などの異常な感覚を自覚し、不眠、不安、焦燥感を伴うことが多く、精神症状との鑑別が重要である。 遅発性のEPSは、D<sub>2</sub>受容体の過感受性によるとされるTDが代表的である。口唇や舌をモグモグ動かすような口周囲の[[不随意運動]]がほとんどである。抗コリン薬はTDを悪化させるので注意が必要である。 | ||
=== 悪性症候群 === | === 悪性症候群 === | ||
抗精神病薬の投与開始や増量時、あるいは抗Parkinson薬や抗不安薬の減量・中止時に、脱水や身体的衰弱などが重なった場合に生じやすい。症状は高熱、EPS(筋固縮、振戦、無動など)、[[自律神経症状]]([[発汗]]、[[頻脈]]、[[血圧]]変動など)、意識障害などが出現し、[[CPK]]、血中・尿中[[myoglobin]]の上昇などがみられ、重篤な場合は[[腎不全]]を合併し、死に至ることもある。[[横紋筋融解症]]を合併する時もある。 | |||
=== 自律神経症状 === | === 自律神経症状 === | ||
抗コリン性の副作用として頻度の高い症状は、[[口渇]]、[[便秘]]、[[麻痺性イレウス]]、排尿困難([[尿閉]])、かすみ目、[[鼻閉]]、[[頻脈]]、血圧上昇、[[眼圧]]上昇([[緑内障]]の悪化) であり、低力価薬や併用した抗コリン薬で生じやすい。いずれも不快な症状でadherence低下につながりやすい。 抗α<sub>1</sub>性副作用としては、[[低血圧]](特に[[起立性低血圧]])とそれに伴う[[ふらつき]]、[[めまい]]、[[立ちくらみ]]、[[倦怠感]]がある。稀に持続性勃起症が生じる。また心・循環器系副作用として、[[心電図]]異常(特に[[QTc延長]])と致死性[[不整脈]] (torsade de pointes)が生じる可能性がある。 | |||
=== 代謝内分泌系症状 === | === 代謝内分泌系症状 === | ||
代謝系副作用として、食欲亢進、体重増加、高血糖(耐糖能異常)、[[高脂血症]]、[[II型糖尿病]]が問題となる。食欲増加には、H<sub>1</sub>受容体や5-HT<sub>2C</sub>受容体の遮断作用の関与が推定されている。清涼飲料水の多飲や過食後、著しい高血糖から[[糖尿病性ketoacidosis]]や[[糖尿病性昏睡]]など重篤な副作用が生じることがある。SGAの中では、clozapineやolanzapineが代謝系副作用の頻度が高い。 内分泌系副作用としては高prolactin血症が代表的であり、それに起因する乳汁分泌、無月経、女性化乳房、性欲減退、勃起障害や射精障害などの性機能障害がある。下垂体のD<sub>2</sub>受容体の遮断作用に基づくとされ、risperidoneやpaliperidoneを除くSGAは、通常の用量下では高prolactin血症を来たしにくい。 抗精神病薬を長期服用している患者には、病的な多飲水を原因とする[[低Na血症]]を認める場合がある。[[抗利尿ホルモン]]不適合分泌症候群が生じていることもあり、さらに低Na血症が進行すると、水中毒に至り意識障害やけいれんに至る。 | |||
=== その他の副作用 === | === その他の副作用 === | ||
抗精神病薬の投与初期や大量投与では、抗α<sub>1</sub>作用や抗H<sub>1</sub> | 抗精神病薬の投与初期や大量投与では、抗α<sub>1</sub>作用や抗H<sub>1</sub>作用により、日中の眠気や過鎮静が生じることがある。また薬剤性肝障害や薬疹などのアレルギー反応はphenothiazine系薬物で多い。その他、けいれん、顆粒球減少症、色素沈着、[[光線過敏症]]などの副作用がみられることがある。 | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |