「毛様体神経栄養因子」の版間の差分

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== '''栄養因子としての活性''' ==
== '''栄養因子としての活性'''<ref><pubmed> 22182585 </pubmed></ref> ==


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 ニューロスフェアの培養実験によって、CNTFやLIFが神経幹細胞の維持と増殖の促進をおこなう活性があることが示されている。このうち、CNTFのノックアウトマウスでは、海馬(hippocampus)の歯状回(dentate gyrus)や大脳側脳室といった生後脳で神経新生がおきる場所において神経幹細胞や中間増殖細胞の数の減少が見られる。一方LIFのノックアウトでは生後脳の神経新生に影響は認められない。上にも述べたようにCNTFはCNTFRα−LIFRβ−gp130という受容体複合体を通してシグナルを伝達するが、LIFもLIFRβ−gp130という共通の受容体を用いるため、培養実験ではCNTFとLIFが同様の活性を持つものの、実際にin vivoで働いているのはCNTFであると思われる。一方CNTFノックアウトマウスの脳の発生は正常であるため、CNTFとLIF両方が胎生期の神経幹細胞の維持と増殖に関わっていると思われる。また、STAT3のコンディショナルノックアウトマウスで歯状回における神経幹細胞/中間増殖細胞の数が減少することから、STAT遺伝子の中でもSTAT3がCNTFシグナルのエフェクターとして中心的な役割を果たしていると考えられる。
 ニューロスフェアの培養実験によって、CNTFやLIFが神経幹細胞の維持と増殖の促進をおこなう活性があることが示されている。このうち、CNTFのノックアウトマウスでは、海馬(hippocampus)の歯状回(dentate gyrus)や大脳側脳室といった生後脳で神経新生がおきる場所において神経幹細胞や中間増殖細胞の数の減少が見られる<ref><pubmed> 19023034 </pubmed></ref>。一方LIFのノックアウトでは生後脳の神経新生に影響は認められない。上にも述べたようにCNTFはCNTFRα−LIFRβ−gp130という受容体複合体を通してシグナルを伝達するが、LIFもLIFRβ−gp130という共通の受容体を用いるため、培養実験ではCNTFとLIFが同様の活性を持つものの、実際にin vivoで働いているのはCNTFであると思われる。一方CNTFノックアウトマウスの脳の発生は正常であるため、CNTFとLIF両方が胎生期の神経幹細胞の維持と増殖に関わっていると思われる。また、STAT3のコンディショナルノックアウトマウスで歯状回における神経幹細胞/中間増殖細胞の数が減少する<ref><pubmed> 19023034 </pubmed></ref>ことから、STAT遺伝子の中でもSTAT3がCNTFシグナルのエフェクターとして中心的な役割を果たしていると考えられる。
 黒質線条体(nigrostriatal)のドーパミン産生ニューロンが大脳側脳室の神経前駆細胞の増殖を制御しており、ドーパミンの欠乏や神経切断によって増殖が低下する。このことはパーキンソン病患者でも確認されており、ドーパミンと神経新生の関連が示唆されている。ドーパミンD2受容体の選択的アゴニストであるキンピロール(quinpirole)は側脳室や歯状回における細胞増殖を促進するが、この効果がCNTFのノックアウトマウスでは認められない。黒質(substantia nigra)ドーパミンニューロンの投射を失わせたマウスではキンピロールによる増殖の回復が見られるが、CNTFノックアウトマウスでは効果が無い。これらのことから、ドーパミンによるD2受容体の活性化がCNTFの産生を促進することで、間接的に神経幹細胞/中間増殖細胞の増殖を活性化しているのではないかと考えられている。
 黒質線条体(nigrostriatal)のドーパミン産生ニューロンが大脳側脳室の神経前駆細胞の増殖を制御しており、ドーパミンの欠乏や神経切断によって増殖が低下する。このことはパーキンソン病患者でも確認されており、ドーパミンと神経新生の関連が示唆されている。ドーパミンD2受容体の選択的アゴニストであるキンピロール(quinpirole)は側脳室や歯状回における細胞増殖を促進するが、この効果がCNTFのノックアウトマウスでは認められない。黒質(substantia nigra)ドーパミンニューロンの投射を失わせたマウスではキンピロールによる増殖の回復が見られるが、CNTFノックアウトマウスでは効果が無い。これらのことから、ドーパミンによるD2受容体の活性化がCNTFの産生を促進することで、間接的に神経幹細胞/中間増殖細胞の増殖を活性化しているのではないかと考えられている。


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