「成長円錐」の版間の差分

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=== 軸索ガイダンス因子  ===
=== 軸索ガイダンス因子  ===


軸索ガイダンス因子は発生過程の組織内に領域特異的に存在することで成長円錐に空間情報を提供し、成長円錐を正しい標的細胞へと誘導する分子として定義される。生体内における軸索ガイダンス因子は多種多様であるが、大きく4つの作用様式に分類される。細胞外基質や細胞膜に発現し接触を介して近距離に作用する接触因子と、分泌性で濃度勾配によって長距離に作用する拡散性因子、そしてそのそれぞれに対して誘引因子と反発因子が存在する。生体内ではこれら4種類のガイダンス因子が協調的に働くことで軸索を正しい標的へ導くと考えられる。成長円錐には個々の軸索ガイダンス因子に対する特異的な受容体ファミリーが存在しており、受容体の形質膜への発現は軸索ガイダンス因子に対する成長円錐の感受性を規定する。また、成長円錐には同一の軸索ガイダンス因子に対する反応性を場所や時期に応じて切り替える機構が備わっている。 以下に代表的な軸索ガイダンスについて概説する。  
軸索ガイダンス因子は発生過程の組織内に領域特異的に存在することで成長円錐に空間情報を提供し、成長円錐を正しい標的細胞へと誘導する分子として定義される。生体内における軸索ガイダンス因子は多種多様であるが、大きく4つの作用様式に分類される。細胞外基質や細胞膜に発現し接触を介して近距離に作用する接触因子と、分泌性で濃度勾配によって長距離に作用する拡散性因子、そしてそのそれぞれに対して誘引因子と反発因子が存在する。生体内ではこれら4種類のガイダンス因子が協調的に働くことで軸索を正しい標的へ導くと考えられている。成長円錐には個々の軸索ガイダンス因子に対する特異的な受容体ファミリーが存在しており、受容体の形質膜への発現は軸索ガイダンス因子に対する成長円錐の感受性を規定する。また、成長円錐には同一の軸索ガイダンス因子に対する反応性を場所や時期に応じて切り替える機構が備わっている。 以下に代表的な軸索ガイダンスについて概説する。  


==== ネトリン  ====
==== ネトリン  ====
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成長円錐の運動性は細胞骨格、接着分子とそのリサイクリングにより規定されるが、成長円錐の前進速度に空間的な非対称性が生じれば、成長円錐は全体として旋回運動を呈することになる。実際に、軸索ガイダンス因子が制御する成長円錐の旋回運動にもRhoファミリー低分子量Gタンパク質、ADF/cofilin、Ena/Vasp、APCなどの細胞骨格制御分子、CalpainやFAK、Srcチロシンキナーゼによる細胞接着の制御が関与することが明らかにされている。  
成長円錐の運動性は細胞骨格、接着分子とそのリサイクリングにより規定されるが、成長円錐の前進速度に空間的な非対称性が生じれば、成長円錐は全体として旋回運動を呈することになる。実際に、軸索ガイダンス因子が制御する成長円錐の旋回運動にもRhoファミリー低分子量Gタンパク質、ADF/cofilin、Ena/Vasp、APCなどの細胞骨格制御分子、CalpainやFAK、Srcチロシンキナーゼによる細胞接着の制御が関与することが明らかにされている。  


上述したとおり、成長円錐には軸索ガイダンス因子に対する応答性(反応の有無、誘引-反発の方向)を場所や時期により変化させる。また、成長円錐は生体内で様々な軸索ガイダンス因子のシグナルを受容しており、成長円錐の旋回方向は多様な細胞内シグナル伝達経路の複雑なクロストークの結果決定されると考えられている。そのため、軸索ガイダンス因子に対する応答性を規定するメカニズムの理解は、神経回路形成の分子機構を理解する上で極めて重要である。近年、成長円錐の旋回方向(誘引 or 反発)を決定する分子メカニズムの理解が急速に進んでおり、本項では、旋回方向を規定する因子について概説する。  
上述したとおり、成長円錐には軸索ガイダンス因子に対する応答性(反応の有無、誘引-反発の方向)を場所や時期により変化させる。また、成長円錐は生体内で様々な軸索ガイダンス因子のシグナルを受容しており、成長円錐の旋回方向は多様な細胞内シグナル伝達経路の複雑なクロストークの結果決定されると考えられている。近年、成長円錐の旋回方向(誘引 or 反発)を決定する分子メカニズムの理解が急速に進んでおり、本項では、旋回方向を規定する因子について概説する。  


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