「前補足運動野」の版間の差分

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= 機能  =
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 前補足運動野の機能については、かつて補足運動野の一部とされていた経緯から、新しい分類による補足運動野と対比して論じられることが多い。従来補足運動野の破壊症状として考えられていた症例には前補足運動野や帯状皮質運動野の損傷を伴うケースも含まれていると考えられ、これまでの内側領野損傷に伴う高次運動障害の症例報告については見直しが必要である。現在までの研究によって、前補足運動野は隣接する補足運動野よりも随意運動制御において高度な側面に関わっている事が示唆されている<ref><pubmed>8670662</pubmed></ref>。ここではそのうち代表的なものについて触れる。
 前補足運動野の機能については、かつて補足運動野の一部とされていた経緯から、新しい分類による補足運動野と対比して論じられることが多い。従来補足運動野の破壊症状として考えられていた症例には前補足運動野や帯状皮質運動野の損傷を伴うケースも含まれていると考えられ、これまでの内側領野損傷に伴う高次運動障害の症例報告については見直しが必要である。現在までの研究によって、前補足運動野は隣接する補足運動野よりも随意運動制御において高度な側面に関わっている事が示唆されている<ref><pubmed>8670662</pubmed></ref>。ここではそのうち代表的なものについて触れる。  


== 運動の準備<br>  ==
== 運動の準備<br>  ==
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== 手続き学習procedural learning<br>  ==
== 手続き学習procedural learning<br>  ==


 複数の要素的動作を複雑な順序で組み合わせて実行することは我々の日常生活の中で重要な位置を占める(例、書字、タイピング、演奏等)。多くの場合これらの複雑な連続動作は生得的に備わっているものではなく、繰り返し実行する事によって獲得したスキル、つまり[[手続き記憶]]の一種である。前補足運動野は手続き学習のうち、連続動作の新規学習に関わっていると考えられている。こうした見方を裏付ける根拠として連続動作の学習初期に前補足運動野の血流量が増大すること<ref><pubmed>8836248</pubmed></ref><ref><pubmed>9465007</pubmed></ref><ref><pubmed>10234047</pubmed></ref><ref><pubmed>15852385</pubmed></ref>、前補足運動野のニューロンは新しい運動シークエンスを与えられた時に活動が増強する一方、動物が動作の実行に習熟するに従って活動が減弱すること<ref name="Nakamura1998" />、および連続動作学習初期に前補足運動野へのムシモール注入によって動作の順序を間違え易くなる一方で既に習熟した動作の実行には影響を及ぼさないこと<ref><pubmed>10444698</pubmed></ref>等が挙げられる。これらの所見は[[補足運動野]]には当てはまらず、両領野の機能差が示唆される。<br>  
 日常生活において我々は多数の動作からなる複雑な動作を、個々の要素的動作を特に意識することも無く半ば無意識のうちに実行している(例、書字、タイピング等)。多くの場合これらの複雑な連続動作は生得的に備わっているものではなく、繰り返し実行する事によって獲得したスキル、つまり[[手続き記憶]]の一種である。前補足運動野は手続き学習のうち、連続動作の新規学習に関わっていると考えられている。こうした見方を裏付ける根拠として連続動作の学習初期に前補足運動野の血流量が増大すること<ref><pubmed>8836248</pubmed></ref><ref><pubmed>9465007</pubmed></ref><ref><pubmed>10234047</pubmed></ref><ref><pubmed>15852385</pubmed></ref>、前補足運動野のニューロンは新しい運動シークエンスを与えられた時に活動が増強する一方、動物が動作の実行に習熟するに従って活動が減弱すること<ref name="Nakamura1998" />、および連続動作学習初期に前補足運動野へのムシモール注入によって動作の順序を間違え易くなる一方で既に習熟した動作の実行には影響を及ぼさないこと<ref><pubmed>10444698</pubmed></ref>等が挙げられる。これらの所見は[[補足運動野]]には当てはまらず、両領野の機能差が示唆される。<br>  


== 動作の時間的順序のコントロール<br>  ==
== 動作の時間的順序のコントロール<br>  ==


 前補足運動野は補足運動野と同様に順序動作の実行にも関与していることがニューロン記録や障害実験の結果から示唆されている<ref><pubmed>11520914</pubmed></ref>。但し補足運動野が特定の要素動作から次の要素動作へのtransitionをコードするのに対して、前補足運動野は現在実行している要素動作が一連の動作の中の何番目かという順序に関する情報をコードする傾向がある。
 前補足運動野は補足運動野と同様に順序動作の実行にも関与していることがニューロン記録や障害実験の結果から示唆されている<ref><pubmed>11520914</pubmed></ref>。但し補足運動野が特定の要素動作から次の要素動作へのtransitionをコードするのに対して、前補足運動野は現在実行している要素動作が一連の動作の中の何番目かという順序に関する情報をコードする傾向がある。  


== その他  ==
== その他  ==
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