「オートファジー」の版間の差分

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*タンパク質の分解とオートファジーの収束<br>&nbsp; 以上の一連の反応により、形成されたオートファゴソームは、速やかにリソソームと融合し、オートファゴソームの内膜とともに隔離した細胞質成分が分解される。バフィロマイシンやクロロキンは、リソソームの機能阻害により、オートファジー依存的なタンパク質の分解を阻害する。オートファジーが生じると、主要な産物として、細胞内タンパク質由来のアミノ酸が供給される。細胞質中に十分量のアミノ酸が供給されると、mTORが活性化され、オートファジーは不活化する。このように、オートファジーはアミノ酸シグナルを介して、負のフィードバック制御を受けている。
*タンパク質の分解とオートファジーの収束<br>&nbsp; 以上の一連の反応により、形成されたオートファゴソームは、速やかにリソソームと融合し、オートファゴソームの内膜とともに隔離した細胞質成分が分解される。バフィロマイシンやクロロキンは、リソソームの機能阻害により、オートファジー依存的なタンパク質の分解を阻害する。オートファジーが生じると、主要な産物として、細胞内タンパク質由来のアミノ酸が供給される。細胞質中に十分量のアミノ酸が供給されると、mTORが活性化され、オートファジーは不活化する。このように、オートファジーはアミノ酸シグナルを介して、負のフィードバック制御を受けている。
 
<br><br><u>オートファジーの生理学的意義と病理学的意義</u><br>  
<br><u>オートファジーの生理学的意義と病理学的意義</u><br>  
 
#栄養飢餓におけるアミノ酸供給<ref name="ref1" /><br>&nbsp; ''Atg''遺伝子欠損マウス(''Atg3<sup>-/-</sup>、Atg5<sup>-/-</sup>、Atg7<sup>-/-</sup>、Atg9<sup>-/-</sup>、Atg16L1''<sup>''-/-''</sup>)は、生後まもなく死亡する。''Atg5''遺伝子欠損マウスを用いた解析では、組織、および血漿中のアミノ酸レベルが減少しており、出生直後の飢餓状態では、オートファジーによるアミノ酸供給が生存に必須であることが示唆されている。飢餓応答としての役割は、これまで調べられたモデル生物(酵母、線虫、ショウジョウバエ、マウス)において共通に報告されており、オートファジーの最も基本的な生理的役割と考えられる。<br>  
#栄養飢餓におけるアミノ酸供給<ref name="ref1" /><br>&nbsp; ''Atg''遺伝子欠損マウス(''Atg3<sup>-/-</sup>、Atg5<sup>-/-</sup>、Atg7<sup>-/-</sup>、Atg9<sup>-/-</sup>、Atg16L1''<sup>''-/-''</sup>)は、生後まもなく死亡する。''Atg5''遺伝子欠損マウスを用いた解析では、組織、および血漿中のアミノ酸レベルが減少しており、出生直後の飢餓状態では、オートファジーによるアミノ酸供給が生存に必須であることが示唆されている。飢餓応答としての役割は、これまで調べられたモデル生物(酵母、線虫、ショウジョウバエ、マウス)において共通に報告されており、オートファジーの最も基本的な生理的役割と考えられる。<br>  
#細胞内タンパク質の品質管理<ref name="ref1" /><ref><pubmed> 21087849 </pubmed></ref><br>&nbsp; 栄養が豊富な条件下においても、基底状態レベルのオートファジーが生じており、不要なタンパク質を分解している。実際、組織特異的オートファジー不全マウスを用いた解析では、ほとんどの組織でp62やユビキチン陽性の凝集体が観察される。特に、あまり細胞分裂しない神経細胞や肝細胞では、オートファジーを介したタンパク質分解の役割が大きく、神経特異的オートファジー不全マウスでは神経変性が生じ、肝特異的オートファジー不全マウスでは肝肥大や肝炎、腫瘍(良性)が観察されるようになる。興味深いことに、ヒト神経疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症など)の多くで、構造的に類似した凝集体が観察されている。そのため、ラパマイシン誘導体などのオートファジー活性化剤による凝集体蓄積の抑制、神経変性疾患の発症抑制に期待が集まっている。しかしながら、オートファジーの異常がこれらの疾患の直接の原因であるかどうか、直接的な証拠は得られていない。<br>  
#細胞内タンパク質の品質管理<ref name="ref1" /><ref><pubmed> 21087849 </pubmed></ref><br>&nbsp; 栄養が豊富な条件下においても、基底状態レベルのオートファジーが生じており、不要なタンパク質を分解している。実際、組織特異的オートファジー不全マウスを用いた解析では、ほとんどの組織でp62やユビキチン陽性の凝集体が観察される。特に、あまり細胞分裂しない神経細胞や肝細胞では、オートファジーを介したタンパク質分解の役割が大きく、神経特異的オートファジー不全マウスでは神経変性が生じ、肝特異的オートファジー不全マウスでは肝肥大や肝炎、腫瘍(良性)が観察されるようになる。興味深いことに、ヒト神経疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症など)の多くで、構造的に類似した凝集体が観察されている。そのため、ラパマイシン誘導体などのオートファジー活性化剤による凝集体蓄積の抑制、神経変性疾患の発症抑制に期待が集まっている。しかしながら、オートファジーの異常がこれらの疾患の直接の原因であるかどうか、直接的な証拠は得られていない。<br>  
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#クローン病とAtg16L1<ref name="ref11" /><br>&nbsp; 炎症性腸疾患クローン病に関連する遺伝子変異として、Atg16L1 T300AのSNPs(一塩基多型)が報告されている。遺伝子欠損マウスを用いた解析から、Atg16L1が腸管における炎症反応や腸管上皮細胞の成熟に重要な役割を果たしていることが明らかになっている。しかしながら、T300AがAtg16L1の機能にどのような影響を及ぼすのか、オートファジー不全がクローン病の病態形成の一因なのか、まだ不明な点が多い。
#クローン病とAtg16L1<ref name="ref11" /><br>&nbsp; 炎症性腸疾患クローン病に関連する遺伝子変異として、Atg16L1 T300AのSNPs(一塩基多型)が報告されている。遺伝子欠損マウスを用いた解析から、Atg16L1が腸管における炎症反応や腸管上皮細胞の成熟に重要な役割を果たしていることが明らかになっている。しかしながら、T300AがAtg16L1の機能にどのような影響を及ぼすのか、オートファジー不全がクローン病の病態形成の一因なのか、まだ不明な点が多い。


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