「受容野」の版間の差分

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825 バイト除去 、 2012年4月17日 (火)
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=== 複雑型細胞の受容野構造  ===
=== 複雑型細胞の受容野構造  ===


複雑型細胞も、単純型細胞と同様、サイン波の方位や空間周波数に選択性な応答を示す。しかし、単純型細胞の応答が位相に強く依存するのにたいし、複雑型細胞は方位や空間周波数が最適であれば、位相を変えても反応は変化しない。このような性質は複雑型細胞が単純型細胞から入力を受け取ることで出来上がると考えられている。この仕組みについては後述する。
 複雑型細胞も、単純型細胞と同様、サイン波の方位や空間周波数に選択性な応答を示す。しかし、単純型細胞の応答が位相に強く依存するのにたいし、複雑型細胞では、方位や空間周波数が最適であれば、位相を変えても反応は変化しない。これらの選択性は、同じ方位や、空間周波数選択性をもち、受容野位相だけが異なる単純型細胞からの入力が収斂することでできあがっていると考えられている。これを最も単純化したモデルが図4に示すエネルギーモデル(energy model)である。このモデルでは、ガボールフィルターの出力が半波整流されたもの(これは単純型細胞の出力を模したものである)が4つ収斂することで、複雑型細胞の受容野構造が形成される。4つのフィルターの位相は90ずつずれている。さらに、第一段階の細胞が、同じ時間受容野をもつようにモデルを拡張することで、複雑型細胞の運動方向選択性が十分説明される。この拡張したエネルギーモデルは運動エネルギーモデル(motion energy model)と呼ばれている <ref name="ref18"><pubmed> 3973764 </pubmed></ref>。


 複雑型細胞も単純型細胞と同様に、サイン波刺激にたいして、強い方位、空間周波数、運動方向の選択性をもっている。しかしながら、ON、OFF領域はオーバーラッップしておりその構造からこれらの選択性を予測することはできない。また単純型細胞と異なり位相に選択性は示さない。これらの選択性は、同じ方位や、空間周波数選択性をもち、受容野位相だけが異なる単純型細胞からの入力が収斂することでできあがっていると考えられている。これを最も単純化したモデルが図4に示すエネルギーモデル(energy model)で、このモデルでは90度位相の異なる2つの単純型細胞の出力が2乗されることで複雑型細胞の受容野構造をつくっている。2つの単純型細胞のON,OFF領域が、同じ時間受容野をもつときに、複雑型細胞の同じ特性の時間受容野をもつことになり、その運動方向選択性が説明される。時空間受容野も含めたエネルギーモデルは運動エネルギーモデル(motion energy model)と呼ばれている <ref name="ref18"><pubmed> 3973764 </pubmed></ref>。
 複雑型細胞の多くはまた、刺激の位置や明暗のコントラスに影響されることなく両眼視差を検出できることが知られている。この両眼視差検出器としての望ましい性質は、似た両眼視差に選択性をもつ単純型細胞からの出力が複雑型細胞で収斂することでできると考えられている。このような複雑型細胞のモデルは両眼視差エネルギーモデル(disparity energy model)と呼ばれている<ref name="ref19"><pubmed> 2396096 </pubmed></ref>。  
 
 複雑型細胞の多くはまた、刺激の位置や明暗のコントラスに影響されることのなく両眼視差を検出できることが知られている。この両眼視差検出器としての望ましい性質は、似た両眼視差にチューンした単純型細胞からの出力を集めることでできると考えられている。このような複雑型細胞のモデルは両眼視差エネルギーモデル(disparity energy model)と呼ばれている<ref name="ref19"><pubmed> 2396096 </pubmed></ref>。  


=== 非古典的受容野  ===
=== 非古典的受容野  ===
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 古典的受容野の周辺には、刺激が単独で呈示されるときには細胞活動に影響しないが、古典的受容野内部の刺激と同時に呈示されると、細胞に主に抑制性の影響を及ぼす空間範囲があり、これを非古典的受容野と呼んでいる<ref name="ref20"><pubmed> 3885829 </pubmed></ref><ref name="ref21"><pubmed> 10981611 </pubmed></ref>。<br>  
 古典的受容野の周辺には、刺激が単独で呈示されるときには細胞活動に影響しないが、古典的受容野内部の刺激と同時に呈示されると、細胞に主に抑制性の影響を及ぼす空間範囲があり、これを非古典的受容野と呼んでいる<ref name="ref20"><pubmed> 3885829 </pubmed></ref><ref name="ref21"><pubmed> 10981611 </pubmed></ref>。<br>  


 非古典的受容野は網膜の段階ですでに存在しており、視覚経路のほとんど全ての段階でみられるが、ここでは最も多くの研究がなされたV1野の非古典的受容野について述べる。V1野ではこの構造は周辺領域と呼ばれることも多いが、これは網膜細胞の周辺領域とは全く異なるので注意が必要である。この領域は古典的受容野の周囲に一様に広がるのではなく、ある程度の局在化がみられ、古典的受容野の最適方位の延長上に広がるもの、最適方位と直交する軸方向に広がるもののほか、斜め方向に位置するものもある。多くは抑制性の影響を及ばすが興奮性の影響も報告されている。また非古典的受容野の抑制には特徴選択性があり、古典的受容野の最適な方位、空間周波数にたいして最も抑制が強くなる。これらの構造は、古典的受容野に最適な縞模様の境界部分を検出するのに適しており、テクスチャー分析に役立っているものと考えられている。とくに、古典的受容野と周辺領域が同じ向きに伸びているものが報告されており、このような構造は異なるテクスチャーのエッジ部分の検出に好都合である。これ以外にも非古典的受容野は、ポップアップや図地分化と呼ばれる知覚現象の基盤として、線分の長さや折れ線、曲線の角度や極率、主観的輪郭などさまざまな特徴を検出するための初期機構としても注目されている。
 非古典的受容野は網膜の段階ですでに存在しており、視覚経路のほとんど全ての段階でみられるが、ここでは最も多くの研究がなされたV1野の非古典的受容野について述べる。V1野ではこの構造は周辺領域と呼ばれることも多いが、これは網膜細胞の周辺領域とは全く異なるので注意が必要である。この領域は古典的受容野の周囲に一様に広がるのではなく、ある程度の局在化がみられ、古典的受容野の最適方位軸の延長上に広がるもの、最適方位と直交する軸方向に広がるもののほか、斜め方向に位置するものもある。多くは抑制性の影響を及ばすが興奮性の影響も報告されている。また非古典的受容野の抑制には特徴選択性があり、古典的受容野の最適な方位、空間周波数にたいして最も強い抑制がみらえる。このような特性は、ポップアップや図地分化と呼ばれる知覚現象の基盤として、線分の長さや折れ線、曲線の角度や極率、主観的輪郭、テクスチャー境界などさまざまな特徴を検出するための初期機構としても注目されている。


=== 高次視覚野における受容野構造  ===
=== 高次視覚野における受容野構造  ===
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