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=== 不良ミトコンドリアの分解 (細胞内オルガネラの品質管理)<ref><pubmed> 21179058 </pubmed></ref>=== | === 不良ミトコンドリアの分解 (細胞内オルガネラの品質管理)<ref><pubmed> 21179058 </pubmed></ref>=== | ||
不良ミトコンドリアは、選択的に認識されオートファジーにより分解される(マイトファジー)。最近、家族性パーキンソン病の原因因子である[[Parkin]]が、[[膜電位]]の低下したミトコンドリアに局在し、マイトファジーを引き起こすことが明らかになった。不良ミトコンドリアの蓄積は、[[酸化ストレス]]や神経脱落を引き起こすため、マイトファジー不全がパーキンソン病の病態形成の一因として考えられている。しかしながら、Parkinはオートファジーに依存しないミトコンドリアへの作用も有しており、Parkinがどのようにパーキンソン病の病態形成に関与しているかについては、まだ不明な点が多い。 | |||
=== 細胞内侵入細菌の分解 (ゼノファジー)<ref><pubmed> 21740500 </pubmed></ref>=== | === 細胞内侵入細菌の分解 (ゼノファジー)<ref><pubmed> 21740500 </pubmed></ref>=== | ||
[[マクロファージ]]などの食細胞は、細菌を貧食してリソソーム系で分解するが、一部の細菌はそのような宿主の防御機構を回避してしまう。オートファジーは、このような細胞内侵入細菌の分解においても重要な役割を果たしている。ファゴソームから細胞質中に脱出した[[レンサ球菌]]などは、オートファゴソームにより選択的に認識されリソソーム系に輸送される。ファゴソームに取り込まれた[[サルモネラ菌]]は、ファゴソームごとオートファゴソームに囲まれて、リソソーム系に輸送される。ファゴソームの成熟を阻害する[[結核菌]]も、オートファジー依存的にファゴソームごと分解される。これらの細菌のオートファゴソームによる選択的認識には、ユビキチンが深く関与していることが指摘されている。一方で、[[リステリア菌]]、[[赤痢菌]]などの細菌は、オートファジーによる分解も回避する能力を獲得していることが報告されている。 | |||
=== 発生・分化における細胞内再構築<ref name="ref1" />=== | === 発生・分化における細胞内再構築<ref name="ref1" />=== | ||
マウス[[受精卵]]では、受精直後に過剰なオートファジーが誘導される。卵特異的オートファジー不全マウスでは、[[胚]]発生が正常におこなわれず、4-8細胞期で致死となることから、[[着床]]に至るまでの栄養が限られた条件では、オートファジーによるアミノ酸供給が必要であると考えられている。父方由来のミトコンドリアが選択的に分解され、母方由来のミトコンドリアだけが残るミトコンドリア母性遺伝の現象にも、オートファジーが関与している。最近、線虫を用いた解析から、受精後に父方由来のミトコンドリアがオートファジーにより分解されることが示された。組織特異的ノックアウトマウスを用いた解析では、[[脂肪細胞]]や[[赤血球]]、[[T細胞]]、[[B細胞]](骨髄Pre-B細胞、末梢B-1a細胞)などの細胞分化に異常が見られることが報告されている。このように、発生・分化に伴う急激な細胞内変化に、オートファジーが重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。 | |||
=== 抗原提示<ref name="ref11"><pubmed> 19381141 </pubmed></ref>=== | === 抗原提示<ref name="ref11"><pubmed> 19381141 </pubmed></ref>=== | ||
[[抗原提示細胞]]は、[[抗原]]を[[ペプチド]]断片にまで分解し、[[主要組織適合遺伝子複合体]](MHC)分子によって細胞表面に提示する役割をもつ。このとき、外来性抗原は、細胞外から[[エンドサイトーシス]]経路で取り込まれ、MHCクラスIIコンパートメントに運ばれる。一方で、一部の内在性抗原もMHCクラスII分子により細胞表面に提示されることが知られていたが、どのようにMHCクラスIIコンパートメントに輸送されているのか、その分子機構は不明であった。最近、細胞質中の内在性抗原はオートファゴソームに取り込まれ、そのオートファゴソームがMHCクラスIIコンパートメントと融合することが報告され、オートファジーが抗原提示に関与していることが示された。また同様に、[[胸腺]]での[[自己反応性T細胞]]除去に必要な自己抗原の提示にも、オートファジー経路が重要であることが明らかになっている。 | |||
=== がんにおけるオートファジーの二面性<ref><pubmed> 20056400 </pubmed></ref>=== | === がんにおけるオートファジーの二面性<ref><pubmed> 20056400 </pubmed></ref>=== | ||
オートファジーの細胞内品質管理における役割と、栄養(アミノ酸) | オートファジーの細胞内品質管理における役割と、栄養(アミノ酸)供給システムとしての役割が、[[がん]]においては相反する作用を発揮する。一部のオートファジー不全マウスでは、がんの発症率や腫瘍形成能が増加することから、がん初期段階では、オートファジーはがん抑制的に機能している。オートファジーを介した異常タンパク質や異常ミトコンドリアの分解により、酸化ストレスの減少、慢性[[炎症]]の抑制、および二次的ながん発症を抑制していると考えられている。一方で、抗がん剤投与時にオートファジー阻害剤を同時投与すると、がん抑制効果が増強される。がん細胞が増殖する段階においては、栄養が枯渇した条件下における生存をオートファジーが促していると考えられている。 | ||
=== クローン病とAtg16L1<ref name="ref11" />=== | === クローン病とAtg16L1<ref name="ref11" />=== | ||
炎症性腸疾患[[クローン病]]に関連する遺伝子変異として、Atg16L1 T300Aの一塩基多型(SNPs)が報告されている。遺伝子欠損マウスを用いた解析から、Atg16L1が腸管における炎症反応や腸管上皮細胞の成熟に重要な役割を果たしていることが明らかになっている。しかしながら、T300AがAtg16L1の機能にどのような影響を及ぼすのか、オートファジー不全がクローン病の病態形成の一因なのか、まだ不明な点が多い。 | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |