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GDNF-GFRα1シグナルは、細胞の生存だけでなく[[細胞移動]]のガイダンス分子としても働くと考えられている。生後の[[大脳]][[側脳室]]から生まれたニューロン前駆細胞は[[wikipedia:rostral_migratory_stream|rostral migratory stream]](RSM)という移動経路を通って嗅球に分布するが、この移動には[[NCAM]]が重要であることが知られている。このニューロン前駆細胞にはRETは発現していないが、GFRα-1が発現している。GFRα-1ノックアウトマウスではRSMが若干太くなっていることから、細胞移動に異常があるものと考えられている。GDNFはGFRα-1と結合した後、NCAMと相互作用して、NCAM同士のホモフィリックな結合を阻害するとともに、細胞質に局在するチロシンキナーゼである[[wikipedia:Fyn|Fyn]]や[[wikipedia:PTK2|Focal adhesion kinase]](FAK)を活性化することから、RET非依存的なGDNF-GFRα-1-NCAMシグナルがRMSにおけるニューロン前駆細胞の移動を促進していると思われる。同様のシグナルは培養下で[[海馬]]や[[大脳皮質]]ニューロンの神経突起伸長促進やプレシナプスの成熟とシナプス形成、[[wikipedia:ja:シュワン細胞|シュワン細胞]]の移動などの機能を担っている。また、RETやNCAMにも依存しないGFRα-1活性として、大脳皮質のGABAergicニューロンの接線方向への移動の制御が報告されている。 | GDNF-GFRα1シグナルは、細胞の生存だけでなく[[細胞移動]]のガイダンス分子としても働くと考えられている。生後の[[大脳]][[側脳室]]から生まれたニューロン前駆細胞は[[wikipedia:rostral_migratory_stream|rostral migratory stream]](RSM)という移動経路を通って嗅球に分布するが、この移動には[[NCAM]]が重要であることが知られている。このニューロン前駆細胞にはRETは発現していないが、GFRα-1が発現している。GFRα-1ノックアウトマウスではRSMが若干太くなっていることから、細胞移動に異常があるものと考えられている。GDNFはGFRα-1と結合した後、NCAMと相互作用して、NCAM同士のホモフィリックな結合を阻害するとともに、細胞質に局在するチロシンキナーゼである[[wikipedia:Fyn|Fyn]]や[[wikipedia:PTK2|Focal adhesion kinase]](FAK)を活性化することから、RET非依存的なGDNF-GFRα-1-NCAMシグナルがRMSにおけるニューロン前駆細胞の移動を促進していると思われる。同様のシグナルは培養下で[[海馬]]や[[大脳皮質]]ニューロンの神経突起伸長促進やプレシナプスの成熟とシナプス形成、[[wikipedia:ja:シュワン細胞|シュワン細胞]]の移動などの機能を担っている。また、RETやNCAMにも依存しないGFRα-1活性として、大脳皮質のGABAergicニューロンの接線方向への移動の制御が報告されている。 | ||
(3)GDNF- GFRα-1による[[シナプス]]形成の制御 | (3)GDNF- GFRα-1による[[シナプス]]形成の制御 | ||
GFRα-1はリガンドであるGDNF依存性の細胞接着因子としても働くことが示されている。一方、GDNF- GFRα- | GFRα-1はリガンドであるGDNF依存性の細胞接着因子としても働くことが示されている。一方、GDNF- GFRα-1シグナルが中脳ドーパミンニューロンや神経筋終末での神経伝達物質分泌の促進や、プレシナプス顆粒のサイズと数の増加、[[wikipedia:ja:アセチルコリン受容体|アセチルコリン受容体]]のクラスター形成の促進などの効果を持つことも示されている。また、GDNFのシナプスに対する影響はRETに依存せず、NCAMに部分的に依存するケースが報告されている。これらのことから、GDNF- GFRα-1が接着因子としてシナプスの形成や維持、活性の制御に関わっているのではないかと考えられている。このような考えに対応して、GDNFの変異体マウスでは学習能力に問題があり、GDNFヘテロ変異マウスの海馬において一時的なプレシナプスタンパク質の集積異常が認められる。 | ||
薬物依存、ドーパミン仮説とGDNF | 薬物依存、ドーパミン仮説とGDNF | ||
[[薬物依存]]には通常時のドーパミンレベルの低下が関係していると言われており([[ドーパミン仮説]])、アルコールや様々な薬物が[[側坐核]](nucleus accumbens)におけるドーパミンレベルの低下をおこすことが報告されている。前述したGDNFのドーパミンニューロンに対する効果に加え、[[アルコール]]依存症の患者の血中GDNF量が減少していることや、GDNFのヘテロノックアウトマウスではアルコールの報酬効果が上昇していることなどから、GDNFが薬物依存症治療に有効なのではないかと考えられている。Barakらはアルコール依存状態のラットについて調べ、側坐核におけるドーパミン量の減少を確認するとともに、ドーパミン産生ニューロンの細胞体がある[[wikipedia:ja:腹側被蓋野|腹側被蓋野]](ventral tegmental area)へのGDNF注入が側坐核のドーパミン量を回復させ、アルコール依存状態の改善をもたらすことを示した。 | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
<references/> | <references/> |
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