「オートファジー」の版間の差分

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==分子機構==
==分子機構==


 これまでに、[[wikipedia:JA:酵母|酵母]]遺伝学を用いた解析から、35の[[wikipedia:JA:オートファジー関連分子|オートファジー関連分子]](Atg分子)が同定されている<ref name="ref2" /><ref><pubmed> 14536056 </pubmed></ref><ref><pubmed> 19491929 </pubmed></ref> 。これらのうち、Atg1-10, 12-14, 16-18, 29, 31がオートファゴソームの形成に必須であり、[[wikipedia:JA:哺乳類|哺乳類]]では、そのほとんどの相同分子が保存されている。Atg分子は機能的な役割から、[[wikipedia:JA:Atg1|Atg1]]/[[wikipedia:JA:ULK|ULK]]複合体、クラスIII [[PI3キナーゼ]](phosphatidylinositol 3-kinase)複合体、[[wikipedia:JA:Atg9|Atg9]]、[[wikipedia:JA:Atg2|Atg2]]-18複合体、[[wikipedia:JA:Atg12|Atg12]]-[[wikipedia:JA:Atg5|Atg5]]結合体, [[wikipedia:JA:Atg8|Atg8]]/[[wikipedia:JA:LC3-PE|LC3-PE]]結合体に分けられる(図2)。
 これまでに、[[wikipedia:JA:酵母|酵母]]遺伝学を用いた解析から、35の[[wikipedia:JA:オートファジー関連分子|オートファジー関連分子]](Atg分子)が同定されている<ref name="ref2" /><ref><pubmed> 14536056 </pubmed></ref><ref><pubmed> 19491929 </pubmed></ref> 。これらのうち、Atg1-10, 12-14, 16-18, 29, 31がオートファゴソームの形成に必須であり、[[wikipedia:JA:哺乳類|哺乳類]]では、そのほとんどの相同分子が保存されている。Atg分子は機能的な役割から、[[wikipedia:Atg1|Atg1]]/[[wikipedia:ULK1|ULK]]複合体、[[ホスファチジルイノシトール#.E3.83.9B.E3.82.B9.E3.83.95.E3.82.A1.E3.83.81.E3.82.B8.E3.83.AB.E3.82.A4.E3.83.8E.E3.82.B7.E3.83.88.E3.83.BC.E3.83.AB3.E3.82.AD.E3.83.8A.E3.83.BC.E3.82.BC.E3.81.A8PI3.E3.82.AD.E3.83.8A.E3.83.BC.E3.82.BC.E3.82.B7.E3.82.B0.E3.83.8A.E3.83.AB.E4.BC.9D.E9.81.94.E7.B5.8C.E8.B7.AF|クラスIII PI3キナーゼ]] (phosphatidylinositol 3-kinase)複合体、[[wikipedia:Atg9|Atg9]]、[[wikipedia:Atg2|Atg2]]-18複合体、[[wikipedia:Atg12|Atg12]]-[[wikipedia:Atg5|Atg5]]結合体, [[wikipedia:Atg8|Atg8]]/[[wikipedia:LC3|LC3]]-PE結合体に分けられる(図2)。


===誘導 ===
===誘導 ===
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=== 隔離膜の形成===  
=== 隔離膜の形成===  


 オートファジーの最も初期のステップでは、タンパク質リン酸化酵素であるAtg1/ULK複合体(哺乳類では[[wikipedia:JA:ULK|ULK]]-[[wikipedia:JA:Atg13|Atg13]]-[[wikipedia:JA:FIP200|FIP200]]-[[wikipedia:JA:Atg101|Atg101]]で構成される)が重要な役割を果たす。このULK複合体は栄養依存的にmTORに結合し、[[リン酸化]]を受け、負に制御されている。栄養飢餓条件下では、ULK複合体がmTORから外れることにより活性化し、[[小胞体]]膜上に局在化する。
 オートファジーの最も初期のステップでは、タンパク質[[リン酸化]]酵素である[[wikipedia:Atg1|Atg1]]/ULK複合体(哺乳類ではULK-[[wikipedia:Atg13|Atg13]]-[[wikipedia:RB1CC1|FIP200]]-[[wikipedia:Autophagy-related protein 101|Atg101]]で構成される)が重要な役割を果たす。このULK複合体は栄養依存的にmTORに結合し、[[リン酸化]]を受け、負に制御されている。栄養飢餓条件下では、ULK複合体がmTORから外れることにより活性化し、[[小胞体]]膜上に局在化する。


 クラスIII PI3キナーゼ複合体(哺乳類では[[wikipedia:JA:Beclin1|Beclin1]]-[[wikipedia:JA:Atg14|Atg14]]-[[wikipedia:JA:Vps15|Vps15]]-[[wikipedia:JA:Vps34|Vps34]]で構成される)は、ULK複合体依存的に小胞体膜上へ局在化する。クラスIII PI3キナーゼ複合体は、[[ホスファチジルイノシトール3-リン酸]](phosphatidylinositol 3-phosphate(PI (3) P))を産生することで、下流で機能するPI (3) P結合タンパク質[[wikipedia:JA:Atg18|Atg18]](哺乳類では[[wikipedia:JA:WIPI|WIPI]])などのオートファゴソーム形成起点への局在化を促す。このクラスIII PI3キナーゼ複合によるPI (3) Pの産生は、オートファゴソームの前駆体である隔離膜の形成に必須である。 オートファジーを阻害することで知られている[[wikipedia:JA:ワルトマニン|ワルトマニン]]や[[wikipedia:JA:3-メチルアデニン|3-メチルアデニン]]は、このPI3キナーゼ活性を阻害することにより、オートファジーを抑制する。
 クラスIII PI3キナーゼ複合体(哺乳類では[[wikipedia:BECN1|Beclin1]]-[[wikipedia:Atg14|Atg14]]-[[wikipedia:PIK3R4|Vps15]]-[[wikipedia:Class III PI 3-kinase|Vps34]]で構成される)は、ULK複合体依存的に小胞体膜上へ局在化する。クラスIII PI3キナーゼ複合体は、[[ホスファチジルイノシトール#PI.283.29P|ホスファチジルイノシトール3-リン酸]](phosphatidylinositol 3-phosphate; PI(3)P)を産生することで、下流で機能するPI(3)P結合タンパク質[[wikipedia:Atg18|Atg18]](哺乳類では[[wikipedia:WIPI|WIPI]])などのオートファゴソーム形成起点への局在化を促す。このクラスIII PI3キナーゼ複合体によるPI(3)Pの産生は、オートファゴソームの前駆体である隔離膜の形成に必須である。 オートファジーを阻害することで知られている[[wikipedia:Wortmannin |ワルトマニン]]や[[wikipedia:3-methyladenine|3-メチルアデニン]]は、このPI3キナーゼ活性を阻害することにより、オートファジーを抑制する。


=== 隔離膜の伸長、およびオートファゴソームの形成===  
=== 隔離膜の伸長、およびオートファゴソームの形成===  


 隔離膜の伸長には, 2つのユビキチン様結合システムが必要である。1つは、Atg12とAtg5が共有結合するAtg12-Atg5システムである。もう1つは、Atg8 (哺乳類ではLC3) と[[wikipedia:JA:リン脂質|リン脂質]]である[[wikipedia:JA:ホスファチジルエタノールアミン|ホスファチジルエタノールアミン]] (PE) が共有結合するLC3-PEシステムである。
 隔離膜の伸長には, 2つの[[ユビキチン]]様結合システムが必要である。1つは、[[wikipedia:Atg12|Atg12]]とAtg5が共有結合するAtg12-Atg5システムである。もう1つは、[[wikipedia:Atg8|Atg8]] (哺乳類ではLC3) と[[wikipedia:JA:リン脂質|リン脂質]]である[[wikipedia:JA:ホスファチジルエタノールアミン|ホスファチジルエタノールアミン]] (PE) が共有結合するLC3-PEシステムである。


 Atg12は[[wikipedia:JA:E1酵素|E1酵素]][[wikipedia:JA:Atg7|Atg7]]、[[wikipedia:JA:E2酵素|E2酵素]][[wikipedia:JA:Atg10|Atg10]]を介して、Atg5と共有結合しAtg12—Atg5を形成する。その後、Atg12-Atg5結合体は[[wikipedia:JA:Atg16L1|Atg16L1]]と大きな複合体を形成し、隔離膜の外側に局在する。隔離膜が閉じてオートファゴソームになるとき、Atg12-Atg5-Atg16L1は膜から離脱する。
 Atg12は[[wikipedia:JA:E1酵素|E1酵素]][[wikipedia:Atg7|Atg7]]、[[wikipedia:JA:E2酵素|E2酵素]][[wikipedia:JA:Atg10|Atg10]]を介して、Atg5と共有結合しAtg12—Atg5を形成する。その後、Atg12-Atg5結合体は[[wikipedia:JA:Atg16L1|Atg16L1]]と大きな複合体を形成し、隔離膜の外側に局在する。隔離膜が閉じてオートファゴソームになるとき、Atg12-Atg5-Atg16L1は膜から離脱する。


 一方、LC3はホスファチジルエタノールアミン化されることにより、膜に局在化するようになる。前駆体LC3は合成後、まず、[[wikipedia:JA:システインプロテアーゼ|システインプロテアーゼ]]である[[wikipedia:JA:Atg4|Atg4]](A-Dの4種類存在する)によりC末端が切断され、[[wikipedia:JA:グリシン|グリシン]]残基を露出したLC3-I formになる。LC3-IはE1酵素Atg7、E2酵素[[wikipedia:JA:Atg3|Atg3]]を介して、最終的にはPEと共有結合し、LC3-PE(LC3-II form)になる。このとき、Atg12-Atg5はE3様の働きをして、LC3-PE形成に必須な役割を果たしている。
 一方、LC3はホスファチジルエタノールアミン化されることにより、膜に局在化するようになる。前駆体LC3は合成後、まず、[[wikipedia:JA:システインプロテアーゼ|システインプロテアーゼ]]である[[wikipedia:JA:Atg4|Atg4]](A-Dの4種類存在する)によりC末端が切断され、[[wikipedia:JA:グリシン|グリシン]]残基を露出したLC3-I formになる。LC3-IはE1酵素Atg7、E2酵素[[wikipedia:JA:Atg3|Atg3]]を介して、最終的にはPEと共有結合し、LC3-PE(LC3-II form)になる。このとき、Atg12-Atg5はE3様の働きをして、LC3-PE形成に必須な役割を果たしている。

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