「全胚培養」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
12行目: 12行目:
 全胚培養で用いる胚の発生段階は器官形成期という最もダイナミックな形態形成が行われる時期であり、細胞増殖、細胞移動、細胞分化などの重要な発生事象が起こる。この発生段階に色素を用いた細胞標識、細胞移植など(Matsuo et al., 1993)を行うことで、細胞系譜や分化運命のポテンシャルを検討することができる。また、薬剤や生理活性物質を培養液に添加することで、発生毒性・胎児代謝の研究に応用されており、医薬品の安全性試験としても使用されている。
 全胚培養で用いる胚の発生段階は器官形成期という最もダイナミックな形態形成が行われる時期であり、細胞増殖、細胞移動、細胞分化などの重要な発生事象が起こる。この発生段階に色素を用いた細胞標識、細胞移植など(Matsuo et al., 1993)を行うことで、細胞系譜や分化運命のポテンシャルを検討することができる。また、薬剤や生理活性物質を培養液に添加することで、発生毒性・胎児代謝の研究に応用されており、医薬品の安全性試験としても使用されている。
 胚発生における特定遺伝子の機能を知るためには、時間的、空間的に制御可能な遺伝子操作が必要である。近年の遺伝子工学技術はめざましく、トランスジェニック動物やノックアウト動物などの技術が開発され、さらにcre-loxPシステムによる条件つき遺伝子改変が可能になったものの、その作製労力を考えると決して簡便ではない。全胚培養法を用いれば、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)を組み合わせることによって、遺伝子を直接細胞内に導入することができる(Osumi and Inoue. 2001)。導入する遺伝子は単独である必要はなく、複数の遺伝子を導入時に、あるいは時間差で導入することも可能である。また、ドミナントネガティブ分子による機能阻害実験、siRNAによるノックダウン実験(Arai et al., 2005)、およびレトロウィルスベクターを用いた遺伝子導入(Gaiano et al., 1999)も可能である。これらの技術は基礎研究だけでなく、特定の疾患モデル動物を対象とした遺伝子治療の研究にも有効であると考えられる。
 胚発生における特定遺伝子の機能を知るためには、時間的、空間的に制御可能な遺伝子操作が必要である。近年の遺伝子工学技術はめざましく、トランスジェニック動物やノックアウト動物などの技術が開発され、さらにcre-loxPシステムによる条件つき遺伝子改変が可能になったものの、その作製労力を考えると決して簡便ではない。全胚培養法を用いれば、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)を組み合わせることによって、遺伝子を直接細胞内に導入することができる(Osumi and Inoue. 2001)。導入する遺伝子は単独である必要はなく、複数の遺伝子を導入時に、あるいは時間差で導入することも可能である。また、ドミナントネガティブ分子による機能阻害実験、siRNAによるノックダウン実験(Arai et al., 2005)、およびレトロウィルスベクターを用いた遺伝子導入(Gaiano et al., 1999)も可能である。これらの技術は基礎研究だけでなく、特定の疾患モデル動物を対象とした遺伝子治療の研究にも有効であると考えられる。
<references />

案内メニュー