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睡眠覚醒調節においては、睡眠恒常性維持機構と体内時計機構の2つが重要視される。恒常性維持機構は、活動によってもたらされる疲労や生体の損傷回復と関連しており、プロスタグランジンD2やアデノシンなどの睡眠物質と関連して睡眠が誘導されるが、先行する睡眠の量的不足の度合いにより、その後の睡眠の長さや質が調節される。すなわち、睡眠不足の状態が続くと深いnon-REM睡眠が増加し、疲労に応じて大脳を休息させることがわかっている。一方、体内時計の中枢は視交叉上核(suprachiasmatic nucleus: SCN)にあり、体温や血圧、脈拍などの自律神経系に加え、ホルモン分泌、免疫系、代謝系など、約24時間の周期をもってリズムを刻む生体活動を支配する。体内時計は概日リズムを発振すると共に、これを外界の明暗周期(昼夜のサイクル)に合わせる機能をもつ。体内時計が朝を認識すると、身体は日中の活動に適した状態になる。また、通常の起床時刻の14~16時間後に、眠りの準備が始まる(図1)<ref><pubmed>7185792</pubmed></ref>。 睡眠中枢は覚醒の抑制を引き起こし、睡眠を誘発するが、逆に、睡眠中枢が抑制されている場合は、覚醒中枢が活性化されて覚醒が維持される。このように睡眠中枢と覚醒中枢が交互に活動することにより睡眠覚醒の調節を行う生体機構をflip-flop機構と呼ぶ(図2)。 | 睡眠覚醒調節においては、睡眠恒常性維持機構と体内時計機構の2つが重要視される。恒常性維持機構は、活動によってもたらされる疲労や生体の損傷回復と関連しており、プロスタグランジンD2やアデノシンなどの睡眠物質と関連して睡眠が誘導されるが、先行する睡眠の量的不足の度合いにより、その後の睡眠の長さや質が調節される。すなわち、睡眠不足の状態が続くと深いnon-REM睡眠が増加し、疲労に応じて大脳を休息させることがわかっている。一方、体内時計の中枢は視交叉上核(suprachiasmatic nucleus: SCN)にあり、体温や血圧、脈拍などの自律神経系に加え、ホルモン分泌、免疫系、代謝系など、約24時間の周期をもってリズムを刻む生体活動を支配する。体内時計は概日リズムを発振すると共に、これを外界の明暗周期(昼夜のサイクル)に合わせる機能をもつ。体内時計が朝を認識すると、身体は日中の活動に適した状態になる。また、通常の起床時刻の14~16時間後に、眠りの準備が始まる(図1)<ref><pubmed>7185792</pubmed></ref>。 睡眠中枢は覚醒の抑制を引き起こし、睡眠を誘発するが、逆に、睡眠中枢が抑制されている場合は、覚醒中枢が活性化されて覚醒が維持される。このように睡眠中枢と覚醒中枢が交互に活動することにより睡眠覚醒の調節を行う生体機構をflip-flop機構と呼ぶ(図2)。 | ||
[[Image:Takaスライド1.PNG|thumb|300px| | [[Image:Takaスライド1.PNG|thumb|300px|'''図1. 睡眠のtwo process model(Borbely AA et al 1982)'''<br>覚醒期間中に一方向性に増加する何らかの過程(Sプロセス)が、睡眠閾値に達すると睡眠が生じる。Sプロセスは睡眠期間中、指数関数的に減少し、覚醒閾値に達したところで睡眠は終了する。睡眠閾値の開始と終了を決める上限と閾値レベルがサーカディアンリズム(Cプロセス)を持つと考えられている。]] | ||
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[[Image:Takaスライド2.PNG|thumb|300px|'''図2.Flip-flopスイッチモデル (Saper CB et al 2005)'''<br>腹外側視索前野(VLPO)は睡眠中に活動し、その活動低下は睡眠分断ないし不眠をもたらす。VLPOのニューロンは二つの系によって調整される。経節乳頭体(TMN)へ向かうニューロンは、青斑核(LC)、背側ならびに中心部縫線核へ向かう。この系は基本的に覚醒系と拮抗関係にあり、VLPOからのオレキシン系(覚醒ニューロン)への入力が抑制されると睡眠促進性に働く。ベンゾジアゼピン系睡眠薬-GABA系はVLPO-TMNの睡眠促進系に働く。]] | |||
== 睡眠障害 == | == 睡眠障害 == |