「シナプス接着因子」の版間の差分

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 Neurexinは、シナプス前終末に局在する1回膜貫通型タンパク質で、哺乳類では3種類の遺伝子が存在する(NRXN1, NRXN2, NRXN3)。それぞれの遺伝子は、上流にあるプロモーターによって転写されるα-Neurexinと、遺伝子の中ほどにあるプロモーターによって転写されるβ-Neurexinの二つのアイソフォームを産生する。α-Neurexinは、細胞外領域に6個のLNS ドメインと、3個のEGF様リピートを持ち、細胞内領域は短く、C末にPDZ結合配列を有し、これを介してCASKと結合する。β-Neurexinは、α-Neurexinのうち、1-5番目のLNSドメインと3個のEGF様リピートを欠く構造になっており、N末に短いβ-Neurexin特有の配列を持つ以外は、α-Neurexinの6番目のLNSドメインからC末にかけて共通の配列を有している。Neurexinタンパク質はシナプス後終末にも局在するという報告もあるが、議論が分かれている<ref><pubmed>    17360903</pubmed></ref>。
 Neurexinは、シナプス前終末に局在する1回膜貫通型タンパク質で、哺乳類では3種類の遺伝子が存在する(NRXN1, NRXN2, NRXN3)。それぞれの遺伝子は、上流にあるプロモーターによって転写されるα-Neurexinと、遺伝子の中ほどにあるプロモーターによって転写されるβ-Neurexinの二つのアイソフォームを産生する。α-Neurexinは、細胞外領域に6個のLNS ドメインと、3個のEGF様リピートを持ち、細胞内領域は短く、C末にPDZ結合配列を有し、これを介してCASKと結合する。β-Neurexinは、α-Neurexinのうち、1-5番目のLNSドメインと3個のEGF様リピートを欠く構造になっており、N末に短いβ-Neurexin特有の配列を持つ以外は、α-Neurexinの6番目のLNSドメインからC末にかけて共通の配列を有している。Neurexinタンパク質はシナプス後終末にも局在するという報告もあるが、議論が分かれている<ref><pubmed>    17360903</pubmed></ref>。


 Neuroliginは、β-Neurexinとカルシウム依存的に結合する分子として単離された1回膜貫通型タンパク質で、シナプス後終末特異的に局在する。ヒトでは5種類の遺伝子が存在する(NLGN1, NLGN2, NLGN3, NLGN4X, NLGN4Y)が、げっ歯類ではNLGN4Yに相当するものは確認されていない。Neuroliginは、細胞外領域にアセチルコリンエステラーゼ様ドメインと、細胞内領域にNeurexinとは異なるクラスのPDZ結合配列を有し、これを介して[[PSD-95]]と結合する。Neuroliginのシナプスにおける機能は、各アイソフォームで異なる。NLGN1は、興奮性シナプス後終末に局在し、欠損マウスで[[NMDA受容体]]を介したシナプス伝達の異常をきたす。一方、NLGN2は、抑制性シナプス後終末に局在し、欠損マウスで[[GABA受容体]]を介したシナプス伝達の異常をきたす。NLGN3は興奮性・抑制性両方のシナプス後終末に局在するが、欠損マウスで明確なシナプス異常は見られない。NLGN4* (げっ歯類のNLGN4は本当にヒトのNLGN4Xの相同分子か議論の余地が残る)は、グリシン作動性抑制性シナプスとの関連が示唆されている。
 Neuroliginは、β-Neurexinとカルシウム依存的に結合する分子として単離された1回膜貫通型タンパク質で、シナプス後終末特異的に局在する。ヒトでは5種類の遺伝子が存在する(NLGN1, NLGN2, NLGN3, NLGN4X, NLGN4Y)が、げっ歯類ではNLGN4Yに相当するものは確認されていない。Neuroliginは、細胞外領域にアセチルコリンエステラーゼ様ドメインと、細胞内領域にNeurexinとは異なるクラスのPDZ結合配列を有し、これを介して[[PSD-95]]と結合する。Neuroliginのシナプスにおける機能は、各アイソフォームで異なる。NLGN1は、[[興奮性シナプス]]後終末に局在し、欠損マウスで[[NMDA受容体]]を介したシナプス伝達の異常をきたす。一方、NLGN2は、[[抑制性シナプス]]後終末に局在し、欠損マウスで[[GABA受容体]]を介したシナプス伝達の異常をきたす。NLGN3は興奮性・抑制性両方のシナプス後終末に局在するが、欠損マウスで明確なシナプス異常は見られない。NLGN4* (げっ歯類のNLGN4は本当にヒトのNLGN4Xの相同分子か議論の余地が残る)は、グリシン作動性抑制性シナプスとの関連が示唆されている。


 NeurexinとNeuroliginの結合:NeurexinとNeuroliginは、シナプス間隙において、互いの細胞外ドメインを介して結合する。結合様式としては、Neuroliginがシナプス後終末にcis 2量体として存在し、それぞれのアセリルコリンエステラーゼ様ドメインに、シナプス前終末側から伸びてきたNeurexinのLNSドメインが、カルシウムイオンを介して1つずつ結合し、ヘテロ4量複合体を形成する。Neurexinの第4選択的スプライスサイトがこの結合の特異性を制御している。NeurexinとNeuroliginの結合は、シナプスの結合よりも、成熟により関与していると考えられている。Neurexin、Neurolignが細胞内でどのようなシグナル伝達に関与しているかは今のところ殆どわかっていない。
 NeurexinとNeuroliginの結合:NeurexinとNeuroliginは、シナプス間隙において、互いの細胞外ドメインを介して結合する。結合様式としては、Neuroliginがシナプス後終末にcis 2量体として存在し、それぞれのアセリルコリンエステラーゼ様ドメインに、シナプス前終末側から伸びてきたNeurexinのLNSドメインが、カルシウムイオンを介して1つずつ結合し、ヘテロ4量複合体を形成する。Neurexinの第4選択的スプライスサイトがこの結合の特異性を制御している。NeurexinとNeuroliginの結合は、シナプスの結合よりも、成熟により関与していると考えられている。Neurexin、Neurolignが細胞内でどのようなシグナル伝達に関与しているかは今のところ殆どわかっていない。
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