77
回編集
Nobuakitanaka (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
Nobuakitanaka (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
||
2行目: | 2行目: | ||
味覚受容体は、接触した化学物質を検出するための受容体で、1999年に、味細胞に発現する7回膜貫通型Gタンパク質共役型受容体として初めて哺乳類から同定された。その後、分子生物学的手法やゲノムプロジェクトの発展に伴い、各種モデル動物の味覚受容体遺伝子のクローニングが進み、同時に受容体に対するリガンド(ligand)も特定されていった。 | 味覚受容体は、接触した化学物質を検出するための受容体で、1999年に、味細胞に発現する7回膜貫通型Gタンパク質共役型受容体として初めて哺乳類から同定された。その後、分子生物学的手法やゲノムプロジェクトの発展に伴い、各種モデル動物の味覚受容体遺伝子のクローニングが進み、同時に受容体に対するリガンド(ligand)も特定されていった。 | ||
哺乳類にとって、味には、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5基本味がある。それぞれの基本味は、異なる受容体で検知されていると考えられているが、2012年現在、それぞれの基本味に対する受容機構の全貌は甘味を除いて解明されていない。また、基本味以外にも、カルシウム味や脂肪味などに応答する味細胞が存在することが報告されているが、それらに対する受容機構の研究は始まったばかりである。 | 哺乳類にとって、味には、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5基本味がある。それぞれの基本味は、異なる受容体で検知されていると考えられているが、2012年現在、それぞれの基本味に対する受容機構の全貌は甘味を除いて解明されていない。また、基本味以外にも、カルシウム味や脂肪味などに応答する味細胞が存在することが報告されているが、それらに対する受容機構の研究は始まったばかりである。 | ||
ここでは、哺乳類(主にマウス)と昆虫(ショウジョウバエ)の知見を基に、味覚受容体を概説する。 | ここでは、哺乳類(主にマウス)と昆虫(ショウジョウバエ)の知見を基に、味覚受容体を概説する。 | ||
15行目: | 17行目: | ||
'''うま味/甘味受容体(T1Rファミリー)''' | '''うま味/甘味受容体(T1Rファミリー)''' | ||
T1Rファミリーには、T1R1、T1R2、T2R3の3種類のサブユニットがあり、T1R1とT1R3がヘテロ2量体を形成している場合はグルタミン酸などのうま味物質の受容体として、T1R2とT1R3がヘテロ2量体を形成している際は糖やグリシン、甘味を持つタンパク質(モネリンやソーマチン)などの受容体として機能する。 | |||
'''苦味受容体(T2Rファミリー)''' | '''苦味受容体(T2Rファミリー)''' | ||
T2Rファミリーの受容体は、マウスに30種類ほどあるように、複数種が存在し、その大部分が同じ細胞に共発現して、ヘテロオリゴマーを形成して、苦味物質を検出する。 | |||
===イオンチャネル型受容体=== | ===イオンチャネル型受容体=== | ||
29行目: | 31行目: | ||
'''塩味受容体''' | '''塩味受容体''' | ||
低濃度の塩味(Na+イオン)に対するマウスの嗜好性は、アミロライドによって抑制されるので、上皮性アミロライド感受性Naチャネル(ENaC)によって、塩味は受容されると考えられている。高濃度の塩味に対する嫌悪は、アミロライドによって抑制されないことから、高濃度の塩味に対する受容は別の機構によると考えられているが、受容体は同定されていない。 | 低濃度の塩味(Na+イオン)に対するマウスの嗜好性は、アミロライドによって抑制されるので、上皮性アミロライド感受性Naチャネル(ENaC)によって、塩味は受容されると考えられている。高濃度の塩味に対する嫌悪は、アミロライドによって抑制されないことから、高濃度の塩味に対する受容は別の機構によると考えられているが、受容体は同定されていない。 | ||
==昆虫の味覚受容体== | ==昆虫の味覚受容体== | ||
37行目: | 40行目: | ||
昆虫においても、甘味や苦味に対する受容体は、7回膜貫通型で、構造的にはGタンパク質共役型だと考えられている。実際、Gタンパク質を欠損させると、味覚応答が部分的に低下する。しかしながら、近年、リガンド結合型イオンチャネルの特性があることも示され、昆虫の甘味や苦味に対する受容機構は脊椎動物とは異なることが示唆されている。 | 昆虫においても、甘味や苦味に対する受容体は、7回膜貫通型で、構造的にはGタンパク質共役型だと考えられている。実際、Gタンパク質を欠損させると、味覚応答が部分的に低下する。しかしながら、近年、リガンド結合型イオンチャネルの特性があることも示され、昆虫の甘味や苦味に対する受容機構は脊椎動物とは異なることが示唆されている。 | ||
==関連項目== | ==関連項目== | ||
44行目: | 48行目: | ||
*[[イオンチャネル]] | *[[イオンチャネル]] | ||
*[[Transient receptor potential channel]] | *[[Transient receptor potential channel]] | ||
==参考文献== | ==参考文献== | ||
50行目: | 55行目: | ||
Yarmolinsky DA, Zuker CS, Ryba NJ. (2009) Common sense about taste: from mammals to insects. Cell 139:234-244. Review. | Yarmolinsky DA, Zuker CS, Ryba NJ. (2009) Common sense about taste: from mammals to insects. Cell 139:234-244. Review. | ||
(執筆者:田中暢明、担当編集委員:柚崎通介) | (執筆者:田中暢明、担当編集委員:柚崎通介) |
回編集