「嗅内野」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
8行目: 8行目:
== 位置と細胞構築  ==
== 位置と細胞構築  ==


 嗅内野は[[側頭葉]]にある[[皮質]]領域で、主に[[ブロードマンの脳地図]]の28野にあたる。[[wikipedia:JA:|霊長類]]では側頭葉前部の内側領域に位置し、[[嗅脳溝]]の内側部分を占める(図1)<ref name="refsq"><pubmed> 21456960 </pubmed></ref>。嗅内野は外側と内背側においてそれぞれ[[嗅周野]](perirhinal cortex)と[[海馬台]](subiculum)と接し、尾側で[[海馬傍皮質]](parahippocampal cortex)と接する。嗅内野は細胞構築学的には[[不等皮質]](allocortex)と呼ばれる、第4層を欠く[[無顆粒皮質]](agranular cortex)である。[[wikipedia:JA:|げっ歯類]]では嗅内野は側頭葉後部、嗅脳溝の腹側部分を占める(図1)。  
 嗅内野は[[側頭葉]]にある[[皮質]]領域で、主に[[ブロードマンの脳地図]]の28野にあたる。[[wikipedia:JA:霊長類|霊長類]]では側頭葉前部の内側領域に位置し、[[嗅脳溝]]の内側部分を占める(図1)<ref name="refsq"><pubmed> 21456960 </pubmed></ref>。嗅内野は外側と内背側においてそれぞれ[[嗅周野]](perirhinal cortex)と[[海馬台]](subiculum)と接し、尾側で[[海馬傍皮質]](parahippocampal cortex)と接する。嗅内野は細胞構築学的には[[不等皮質]](allocortex)と呼ばれる、第4層を欠く[[無顆粒皮質]](agranular cortex)である。[[wikipedia:JA:げっ歯類|げっ歯類]]では嗅内野は側頭葉後部、嗅脳溝の腹側部分を占める(図1)。  


== 結合  ==
== 結合  ==
16行目: 16行目:
== 機能  ==
== 機能  ==


 嗅内野は[[内側側頭葉記憶システム]]<ref name="refsq" />の構成要素として、海馬に対する入出力ゲートとしての役割を担う。そのため、嗅内野は[[宣言的記憶]]が正常に機能するために必須の領域である。ところが単なる中継地点としてではなく、嗅内野自身が新たに付け加える機能については、まだ良く分かっていない。
 嗅内野は[[内側側頭葉記憶システム]]<ref name="refsq" />の構成要素として、海馬に対する入出力ゲートとしての役割を担う。そのため、嗅内野は[[エピソード記憶]]が正常に機能するために必須の領域である。ところが単なる中継地点としてではなく、嗅内野自身が新たに付け加える機能については、まだ良く分かっていない。


 こうしたなか、空間情報処理またはナビゲーションに関わる嗅内野の神経メカニズムが、げっ歯類を使用した電気生理学的研究によって明らかにされつつある。Moser達のグループはラットの嗅内野の内側領域ににおいて[[グリッド細胞]]と呼ばれるニューロンを発見した<ref><pubmed> 15965463</pubmed></ref><ref name=ref4><pubmed> 19021254</pubmed></ref>(図2)。グリッド細胞は複数の場所受容野を持ち、さらにそれら場所受容野は等間隔に規則正しく配列して6角形または3角形の格子を形成している。場所受容野間の間隔は背側部から腹側部に向かうに従い広がっていく。グリッド細胞がコードする幾何学的な空間情報は海馬に供給され、[[場所細胞]](place cell)が示す神経活動パターンに寄与する。グリッド細胞はげっ歯類だけでなく、ヒトにおいても存在することが[[機能的核磁気共鳴画像]]を使った実験において示唆されている<ref><pubmed> 20090680</pubmed></ref>。嗅内野の内側領域にはグリッド細胞の他にも、動物がどの方角を向いているかによって反応強度が異なる[[頭部方向性細胞]](head-direction cell)が見つかっている<ref><pubmed> 15961670</pubmed></ref>。
 こうしたなか、空間情報処理またはナビゲーションに関わる嗅内野の神経メカニズムが、げっ歯類を使用した電気生理学的研究によって明らかにされつつある。Moser達のグループはラットの嗅内野の内側領域ににおいて[[グリッド細胞]]と呼ばれるニューロンを発見した<ref><pubmed> 15965463</pubmed></ref><ref name=ref4><pubmed> 19021254</pubmed></ref>(図2)。グリッド細胞は複数の場所受容野を持ち、さらにそれら場所受容野は等間隔に規則正しく配列して6角形または3角形の格子を形成している。場所受容野間の間隔は背側部から腹側部に向かうに従い広がっていく。グリッド細胞がコードする幾何学的な空間情報は海馬に供給され、[[場所細胞]](place cell)が示す神経活動パターンに寄与する。グリッド細胞はげっ歯類だけでなく、ヒトにおいても存在することが[[機能的核磁気共鳴画像]]を使った実験において示唆されている<ref><pubmed> 20090680</pubmed></ref>。嗅内野の内側領域にはグリッド細胞の他にも、動物がどの方角を向いているかによって反応強度が異なる[[頭部方向性細胞]](head-direction cell)が見つかっている<ref><pubmed> 15961670</pubmed></ref>。

案内メニュー