「高速液体クロマトグラフィー」の版間の差分

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 高速液体クロマトグラフィーとは、物質が固定相(カラムの担体)とこれに接して流れる移動相(液体)との親和力の違いから一定の比率で分布し、その比率が物質によって異なる事を利用して分離する方法である。移動相を高圧で流すことで高い分離および感度を得ることができ、固定相、移動相、検出器の組み合わせにより様々な物質の分析を行うことが可能である。神経科学分野においても各種神経伝達物質やタンパク質、ペプチドの分析など、幅広く利用されている。
 高速液体クロマトグラフィーとは、物質が固定相(カラムの担体)とこれに接して流れる移動相(液体)との親和力の違いから一定の比率で分布し、その比率が物質によって異なる事を利用して分離する方法である。移動相を高圧で流すことで高い分離および感度を得ることができ、固定相、移動相、検出器の組み合わせにより様々な物質の分析を行うことが可能である。神経科学分野においても各種神経伝達物質やタンパク質、ペプチドの分析など、幅広く利用されている。


[[ファイル:HPLC 図1.jpg|thumb|300px|right|図1. (A) HPLCの基本フローチャート. (B) プレカラム法の基本フローチャート. (C) ポストカラム法の基本フローチャート.]]


==原理==
==原理==
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===高速液体クロマトグラフィーの基本構成===
===高速液体クロマトグラフィーの基本構成===
 移動相として溶媒や緩衝溶液を送るポンプ、試料を注入するインジェクター(試料導入部)、物質を分離するためのカラム、検出器、データ処理装置(PC)から構成されている(図1-A)。[[ファイル:HPLC 図2.jpg|thumb|300px|right|図2. (A) OPA化のアミノ基の反応. (B) 実験に用いたHPLCのフローチャート. (C)と(D)は、 OPA化アミノ酸のクロマトグラム. (C) 0.5~20pmol/uLのスタンダード. (D)脳組織をホモジネートしたサンプル.<br />[分析条件] 装置:Shimadzu SCL-10Avpシステム, オートサンプラー:GILSON 232XLシステム,カラム:COSMOSIL 5C18-MS-II(4.6ID×150mm), 流速:0.8ml/min, カラム温度:36℃, 励起波長:340nm, 蛍光波長:445nm.]]
[[ファイル:HPLC 図1.jpg|thumb|300px|right|図1. (A) HPLCの基本フローチャート. (B) プレカラム法の基本フローチャート. (C) ポストカラム法の基本フローチャート.]]
 移動相として溶媒や緩衝溶液を送るポンプ、試料を注入するインジェクター(試料導入部)、物質を分離するためのカラム、検出器、データ処理装置(PC)から構成されている(図1-A)。
#ポンプ
#ポンプ
#:&ensp;移動相の制御に欠かせない装置である。メーカーによって多少異なる形をしているが基本的な構造は同じである。1台のポンプで1つの移動相が基本であるが、2つの電磁弁が付属していると2つの移動相を制御することができる。高速アミノ酸分析計(HITACHI)では電磁弁が5つ付属しており、1台のポンプで5種類の移動相を切り替えて1分析で約40種類のアミノ酸を定量することができる。電磁弁以外では、リザーバ−切り替えバルブがあり同様に6種類の移動相を変えることが可能である。
#:&ensp;移動相の制御に欠かせない装置である。メーカーによって多少異なる形をしているが基本的な構造は同じである。1台のポンプで1つの移動相が基本であるが、2つの電磁弁が付属していると2つの移動相を制御することができる。高速アミノ酸分析計(HITACHI)では電磁弁が5つ付属しており、1台のポンプで5種類の移動相を切り替えて1分析で約40種類のアミノ酸を定量することができる。電磁弁以外では、リザーバ−切り替えバルブがあり同様に6種類の移動相を変えることが可能である。
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#カラム
#カラム
#:&ensp;カラムは、分析する物質の性質を考慮して種類を選択しなければならない。カラムの種類には、主にイオン交換、逆相、順相、サイズ排除(ゲル濾過)そして光学異性体分離カラムがある。イオン交換カラムには、陽イオン、陰イオン、両イオン型の3つのタイプがある。これらは、金属イオン、無機酸、アミノ酸、ペプチドやタンパク質の分析・分取に用いられる。逆相カラムは、最も種類が多く様々なカラムが開発されている。特に低分子の分析に用いられることが多く神経伝達物質、誘導化したアミノ酸、医薬品、ホルモン、ペプチドの分析などに用いられている。順相カラムは、有機合成した化合物の分離に多く用いられる。サイズ排除カラムは、タンパク質を分子量ごとに分画または会合体としてモノマー、ダイマー、トリマーの分析・分取に用いられる。光学異性体分離カラムはアミノ酸のD体とL体や医薬品などの光学異性体化合物の分析・分取に用いられている。
#:&ensp;カラムは、分析する物質の性質を考慮して種類を選択しなければならない。カラムの種類には、主にイオン交換、逆相、順相、サイズ排除(ゲル濾過)そして光学異性体分離カラムがある。イオン交換カラムには、陽イオン、陰イオン、両イオン型の3つのタイプがある。これらは、金属イオン、無機酸、アミノ酸、ペプチドやタンパク質の分析・分取に用いられる。逆相カラムは、最も種類が多く様々なカラムが開発されている。特に低分子の分析に用いられることが多く神経伝達物質、誘導化したアミノ酸、医薬品、ホルモン、ペプチドの分析などに用いられている。順相カラムは、有機合成した化合物の分離に多く用いられる。サイズ排除カラムは、タンパク質を分子量ごとに分画または会合体としてモノマー、ダイマー、トリマーの分析・分取に用いられる。光学異性体分離カラムはアミノ酸のD体とL体や医薬品などの光学異性体化合物の分析・分取に用いられている。
[[ファイル:HPLC 図2.jpg|thumb|300px|right|図2. (A) OPA化のアミノ基の反応. (B) 実験に用いたHPLCのフローチャート. (C)と(D)は、 OPA化アミノ酸のクロマトグラム.  (C) 0.5~20pmol/uLのスタンダード. (D)脳組織をホモジネートしたサンプル.。<br />[分析条件] 装置:Shimadzu SCL-10Avpシステム, オートサンプラー:GILSON 232XLシステム,カラム:COSMOSIL 5C18-MS-II(4.6ID×150mm), 流速:0.8ml/min, カラム温度:36℃, 励起波長:340nm, 蛍光波長:445nm.]]
#検出器
#検出器
#:&ensp;様々な検出器が開発されておりUV検出器、蛍光検出器、電気化学検出器、質量分析器、蒸発光散乱検出器などが用いられている。HPLCにおいて、最も汎用的な検出器はUV 検出器であり、次いで蛍光検出器、電気化学検出器の順である。
#:&ensp;様々な検出器が開発されておりUV検出器、蛍光検出器、電気化学検出器、質量分析器、蒸発光散乱検出器などが用いられている。HPLCにおいて、最も汎用的な検出器はUV 検出器であり、次いで蛍光検出器、電気化学検出器の順である。
#データ処理ソフトウェア
#データ処理ソフトウェア
#:検出されたデータを取得し、そこからピークの検出・解析をおこなう。各HPLCメーカーから装置の制御機能を合わせ持った製品が出されている。様々なメーカーの装置と接続可能な汎用ソフトウェアには、 EZChrom (Agilent)、 Empower (Waters)、 PowerChrom (eDAQ Pty Ltd)、 Unicorn(GE)などがある。[[ファイル:HPLC 図3.jpg|thumb|300px|right|図 3.  (A) HPLCのフローチャート,  (B) 2pmol/μLのスタンダード,  (C) 脳組織ホモジネートのサンプル.<br />[分析条件] 装置:ポンプHITACHI L-2130,検出器:EICOM L7480とGL Sciences GL-7453A,カラムオーブン:EICOM CTC-100,デガッサー:EICOM DG-100,オートサンプラー:EICOM,ソフトウェア:PowerChrom EPC-500,トラップカラム:COSMOSIL Guard 5C18-MS-II(4.6ID×10mm), 分離用カラム:COSMOSIL 5C18-MS-II(4.6ID×150mm), 流速:1.1ml/min, カラム温度:36℃, 励起波長:340nm, 蛍光波長:440nm.
#:検出されたデータを取得し、そこからピークの検出・解析をおこなう。各HPLCメーカーから装置の制御機能を合わせ持った製品が出されている。様々なメーカーの装置と接続可能な汎用ソフトウェアには、 EZChrom (Agilent)、 Empower (Waters)、 PowerChrom (eDAQ Pty Ltd)、 Unicorn(GE)などがある。
]]
===測定方法===
===測定方法===
#プレカラム法とポストカラム法
#プレカラム法とポストカラム法
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 HPLCの分析では、検出器の選択、カラムの選択、高感度にするための誘導化、移動相の種類、分離条件(2つの移動相の割合を変えて分離する)、などを組み合わせて目的物質の分析法を確立する。
 HPLCの分析では、検出器の選択、カラムの選択、高感度にするための誘導化、移動相の種類、分離条件(2つの移動相の割合を変えて分離する)、などを組み合わせて目的物質の分析法を確立する。
===応用例(スイッチングバルブ法)===
===応用例(スイッチングバルブ法)===
&ensp;これまでHPLCの一般的な装置構成について述べてきた。ここでは、装置構成の応用例としてスイッチングバルブ装置を用いたHPLCのシステムについて述べる。<br />図2-AのHPLCシステムではアイソクラティック法にスイッチングバルブ装置を組んでいる(構成:移動相2液、ポンプ2台、スイッチングバルブ1台、トラップカラム1本、分離用カラム2本、検出器2台)。スイッチングバルブとは、特定な時間を設定してその時間になると流路を切り替えることができる装置のことである。トラップカラムは、サンプル内の物質を一時的に保持するための長さが短いカラム(1cm程度)である。インジェクション前の流路は、移動相AはポンプA &rarr; インジェクター &rarr; トラップカラム &rarr; カラムA &rarr; 検出器Aへ流れている。このとき移動相Bは、ポンプB &rarr; カラムB &rarr; 検出器Bを流れており、トラップカラムには流れない。インジェクション後スイッチングバルブ設定時間にバルブが作動するとトラップカラムに移動相Bが流れる。このシステムで重要な点は、スイッチングバルブ設定時間である。設定時間を調節することによりカラムBで検出する物質の溶出時間を変えることができる。また目的物質の溶出が移動相の変わり目になると正確な分析ができなくなるため注意が必要である。溶出時間の速いものと遅いものを同時に分析したい場合、スイッチングバルブ法は1本のカラムで分析する場合と比較し約半分の時間でかつ溶出時間の遅い物質を感度良く分析できる利点がある。
&ensp;これまでHPLCの一般的な装置構成について述べてきた。ここでは、装置構成の応用例としてスイッチングバルブ装置を用いたHPLCのシステムについて述べる。
[[ファイル:HPLC 図3.jpg|thumb|300px|right|図 3.  (A) HPLCのフローチャート,  (B) 2pmol/μLのスタンダード,  (C) 脳組織ホモジネートのサンプル.<br />[分析条件] 装置:ポンプHITACHI L-2130,検出器:EICOM L7480とGL Sciences GL-7453A,カラムオーブン:EICOM CTC-100,デガッサー:EICOM DG-100,オートサンプラー:EICOM,ソフトウェア:PowerChrom EPC-500,トラップカラム:COSMOSIL Guard 5C18-MS-II(4.6ID×10mm), 分離用カラム:COSMOSIL 5C18-MS-II(4.6ID×150mm), 流速:1.1ml/min, カラム温度:36℃, 励起波長:340nm, 蛍光波長:440nm.
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<br />図2-AのHPLCシステムではアイソクラティック法にスイッチングバルブ装置を組んでいる(構成:移動相2液、ポンプ2台、スイッチングバルブ1台、トラップカラム1本、分離用カラム2本、検出器2台)。スイッチングバルブとは、特定な時間を設定してその時間になると流路を切り替えることができる装置のことである。トラップカラムは、サンプル内の物質を一時的に保持するための長さが短いカラム(1cm程度)である。インジェクション前の流路は、移動相AはポンプA &rarr; インジェクター &rarr; トラップカラム &rarr; カラムA &rarr; 検出器Aへ流れている。このとき移動相Bは、ポンプB &rarr; カラムB &rarr; 検出器Bを流れており、トラップカラムには流れない。インジェクション後スイッチングバルブ設定時間にバルブが作動するとトラップカラムに移動相Bが流れる。このシステムで重要な点は、スイッチングバルブ設定時間である。設定時間を調節することによりカラムBで検出する物質の溶出時間を変えることができる。また目的物質の溶出が移動相の変わり目になると正確な分析ができなくなるため注意が必要である。溶出時間の速いものと遅いものを同時に分析したい場合、スイッチングバルブ法は1本のカラムで分析する場合と比較し約半分の時間でかつ溶出時間の遅い物質を感度良く分析できる利点がある。


==脳科学への応用==
==脳科学への応用==


===神経伝達アミノ酸の分析(蛍光誘導化法)===
===神経伝達アミノ酸の分析(蛍光誘導化法)===
 蛍光誘導化法で用いられる誘導化試薬は、メーカーから様々な種類が出されている。その中でも本稿では非常に安価なOPA法について述べる。[[ファイル:HPLC 図4.jpg|thumb|300px|right|図 4. (A) 標準物質の分析; 10-100 pg の範囲で定量性がある。(B) マウス線条体抽出物の分析; ドーパミン作動性ニューロンが多いことが分かる。(C) マウス小脳抽出物の分析; 線条体と全く異なる溶出パターンをすることが分かる。<br />[分析条件] 装置:エイコム社製システム(デガッサー:DG-300, ポンプ:EP-300, カラムオーブン:ATC-300, 検出器:ECD-300, EICOM), カラム : EICOMPAK SC-50DS (Φ3.0 x 150 mm, EICOM), 移動相: 83% 0.1 M 酢酸-クエン酸緩衝液(pH 3.5)/17% メタノール(190 mg/L SOS, 5 mg/L EDTA•2Na を含む), 流速:0.5 mL/min, 作用電極: グラファイト電極(WE-3G, EICOM), 印加電圧:+750 mV vs. Ag/AgCl(RE-100, EICOM), 注入量:10 μL, 温度: 25℃,<br />
 蛍光誘導化法で用いられる誘導化試薬は、メーカーから様々な種類が出されている。その中でも本稿では非常に安価なOPA法について述べる。
MHPG:3-Methoxy-4-hydroxyphenylglycol, NA:Noradrenaline, AD:Adrenaline, DOPAC:3,4-dihydroxy-phenylacetic acid, NM:Normethanephrine, DA:Dopamine, 5-HIAA:5-Hydroxyindoleacetic acid, ISO:Isoproterenol, HVA:Homovanillic acid, 3-MT:3-Methoxytyramine, 5-HT:5-Hydroxytryptamine
]]
#蛍光検出の原理
#蛍光検出の原理
#:&ensp;OPA法は、オルトフタルアルデヒド(o-Phthalaldehyde, OPA)、メルカプトエタノール、アミノ酸由来のアミノ基が環化反応し蛍光を発する物質になり、分析を可能にする方法である(図2-A)。OPA誘導体は、励起波長350±10 nm,蛍光波長450±10 nm程度で蛍光検出することができる。一般に誘導化する場合は過剰の試薬を加えなければならず、残った蛍光誘導化試薬が蛍光を発して分析する物質の妨害となり分析が困難になることがある。その点OPAは、環化反応しないと蛍光を発しないため残存する誘導化試薬を気にする必要がないのが利点である。一方OPA試薬の欠点として、蛍光の持続時間が短いこと、第2級アミンと反応しないためプロリンやハイドロキシプロリンの検出はできないことがあげられる。
#:&ensp;OPA法は、オルトフタルアルデヒド(o-Phthalaldehyde, OPA)、メルカプトエタノール、アミノ酸由来のアミノ基が環化反応し蛍光を発する物質になり、分析を可能にする方法である(図2-A)。OPA誘導体は、励起波長350±10 nm,蛍光波長450±10 nm程度で蛍光検出することができる。一般に誘導化する場合は過剰の試薬を加えなければならず、残った蛍光誘導化試薬が蛍光を発して分析する物質の妨害となり分析が困難になることがある。その点OPAは、環化反応しないと蛍光を発しないため残存する誘導化試薬を気にする必要がないのが利点である。一方OPA試薬の欠点として、蛍光の持続時間が短いこと、第2級アミンと反応しないためプロリンやハイドロキシプロリンの検出はできないことがあげられる。
#測定例1 (グラジエント法)
#測定例1 (グラジエント法)
#:&ensp;脳組織ホモジネートを用いて、興奮性アミノ酸であるグルタミン酸と抑制性アミノ酸であるGABAを測定した例を述べる。<br />図2-Bに示したHPLCの構成で、グラジエント法を用いて分析した。移動相は2種類あり、移動相Aの組成は、100 mM リン酸緩衝液(pH 5.6)、移動相Bの組成は100%アセトニトリルでステップワイズに濃度を変え、25分間で1分析を行った(グラジエントの条件:0 min&rarr;1 min 15%, 1 min&rarr;4.5 min 16%,  4.5 min&rarr;8 min 21%, 8 min&rarr;11 min 24%, 11 min&rarr;13.5 min 31%, 13.5 min&rarr;16.5 min 35%, 16.5 min&rarr;25 min 15%)。蛍光誘導化試薬は、OPA試薬7.5 mgをメタノール300 μLで溶解した後、2メルカプトエタノールを7.5μLを加え、さらにミリQ水1200 μLを加えた。100 mMホウ酸緩衝液(pH 10.0)は、Na<sub>4</sub>B<sub>4</sub>O<sub>7</sub>・10H<sub>2</sub>O 1.905 gをミリQ水50 mLに溶解し調製した。<br />試料の前処理として、摘出した脳組織にすみやかに5〜10倍量の0.2 M PCA(100 μM EDTA・2Na含有)を加え、超音波で30秒間ホモジナイズした。次に、除タンパクを完全にするため氷中で30分間放置した後、4 ℃で10,000 rpm &times; 15分間遠心し、上清を採取した。上清は20倍に希釈し、15 μLを HPLCサンプルとした。サンプルは、オートサンプラー内にてOPA試薬と反応し、HPLCで分析した。すなわち蛍光誘導化のため反応型のオートサンプラーのサンプルラックを12 ℃に冷却、蛍光誘導化試薬15 μL、サンプル15 μL、100 mM ホウ酸緩衝液(pH 10.0)20 μLを加え30 ℃で2分間インキュベートし、誘導体化されたサンプル35 μLをHPLCにインジェクションした。<br />分析例として、図2に0.5~20 pmol/μLのスタンダード(C)と脳組織をホモジネートしたサンプル(D)を分析したクロマトグラフを示した。定量限界は、0.5 pmol/μLであった。このクロマト条件においては、脳内のグルタミン酸とGABAの濃度は充分な測定感度範囲に入り、その他の生体アミノ酸(アスパラギン酸、セリン、アスパラギン、アルギニン、グリシン、アラニン、タウリン)も同時一斉分析を行うことが可能である。
#:&ensp;脳組織ホモジネートを用いて、興奮性アミノ酸であるグルタミン酸と抑制性アミノ酸であるGABAを測定した例を述べる。<br />図2-Bに示したHPLCの構成で、グラジエント法を用いて分析した。移動相は2種類あり、移動相Aの組成は、100 mM リン酸緩衝液(pH 5.6)、移動相Bの組成は100%アセトニトリルでステップワイズに濃度を変え、25分間で1分析を行った(グラジエントの条件:0 min&rarr;1 min 15%, 1 min&rarr;4.5 min 16%,  4.5 min&rarr;8 min 21%, 8 min&rarr;11 min 24%, 11 min&rarr;13.5 min 31%, 13.5 min&rarr;16.5 min 35%, 16.5 min&rarr;25 min 15%)。蛍光誘導化試薬は、OPA試薬7.5 mgをメタノール300 μLで溶解した後、2メルカプトエタノールを7.5μLを加え、さらにミリQ水1200 μLを加えた。100 mMホウ酸緩衝液(pH 10.0)は、Na<sub>4</sub>B<sub>4</sub>O<sub>7</sub>・10H<sub>2</sub>O 1.905 gをミリQ水50 mLに溶解し調製した。<br />試料の前処理として、摘出した脳組織にすみやかに5〜10倍量の0.2 M PCA(100 μM EDTA・2Na含有)を加え、超音波で30秒間ホモジナイズした。次に、除タンパクを完全にするため氷中で30分間放置した後、4 ℃で10,000 rpm &times; 15分間遠心し、上清を採取した。上清は20倍に希釈し、15 μLを HPLCサンプルとした。サンプルは、オートサンプラー内にてOPA試薬と反応し、HPLCで分析した。すなわち蛍光誘導化のため反応型のオートサンプラーのサンプルラックを12 ℃に冷却、蛍光誘導化試薬15 μL、サンプル15 μL、100 mM ホウ酸緩衝液(pH 10.0)20 μLを加え30 ℃で2分間インキュベートし、誘導体化されたサンプル35 μLをHPLCにインジェクションした。<br />分析例として、図2に0.5~20 pmol/μLのスタンダード(C)と脳組織をホモジネートしたサンプル(D)を分析したクロマトグラフを示した。定量限界は、0.5 pmol/μLであった。このクロマト条件においては、脳内のグルタミン酸とGABAの濃度は充分な測定感度範囲に入り、その他の生体アミノ酸(アスパラギン酸、セリン、アスパラギン、アルギニン、グリシン、アラニン、タウリン)も同時一斉分析を行うことが可能である。
[[ファイル:HPLC 図4.jpg|thumb|300px|right|図 4. (A) 標準物質の分析; 10-100 pg の範囲で定量性がある。(B) マウス線条体抽出物の分析; ドーパミン作動性ニューロンが多いことが分かる。(C) マウス小脳抽出物の分析; 線条体と全く異なる溶出パターンをすることが分かる。<br />[分析条件] 装置:エイコム社製システム(デガッサー:DG-300, ポンプ:EP-300, カラムオーブン:ATC-300, 検出器:ECD-300, EICOM), カラム : EICOMPAK SC-50DS (Φ3.0 x 150 mm, EICOM), 移動相: 83% 0.1 M 酢酸-クエン酸緩衝液(pH 3.5)/17% メタノール(190 mg/L SOS, 5 mg/L EDTA•2Na を含む), 流速:0.5 mL/min, 作用電極: グラファイト電極(WE-3G, EICOM), 印加電圧:+750 mV vs. Ag/AgCl(RE-100, EICOM), 注入量:10 μL, 温度: 25℃,<br />
MHPG:3-Methoxy-4-hydroxyphenylglycol, NA:Noradrenaline, AD:Adrenaline, DOPAC:3,4-dihydroxy-phenylacetic acid, NM:Normethanephrine, DA:Dopamine, 5-HIAA:5-Hydroxyindoleacetic acid, ISO:Isoproterenol, HVA:Homovanillic acid, 3-MT:3-Methoxytyramine, 5-HT:5-Hydroxytryptamine
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#測定例2 (スイッチングバルブ法)
#測定例2 (スイッチングバルブ法)
#:&ensp;図3-Aに示したHPLCの構成で、アイソクラティック法を用いて脳組織のホモジネートを分析した。<br />移動相は2種類あり、移動相Aにクエン酸−リン酸緩衝液 pH 5.8, 12%アセトニトリル、移動相Bにクエン酸−リン酸緩衝液 pH 6.2, 25%アセトニトリルを用い15分間で1分析を行った。スイッチングバルブは、インジェクションから1分30秒で切り替わり、12分後に元の流路に戻るセッティングをした。蛍光誘導化試薬は、OPA試薬5 mgをメタノール200 μLで溶解した後、2メルカプトエタノール5 μL、0.1 M Na<sub>2</sub>CO<sub>3</sub>溶液800 μL加え、調製した。試料の前処理は、測定例(1)と同様に行い、上清を1200倍に希釈して15 μLをHPLCサンプルにした。蛍光誘導化のため、オートサンプラーのサンプルラックを12 ℃に冷却、蛍光誘導化試薬15 μL、サンプル15 μLを加え30 ℃で2分間インキュベートし、誘導体化されたサンプル10 μLをインジェクションした。
#:&ensp;図3-Aに示したHPLCの構成で、アイソクラティック法を用いて脳組織のホモジネートを分析した。<br />移動相は2種類あり、移動相Aにクエン酸−リン酸緩衝液 pH 5.8, 12%アセトニトリル、移動相Bにクエン酸−リン酸緩衝液 pH 6.2, 25%アセトニトリルを用い15分間で1分析を行った。スイッチングバルブは、インジェクションから1分30秒で切り替わり、12分後に元の流路に戻るセッティングをした。蛍光誘導化試薬は、OPA試薬5 mgをメタノール200 μLで溶解した後、2メルカプトエタノール5 μL、0.1 M Na<sub>2</sub>CO<sub>3</sub>溶液800 μL加え、調製した。試料の前処理は、測定例(1)と同様に行い、上清を1200倍に希釈して15 μLをHPLCサンプルにした。蛍光誘導化のため、オートサンプラーのサンプルラックを12 ℃に冷却、蛍光誘導化試薬15 μL、サンプル15 μLを加え30 ℃で2分間インキュベートし、誘導体化されたサンプル10 μLをインジェクションした。
===神経伝達モノアミンとその代謝物、およびアセチルコリンの分析(電気化学検出法)===
===神経伝達モノアミンとその代謝物、およびアセチルコリンの分析(電気化学検出法)===
#電気化学検出の原理
#電気化学検出の原理
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