67
回編集
Toshiyukiotsuka (トーク | 投稿記録) 細 (ページの作成:「英語名:basic helix-loop-helix (bHLH) transcription factor basic helix-loop-helix (bHLH) 因子とは、DNA結合ドメインであるbasic領域と蛋白質相...」) |
Toshiyukiotsuka (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
||
59行目: | 59行目: | ||
*The HUGO Gene Nomenclature Committee (HGNC) provides a list of genes in the bHLH family (http://www.genenames.org/genefamily/bhlh.php) | *The HUGO Gene Nomenclature Committee (HGNC) provides a list of genes in the bHLH family (http://www.genenames.org/genefamily/bhlh.php) | ||
==機能== | |||
===ニューロン分化・サブタイプ決定=== | |||
Activator-typeのbHLH因子であるAscl1 (Mash1) (Drosophila achaete-scute complexのホモログ), Neurod, Neurogenin (Neurog) (Drosophila atonalのホモログ)などは、他のbHLH因子であるコファクターTcf3 (E12/E47) とヘテロダイマーを形成し、ニューロン特異的遺伝子のプロモーター領域のE box (CANNTG) に結合してニューロン分化を促進する。この過程においては細胞周期と神経分化の同調的制御機構が働いており、サイクリン依存性キナーゼ (cyclin dependent kinase; CDK) の関与が示されている[7,8]。 | |||
bHLH因子はまた、脳の領域化及びニューロンサブタイプの決定にも関与する。Neurog1, Neurog2は終脳背側部に発現してグルタミン酸作動性ニューロンへの分化を誘導する一方、Ascl1 (Mash1) は終脳腹側部に強く発現してGABA作動性ニューロンへの分化を促進する[9,10]。末梢神経系においても、Neurog1, Neurog2は感覚神経への分化を、Ascl1 (Mash1) は自律神経への分化をそれぞれ誘導する[11]。更に後根神経節において、Neurog2は早期に産生されるTrkB及びTrkC陽性ニューロンの分化に、Neurog1は後期に産生されるTrkA陽性ニューロンの分化に必須である[12]。小脳の発生において、Math1は 菱脳唇rhombic lipの神経上皮に発現してグルタミン酸作動性ニューロンへの分化を誘導する一方、Ptf1aは小脳脳室帯に発現してGABA作動性ニューロンの産生を促進する[13]。また、Nhlh1 (Nscl1), Nhlh2 (Nscl2)はGnRH (gonadotropin releasing hormone)-1ニューロンへの運命決定に[14]、Hand2は交感神経系のノルアドレナリン作動性ニューロンへの運命決定に働く[15]。 | |||
bHLH因子が協調的に働くことにより、多様な細胞運命決定に働くことが知られている。Ascl1 (Mash1) 及びHes関連因子である Heslikeは、間脳及び中脳腹側において単独ではGABA作動性ニューロンの分化を誘導できないが、共発現し協調的に働くことによりGABA作動性ニューロンの分化を誘導する[16]。Olig1, Olig2は単独ではオリゴデンドロサイトの分化を誘導するが、Olig2とNeurog2が共発現すると運動ニューロンへの分化を促進する[17,18]。こうしてbHLH因子はその組み合わせによって異なる種類の細胞を産生し、細胞の多様性を生み出している。 | |||
===ニューロン分化抑制・神経幹細胞維持=== | |||
repressor-typeのbHLH因子であるHESファミリー (Drosophila hairy, Enhancer of splitのホモログ; HES1-7) の中で、Hes1, Hes3, Hes5は発生過程における神経幹細胞に発現し、ノッチ (Notch) シグナルのeffectorとして働き、神経分化を抑制する[2,19]。Hes1はHes1同士のホモダイマーあるいはHeyとのヘテロダイマーを形成し、神経分化促進因子 (activator-typeのbHLH因子) のプロモーター領域などに存在するN box (CACNAG) またはclass C site (CACGCG) に結合し、コリプレッサー (TLE/Grg) と複合体を形成してヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase; HDAC)をリクルートし転写を抑制する[20,21]。また、神経分化促進因子と非機能性へテロダイマーを形成するほか、神経分化促進因子のコファクターであるTcf3 (E12/E47) を捕捉することにより機能的にも阻害する[22]。こうして神経幹細胞からニューロンへの分化を抑制し、神経幹細胞の未分化性の維持に働く[23]。 | |||
Hes関連因子であるHeyもrepressor-typeのbHLH因子であり、Hey1, Hey2も同様に発生過程における神経幹細胞に発現し、神経分化抑制活性を有する[24]。HLH因子であるIdファミリーはbasic領域を欠くためDNA結合能を有しないが、Hesと同様に神経分化促進因子と非機能性へテロダイマーを形成することにより神経分化を抑制する[25]。 | |||
===グリア分化=== | |||
Neurog1はニューロン分化を促進する一方で、グリア分化を抑制する活性を有している[26]。Neurog1はCBP-Smad1複合体を捕捉して、この複合体がグリア特異的遺伝子のプロモーターに結合するのを抑え、ニューロン特異的遺伝子の活性化に利用することで、ニューロン分化の促進と同時にグリア分化を抑制している。逆に神経分化促進因子 (Ascl1 (Mash1), Neurod4 (Math3), Neurog2) の発現を抑えると、ニューロン分化が抑制されグリア分化が促進される[27,28]。抑制性転写因子であるHes1, Hes5を発生後期に過剰発現させると、アストロサイト及び網膜のミュラーグリア産生が促進されるが、これはHesによる神経分化促進因子の抑制が一因と考えられる[23,29,30]。 | |||
Olig1, Olig2はShhの下流で働き、オリゴデンドロサイトの分化を誘導する。終脳におけるOlig1の強制発現、脊髄におけるOlig2, Nkx2.2の強制発現によりオリゴデンドロサイトの分化が促進される[31,32]。Tal1 (Scl) は脊髄のp2ドメインにおいて、Olig2と拮抗することによりオリゴデンドロサイトの分化を抑制し、アストロサイトへの分化を誘導する[33]。 | |||
===時計遺伝子・細胞周期制御=== | |||
Myc/Max/Madはネットワークを形成して、細胞増殖・分化・細胞死(アポトーシス)・癌化を制御している[34]。MycはMaxとヘテロダイマーを形成して標的遺伝子の転写を活性化し、細胞周期制御(増殖促進)・分化抑制・アポトーシス誘導などに関与する。MaxはまたMadともヘテロダイマーを形成し、MYC/MAXと共通の標的DNAに競合的に結合することにより、MYC/MAXの機能を阻害する。 | |||
視床下部の視交叉上核に発現するClockとArntl (Bmal) はヘテロダイマーを形成し、時計遺伝子として概日リズムを制御している[35,36]。CLOCK/ARNTLがPer (period), Cry (cryptochrome) のプロモーター領域に存在するE boxに結合し転写を活性化、翻訳されたPER, CRYはヘテロダイマーを形成する。そのPER/CRY複合体が核に移行し、CLOCK/BMAL複合体に結合してその転写活性を阻害するというネガティブフィードバックループにより、24時間周期の概日リズムが形成・維持される。 | |||
==参考文献== |
回編集