「依存症」の版間の差分

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=== 依存症におけるGIRKチャネルと報酬系の関連  ===
=== 依存症におけるGIRKチャネルと報酬系の関連  ===


  GIRKチャネルは依存性物質のシグナル伝達において重要な役割を果たしている。様々な[[Gタンパク質共役型受容体|G<sub>i/o</sub>タンパク質共役型受容体]]に[[神経伝達物質]]が作用することによって[[GTP結合タンパク質|G<sub>i/o</sub>タンパク質]]が活性化され、Gタンパク質αサブユニットから遊離したGタンパク質βγサブユニットがGIRKチャネルを直接開口する<ref><pubmed>10997585</pubmed></ref><ref><pubmed>17168757</pubmed></ref>。また、エタノールはGIRKチャネルを直接開口することも見出されている<ref name="ref8"><pubmed>10570486</pubmed></ref><ref><pubmed>10570485</pubmed></ref>。GIRKチャネルの開口によって細胞膜は[[過分極]]化し、神経細胞の興奮性を調節する。[[wikipedia:JA:哺乳類|哺乳類]]において4つのGIRKチャネルサブユニットが知られている<ref><pubmed>8355805</pubmed></ref><ref><pubmed>7877685</pubmed></ref><ref><pubmed>7499385</pubmed></ref>。GIRK2サブユニットに1つのアミノ酸変異([[wikipedia:JA:カリウム|カリウム]]イオンだけでなく[[wikipedia:JA:ナトリウム|ナトリウム]]イオンも透過させ、Gタンパク質制御も消失している)を持つウィーバーミュータントマウスでは、[[小脳顆粒細胞]]や[[黒質]]ドーパミン神経細胞、[[橋核]]神経細胞における[[神経細胞死]]が生じており、モルヒネおよびエタノールによる鎮痛が減弱している<ref name="ref8" /><ref><pubmed>12354627</pubmed></ref>。したがって、GIRKチャネルがモルヒネやエタノールの鎮痛効果において決定的な役割を果たすと考えられる。さらに、GIRKチャネル欠損マウスでは、コカインの自己投与が消失することも示されている<ref><pubmed>12637950</pubmed></ref>。また、開腹手術の患者を対象にした研究では、GIRK2サブユニットのA1032G多型がA/Aタイプの場合、脳内のGIRK2サブユニットの[[wikipedia:JA:mRNA|mRNA]]mRNA量が減少することによって、GIRKサブユニットタンパク質量も減少して、オピオイド感受性が低下するために、術後の疼痛に対して必要なオピオイド投与回数が増加している可能性が示唆されている<ref><pubmed>19756153</pubmed></ref>。  
  GIRKチャネルは依存性物質のシグナル伝達において重要な役割を果たしている。様々な[[Gタンパク質共役型受容体|G<sub>i/o</sub>タンパク質共役型受容体]]に[[神経伝達物質]]が作用することによって[[GTP結合タンパク質|G<sub>i/o</sub>タンパク質]]が活性化され、Gタンパク質αサブユニットから遊離したGタンパク質βγサブユニットがGIRKチャネルを直接開口する<ref><pubmed>10997585</pubmed></ref><ref><pubmed>17168757</pubmed></ref>。また、エタノールはGIRKチャネルを直接開口することも見出されている<ref name="ref8"><pubmed>10570486</pubmed></ref><ref><pubmed>10570485</pubmed></ref>。GIRKチャネルの開口によって[[細胞膜]]は[[過分極]]化し、神経細胞の興奮性を調節する。[[wikipedia:JA:哺乳類|哺乳類]]において4つのGIRKチャネルサブユニットが知られている<ref><pubmed>8355805</pubmed></ref><ref><pubmed>7877685</pubmed></ref><ref><pubmed>7499385</pubmed></ref>。GIRK2サブユニットに1つのアミノ酸変異([[wikipedia:JA:カリウム|カリウム]]イオンだけでなく[[wikipedia:JA:ナトリウム|ナトリウム]]イオンも透過させ、Gタンパク質制御も消失している)を持つウィーバーミュータントマウスでは、[[小脳顆粒細胞]]や[[黒質]]ドーパミン神経細胞、[[橋核]]神経細胞における[[神経細胞死]]が生じており、モルヒネおよびエタノールによる鎮痛が減弱している<ref name="ref8" /><ref><pubmed>12354627</pubmed></ref>。したがって、GIRKチャネルがモルヒネやエタノールの鎮痛効果において決定的な役割を果たすと考えられる。さらに、GIRKチャネル欠損マウスでは、コカインの自己投与が消失することも示されている<ref><pubmed>12637950</pubmed></ref>。また、開腹手術の患者を対象にした研究では、GIRK2サブユニットのA1032G多型がA/Aタイプの場合、脳内のGIRK2サブユニットの[[wikipedia:JA:mRNA|mRNA]]mRNA量が減少することによって、GIRKサブユニットタンパク質量も減少して、オピオイド感受性が低下するために、術後の疼痛に対して必要なオピオイド投与回数が増加している可能性が示唆されている<ref><pubmed>19756153</pubmed></ref>。


=== 各依存性物質の脳神経画像研究  ===
=== 各依存性物質の脳神経画像研究  ===

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