「カリウムチャネル」の版間の差分

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=== A電流  ===
=== A電流  ===


幅広い周波数で発火することが出来る神経細胞の電気的特性は、脳内の情報処理・情報伝達に極めて役割を果たしている。高周波発火神経細胞は100 Hz程度で発火することができ、成熟した聴神経細胞に至っては1000 Hzで発火することができる。そういった高周波数で神経細胞が発火するためには活動電位持続時間が十分短く、且つイオンチャネルの不応期からの素早い回復が必要である。A電流や''I''<sub>to</sub>とよばれるカリウムチャネル電流は活動電位中に素早く活性化されその後不活性化され、一過性の外向き電流を流し、活動電位を短く保つ役割をもつ。活動電位後 A電流は一過的に不活性化されているが、他のカリウムチャネルの活性による過分極によって不活性化から回復し、次の活動電位中に再び活性化する。<br>また、A電流が不活性化を受ける膜電位の範囲に静止膜電位が入っており、この電流は静止膜電位において一部不活性化を受けている。このことにより、静止膜電位付近の僅かな膜電位変化でもこの不活性化が制御され、A電流量に影響を及ぼす。例えば、過分極により不活性化が軽減され細胞膜の興奮性が下がる。さらに、PKA、PKC、MAPK、ERKなどによるリン酸化などシグナル伝達による制御もよく知られている。このようなことから、神経細胞において小さな、局所的な膜電位変化であるシナプス入力やGRCRを介した代謝性シグナル伝達がこのA電流を介して、膜の興奮性を制御することが可能である。<br>Kv1.4, Kv3.4, およびKv4サブユニットファミリー(Kv4.1-4.3)を細胞に発現させるとカリウムチャネルはA電流を流す(Kv4電流、図5)。その為、これらのサブユニットが生理的に計測されるA電流を担っていると考えられている。<br>神経細胞においては、細胞体や樹状突起からA電流が計測され、特に遠位樹状突起で大きなA電流が認められる。樹状突起におけるA電流はシナプス入力に対するシナプス後細胞の応答を制御しており、また細胞体から樹状突起への活動電位の逆伝搬現象(backpropagating action potential, bAP)も制御している。Kv4サブファミリーは神経系におけるA電流のαサブユニットの主要な構成要素であり、例えば、CA1錯体神経細胞では、Kv4.2サブユニットが細胞体樹状突起に豊富に発現している(図5)。しかし培養細胞にKv4ファミリーのαサブユニットのみを発現させただけでは、神経細胞で計測されるA電流の電気生理学的な特性を十分再現できない。 神経特異的カルシウムセンサー蛋白質(Neuronal Calcium sensor protein, NCS)のファミリーに属するK channel-interacting proteins (KChiPs)や dipeptidyl peptidase-like proteins(DPPX、とくにDPP6やDPP10)というβサブユニットがKv4チャネルと複合体を形成し、その電流が神経細胞のA電流に類似していることから、その複合体が生理的に機能していると考えられる。<br>A電流の様に、非常に早く活性化され、その後速やかに不活性化される、一過性のカリウム電流であるが不活性化の膜電位がA電流と異なり、さらにカリウムチャネルに作用する薬物に対する感受性も明らかに異なる成分が認められることから、A電流とは分子実体の異なるD電流の存在が報告されている。Dendrotoxin感受性のD電流は、Kv4ではなく、Kv1サブファミリーが分子実体であると考えられる。  
幅広い周波数で発火することが出来る神経細胞の電気的特性は、脳内の情報処理・情報伝達に極めて役割を果たしている。高周波発火神経細胞は100 Hz程度で発火することができ、成熟した聴神経細胞に至っては1000 Hzで発火することができる。そういった高周波数で神経細胞が発火するためには活動電位持続時間が十分短く、且つイオンチャネルの不応期からの素早い回復が必要である。A電流や''I''<sub>to</sub>とよばれるカリウムチャネル電流は活動電位中に素早く活性化されその後不活性化され、一過性の外向き電流を流し、活動電位を短く保つ役割をもつ。活動電位後 A電流は一過的に不活性化されているが、他のカリウムチャネルの活性による過分極によって不活性化から回復し、次の活動電位中に再び活性化する。<br>また、A電流が不活性化を受ける膜電位の範囲に静止膜電位が入っており、この電流は静止膜電位において一部不活性化を受けている。このことにより、静止膜電位付近の僅かな膜電位変化でもこの不活性化が制御され、A電流量に影響を及ぼす。例えば、過分極により不活性化が軽減され細胞膜の興奮性が下がる。さらに、PKA、PKC、MAPK、ERKなどによるリン酸化などシグナル伝達による制御もよく知られている。このようなことから、神経細胞において小さな、局所的な膜電位変化であるシナプス入力やGRCRを介した代謝性シグナル伝達がこのA電流を介して、膜の興奮性を制御することが可能である。<br>Kv1.4, Kv3.4, およびKv4サブユニットファミリー(Kv4.1-4.3)を細胞に発現させるとカリウムチャネルはA電流を流す(図5、Kv4電流)。その為、これらのサブユニットが生理的に計測されるA電流を担っていると考えられている。<br>神経細胞においては、細胞体や樹状突起からA電流が計測され、特に遠位樹状突起で大きなA電流が認められる。樹状突起におけるA電流はシナプス入力に対するシナプス後細胞の応答を制御しており、また細胞体から樹状突起への活動電位の逆伝搬現象(backpropagating action potential, bAP)も制御している。Kv4サブファミリーは神経系におけるA電流のαサブユニットの主要な構成要素であり、例えば、CA1錯体神経細胞では、Kv4.2サブユニットが細胞体樹状突起に豊富に発現している(図5)。しかし培養細胞にKv4ファミリーのαサブユニットのみを発現させただけでは、神経細胞で計測されるA電流の電気生理学的な特性を十分再現できない。 神経特異的カルシウムセンサー蛋白質(Neuronal Calcium sensor protein, NCS)のファミリーに属するK channel-interacting proteins (KChiPs)や dipeptidyl peptidase-like proteins(DPPX、とくにDPP6やDPP10)というβサブユニットがKv4チャネルと複合体を形成し、その電流が神経細胞のA電流に類似していることから、その複合体が生理的に機能していると考えられる。<br>A電流の様に、非常に早く活性化され、その後速やかに不活性化される、一過性のカリウム電流であるが不活性化の膜電位がA電流と異なり、さらにカリウムチャネルに作用する薬物に対する感受性も明らかに異なる成分が認められることから、A電流とは分子実体の異なるD電流の存在が報告されている。Dendrotoxin感受性のD電流は、Kv4ではなく、Kv1サブファミリーが分子実体であると考えられる。  


=== 遅延整流性カリウム電流  ===
=== 遅延整流性カリウム電流  ===
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