「健忘症候群」の版間の差分

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=== 時間の流れからみた記憶の分類  ===
=== 時間の流れからみた記憶の分類  ===


 記憶の分類として、記憶の時間的流れからみた分類と、記憶の内容から見た分類がある。記憶の脳内過程として、[[記銘]](encoding)、[[保持]](storage)、[[想起]](retrieval)が考えられている。時間的流れによる分類では、現在からみたある事象が保持されている長さ、あるいは発症時点を中心として記憶障害の及ぶ時間により分けられる(図3)。[[遠隔記憶]](remote memory)は、数週から何十年にも及ぶ、ほぼ永久的に保持される記憶を指す。[[近時記憶]](recent memory)は数日から数時間、[[即時記憶]](immediate memory)は数十秒以内の記憶を表す。近時記憶は、健常人でも急速に忘却が進む記憶であり、記憶障害の患者ではさらに顕著となる。即時記憶には容量制限があり、数列や無意味な文字列ならばほぼ7個(±2)である。この特性はマジカルナンバー7といわれ<ref name=ref7><pubmed>13310704</pubmed></ref>、記憶障害の患者でも保たれることが多い。心理学では、即時記憶を[[短期記憶]](short-term memory)、近時記憶と遠隔記憶を合わせて[[長期記憶]](long-term memory)と呼ぶ。  
 記憶の分類として、記憶の時間的流れからみた分類と、記憶の内容から見た分類がある。記憶の脳内過程として、[[記銘]](encoding)、[[保持]](storage)、[[想起]](retrieval)が考えられている。時間的流れによる分類では、現在からみたある事象が保持されている長さ、あるいは発症時点を中心として記憶障害の及ぶ時間により分けられる(図3)。[[遠隔記憶]](remote memory)は、数週から何十年にも及ぶ、ほぼ永久的に保持される記憶を指す。[[近時記憶]](recent memory)は数日から数時間、[[即時記憶]](immediate memory)は数十秒以内の記憶を表す。近時記憶は、健常人でも急速に[[忘却]]が進む記憶であり、記憶障害の患者ではさらに顕著となる。即時記憶には容量制限があり、数列や無意味な文字列ならばほぼ7個(±2)である。この特性はマジカルナンバー7といわれ<ref name=ref7><pubmed>13310704</pubmed></ref>、記憶障害の患者でも保たれることが多い。心理学では、即時記憶を[[短期記憶]](short-term memory)、近時記憶と遠隔記憶を合わせて[[長期記憶]](long-term memory)と呼ぶ。  


 [[ワーキングメモリー]]は、時間的区分では短期記憶から近時記憶の一部を含む。われわれは日常生活で、情報を単に保持するのではなく、保持した情報にいろいろな処理を加える。もっとも単純な例は繰り上がりのある計算である。15+17を行う時、まず一の位の5+7=12を行い、十の位への繰り上がりを記憶しつつ十の位の1+1=2を行い、さらにそこに繰り上がった分の1を加え3を導く。あるいは会話などでも、直前の話の内容を記憶しそれに基づいて自分の話を組み立てる。このようにワーキングメモリーとは、記憶と情報処理機能を併せ持った概念である。
 [[ワーキングメモリー]]は、時間的区分では短期記憶から近時記憶の一部を含む。われわれは日常生活で、情報を単に保持するのではなく、保持した情報にいろいろな処理を加える。もっとも単純な例は繰り上がりのある計算である。15+17を行う時、まず一の位の5+7=12を行い、十の位への繰り上がりを記憶しつつ十の位の1+1=2を行い、さらにそこに繰り上がった分の1を加え3を導く。あるいは会話などでも、直前の話の内容を記憶しそれに基づいて自分の話を組み立てる。このようにワーキングメモリーとは、記憶と情報処理機能を併せ持った概念である。

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