「脳弓」の版間の差分

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==交連線維と連合線維==
==交連線維と連合線維==


 脳の白質には左右の脳を結ぶ[[交連線維]]と同側の[[wikipedia:ja:大脳半球|大脳半球]]の異なる領域を繋ぐ'''連合線維'''(れんごうせんい、英: Association fiber)が存在する。'''連合線維'''には隣接する脳回を繋ぐ短い連合線維と異なる領域にまたがる長い連合線維が存在する。脳弓は長い連合線維の代表的なもので海馬体から出て乳頭体などに至る線維束である。
 脳の白質には左右の脳を結ぶ[[交連線維]]と同側の大脳半球の異なる領域を繋ぐ'''連合線維'''(れんごうせんい、英: Association fiber)が存在する。'''連合線維'''には隣接する脳回を繋ぐ短い連合線維と異なる領域にまたがる長い連合線維が存在する。脳弓は長い連合線維の代表的なもので海馬体から出て乳頭体などに至る線維束である。


==脳弓の解剖==
==脳弓の解剖==
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==大脳辺縁系==
==大脳辺縁系==


 脳弓は'''大脳辺縁系'''をつなぐ線維連絡として知られている。大脳辺縁系の領域は文献により異なるが、古くは1937年に、アメリカの神経解剖学者である James Papez が「[[wikipedia:ja:帯状回|帯状回]]が興奮すると、[[wikipedia:ja:海馬体|海馬体]]、[[wikipedia:ja:乳頭体|乳頭体]]、[[wikipedia:ja:視床前核|視床の前核]]を経て帯状回に刺激が戻る」という神経回路を想定し、このモデルは古典的な「'''パペッツの情動回路''' Papez circuit」として知られている。パペッツの理論はマクレーン Paul D.MacLean により、より広い領域に対する、現在の概念に近い「大脳辺縁系」に対して拡張された。現在は辺縁系のうち、[[wikipedia:ja:扁桃体|扁桃体]]と[[wikipedia:ja:海馬体|海馬体]]の機能が解明されてきている。
 脳弓は'''大脳辺縁系'''をつなぐ線維連絡として知られている。大脳辺縁系の領域は文献により異なるが、古くは1937年に、アメリカの神経解剖学者である James Papez が「[[wikipedia:ja:帯状回|帯状回]]が興奮すると、[[wikipedia:ja:海馬体|海馬体]]、乳頭体、視床の前核を経て帯状回に刺激が戻る」という神経回路を想定し、このモデルは古典的な「'''パペッツの情動回路''' Papez circuit」として知られている。パペッツの理論はマクレーン Paul D.MacLean により、より広い領域に対する、現在の概念に近い「大脳辺縁系」に対して拡張された。現在は辺縁系のうち、[[wikipedia:ja:扁桃体|扁桃体]]と[[wikipedia:ja:海馬体|海馬体]]の機能が解明されてきている。


==脳弓下器官 subfornical organ==
==脳弓下器官 subfornical organ==


近年、<span style="color:red">脳弓下器官 (subfornical organ; SFO)</span>に血液や脳脊髄液に代表される体液(細胞外)中のNa(ナトリウム)濃度や細胞内のNa濃度の恒常性を保つためのNa<sub>x</sub>チャンネルというセンサーがあることがわかってきた。Na<sub>x</sub> は中枢神経系では、主に<span style="color:red">脳室周囲器官 (circumventricular organs;CVOs)</span> に発現しており、<span style="color:red">脳弓下器官</span>の他には<span style="color:red">終板脈管器官 (organum vasculosum of the lamina terminalis; OVLT)</span>や<span style="color:red">最後野 (area postrema)</span>にも存在が確認されている。この3領域は他の多くの脳領域と神経結合をつくっており、脳室表面に位置し、血液脳関門が無いことから、体液中の物質の受容や感知に適した場所であると考えられる。
近年、脳弓下器官 (subfornical organ; SFO)に血液や脳脊髄液に代表される体液(細胞外)中のNa(ナトリウム)濃度や細胞内のNa濃度の恒常性を保つためのNa<sub>x</sub>チャンネルというセンサーがあることがわかってきた。Na<sub>x</sub> は中枢神経系では、主に脳室周囲器官 (circumventricular organs;CVOs) に発現しており、脳弓下器官の他には終板脈管器官 (organum vasculosum of the lamina terminalis; OVLT) や最後野 (area postrema) にも存在が確認されている。この3領域は他の多くの脳領域と神経結合をつくっており、脳室表面に位置し、血液脳関門が無いことから、体液中の物質の受容や感知に適した場所であると考えられる。


==関連項目==
==関連項目==
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