「前庭動眼反射」の版間の差分

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 VORはslowの眼球運動である。通常0.1-1Hzの周波数で、刺激をする半規管の面に平行になるように頭を固定し、暗闇の中で回転台(ターンテーブル)を正弦波状に振動させVORを誘発する。赤外線テレビカメラもしくはサーチコイルにより、眼誘発された球運動を記録する。サッケード状の急速眼球運動、瞬きや遅いドリフトを除去し、VORに由来する眼球運動を抽出する。それをもとに、VORの利得(ゲイン)と位相差を算出する。図2にVORの計測の例を示す。前述のごとくVORは頭(台)とは逆方向に動きであるので、回転台と眼球運動のズレを、伝統的に位相の進み(phase advance)と呼ぶ(図2B)。 水平性のVORの動特性は魚(コイ、キンギョ)、ニワトリ、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、サルやヒトで測定されている。ゲインは動物種によってほぼ一定で周波数依存性はあまりない。サルでは1前後、ヒトでは0.8~0.9、ネコは0.6~0.8程度で。他の動物種では0.4~0.6程度である。図2Bにウサギの水平性VORの動特性を示す。垂直性のVORは、測定が水平性のVORに比べて大がかりになるので、あまり調べられていないが、ゲインは一般的に水平性VORのゲインより低い。位相差はゲインが高いところでは0o付近であり、ゲインが下がるにつれて進みが大きくなる(1,3)。  
 VORはslowの眼球運動である。通常0.1-1Hzの周波数で、刺激をする半規管の面に平行になるように頭を固定し、暗闇の中で回転台(ターンテーブル)を正弦波状に振動させVORを誘発する。赤外線テレビカメラもしくはサーチコイルにより、眼誘発された球運動を記録する。サッケード状の急速眼球運動、瞬きや遅いドリフトを除去し、VORに由来する眼球運動を抽出する。それをもとに、VORの利得(ゲイン)と位相差を算出する。図2にVORの計測の例を示す。前述のごとくVORは頭(台)とは逆方向に動きであるので、回転台と眼球運動のズレを、伝統的に位相の進み(phase advance)と呼ぶ(図2B)。 水平性のVORの動特性は魚(コイ、キンギョ)、ニワトリ、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、サルやヒトで測定されている。ゲインは動物種によってほぼ一定で周波数依存性はあまりない。サルでは1前後、ヒトでは0.8~0.9、ネコは0.6~0.8程度で。他の動物種では0.4~0.6程度である。図2Bにウサギの水平性VORの動特性を示す。垂直性のVORは、測定が水平性のVORに比べて大がかりになるので、あまり調べられていないが、ゲインは一般的に水平性VORのゲインより低い。位相差はゲインが高いところでは0o付近であり、ゲインが下がるにつれて進みが大きくなる(1,3)。  


[[Image:図2VOR|331x341px|図2.VORの測定法。(A)回転台の正弦波状回転により生じたアカゲザルの眼球運動。黒線は眼球位置データ。青線は眼球位置データから急速相とドリフトを除去したもの。(6) より改変。(B)VORのゲインと位相差。青線は平均眼球位置とレース。赤線は頭(台)の位置とレース。(C)オランダウサギ(□)と黒眼ウサギ(●)のVORの利得と位相。(3)より改変。]]<br>
[[Image:図2VOR.jpg|200px|図2.VORの測定法。(A)回転台の正弦波状回転により生じたアカゲザルの眼球運動。黒線は眼球位置データ。青線は眼球位置データから急速相とドリフトを除去したもの。(6) より改変。(B)VORのゲインと位相差。青線は平均眼球位置とレース。赤線は頭(台)の位置とレース。(C)オランダウサギ(□)と黒眼ウサギ(●)のVORの利得と位相。(3)より改変。]]


3.VOR のゲインの適応   
3.VOR のゲインの適応   
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 前庭器官の有毛細胞は加齢や疾病により損傷を受けると考えられるが、VORのゲインは一生を通じてあまり変化を受けない。またメニエル病や突発性難聴に伴う前庭の機能障害により生じる前庭性眼振は短期間でかなり回復する。このような過程にも片葉によるVORのゲインの調節のメカニズムが関与していることが想定されている。片葉によりVORが制御されることで、前庭系の眼球反射は生涯を通じて比較的安定して機能すると考えられる。  
 前庭器官の有毛細胞は加齢や疾病により損傷を受けると考えられるが、VORのゲインは一生を通じてあまり変化を受けない。またメニエル病や突発性難聴に伴う前庭の機能障害により生じる前庭性眼振は短期間でかなり回復する。このような過程にも片葉によるVORのゲインの調節のメカニズムが関与していることが想定されている。片葉によりVORが制御されることで、前庭系の眼球反射は生涯を通じて比較的安定して機能すると考えられる。  


[[Image:図4VOR.jpg|350px|図4.温度刺激で誘発される前庭眼振とその発現の神経機構。(頭を60度後屈させ、右の外耳道に温水を注入したときに生じる水平半規管のリンパ流と、それにより生じる水平性VOR。図は頭の後部より中耳を眺めたもの。水平半器管は、この頭位では垂直に位置する。誘発される眼振の緩徐相(VOR)と急速相を右下に示す。]]
[[Image:図4VOR.jpg|350px|図4.温度刺激で誘発される前庭眼振とその発現の神経機構。(頭を60度後屈させ、右の外耳道に温水を注入したときに生じる水平半規管のリンパ流と、それにより生じる水平性VOR。図は頭の後部より中耳を眺めたもの。水平半器管は、この頭位では垂直に位置する。誘発される眼振の緩徐相(VOR)と急速相を右下に示す。]]  


関連項目:視運動性眼振、小脳の神経回路、小脳によるタイミング制御、瞬膜反射の条件付け、小脳プラットフォーム(http://cerebellum.neuroinf.jp)  
関連項目:視運動性眼振、小脳の神経回路、小脳によるタイミング制御、瞬膜反射の条件付け、小脳プラットフォーム(http://cerebellum.neuroinf.jp)  
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