「細胞外マトリックス」の版間の差分

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=== グリア瘢痕  ===
=== グリア瘢痕  ===


中枢神経損傷のとき、損傷を受けた細胞、特にアストロサイトからコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)が分泌され、CSPGを主な構成成分とした高密度の瘢痕組織        であるグリア瘢痕を形成する。これにより、損傷部位はそのまわりの環境から隔てられる。
中枢神経損傷のとき、損傷を受けた細胞、特にアストロサイトからコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)が分泌され、CSPGを主な構成成分とした高密度の瘢痕組織であるグリア瘢痕を形成する。これにより、損傷部位はそのまわりの環境から隔てられる。


=== ペリニューロナルネット  ===
=== ペリニューロナルネット  ===


ペリニューロナルネット(perineuronal net; PN)は、細胞体や樹状突起基部や軸索起始部を取り囲むメッシュ状の構造物である。ペリニューロナルネットは、大脳皮質、海馬、視床、小脳、脳幹、脊髄と中枢神経に広く認められる。PNは、アグレカン、テネイシンR、ニューロカン、バーシカン、ヒアルロン酸、フォスファカン、ブレビカンに加え、リンクタンパク質であるHAPLN1/Cartilage link protein1やHAPLN4/Brain link protien1,2から構成される。ヒアルロン酸、レクティカン、テネイシンは、ネット状の複合体を形成していると考えられている。ペリニューロナルネットの形成は、生後かなり経ってからおこる。げっ歯類ではちょうど臨界期の終わる生後2~5週間である。PNの発達に神経活動が必要である。発達初期の未熟なPNは、神経栄養因子を捕まえる役割をしていると考えられている。一方、発達が進むにつれ、より複雑に密にニューロンを覆うように成熟したPNは、接近する神経線維や成長円錐に対して反発する性質を持つ。つまりPNは、新しくシナプスが作られるのを妨げるバリアの役割をする。またPNは興奮毒性から保護する役割をもつ。  
ペリニューロナルネット(perineuronal net; PN)は、細胞体や樹状突起近位部を取り囲むメッシュ状の構造物である。ペリニューロナルネットは、大脳皮質、海馬、視床、小脳、脳幹、脊髄と中枢神経に広く認められる。PNは、アグレカン、テネイシンR、ニューロカン、バーシカン、ヒアルロン酸、フォスファカン、ブレビカンに加え、リンクタンパク質であるHAPLN1/Cartilage link protein1やHAPLN4/Brain link protien1,2から構成される。ヒアルロン酸、レクティカン、テネイシンは、ネット状の複合体を形成していると考えられている。ペリニューロナルネットの形成は、生後かなり経ってからおこる。げっ歯類ではちょうど臨界期の終わる生後2~5週間である。PNの発達に神経活動が必要である。発達初期の未熟なPNは、神経栄養因子を捕まえる役割をしていると考えられている。一方、発達が進むにつれ、より複雑に密にニューロンを覆うように成熟したPNは、接近する神経線維や成長円錐に対して反発する性質を持つ。つまりPNは、新しくシナプスが作られるのを妨げるバリアの役割をする。またPNは興奮毒性から保護する役割をもつ。  


== ECMの働き  ==
== ECMの働き  ==
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=== 発達とECM  ===
=== 発達とECM  ===


マウスの胎生後期から出生後早期に、未熟型細胞外マトリックスが形成され始める。このとき、ヒアルロン酸、ニューロカン、バーシカンV0、バーシカンV1、テネイシンC、リンクタンパク質であるHAPLN1/Cartilage link protein1からなる。ニューロカンやバーシカンV0/V1の発達は、出生後すぐに発現のピークをむかえ、その後、急激に減少する。テネイシンCは、生後2~3週間で減少するが、上衣層や海馬といった神経新生の盛んな場所では発現が維持される。出生後2週間を過ぎると、これまでの比較的緩い未熟型細胞外マトリックスから より硬いメッシュ状となった成体の細胞外マトリックスに変化していく。成熟型のマトリックスは、初期のマトリックスと相同のバーシカンV2、アグレカン、ブレビカン、フォスファカン、テネイシンR、HAPLN/Bra1、HAPLN/Bra2より成る。  
マウスの胎生後期から出生後早期に、未熟型細胞外マトリックスが形成され始める。このとき、ヒアルロン酸、ニューロカン、バーシカンV0、バーシカンV1、テネイシンC、リンクタンパク質であるHAPLN1/Cartilage link protein1からなる。ニューロカンやバーシカンV0/V1の発達は、出生後すぐに発現のピークをむかえ、その後、急激に減少する。テネイシンCは、生後2~3週間で減少するが、上衣層や海馬といった神経新生の盛んな場所では発現が維持される。出生後2週間を過ぎると、これまでの比較的緩い未熟型細胞外マトリックスからより硬いメッシュ状となった成体の細胞外マトリックスに変化していく。成熟型のマトリックスは、初期のマトリックスと相同のバーシカンV2、アグレカン、ブレビカン、フォスファカン、テネイシンR、HAPLN/Bra1、HAPLN/Bra2より成る。  


==== 神経幹細胞の維持と分化  ====
==== 神経幹細胞の維持と分化  ====
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==== 細胞移動  ====
==== 細胞移動  ====


大脳皮質発達期においてラミニンは、神経細胞の移動による層形成に必要である。ラミニンは、軟膜面に沿って形成された基底膜や脳室帯に沿って発現している。放射状グリア(Radial glial cell; RGC)が軟膜面、脳室面の両極に突起を伸ばし、突起先端の膜表面に発現したインテグリンやジストログリカンを通じてラミニンと接着している。多くの神経細胞がRGCの長く伸びた突起を足場として移動する。軟膜面の基底膜を取り除くと突起は離れ、RGCの生存や皮質の層形成に影響を与える。β1インテグリンやラミニンは、RGCの両極の突起の維持に関わっている。リーリンの発現異常は、小脳、海馬、大脳皮質の重篤な層形成の欠失を引き起こす。テネイシンRは、吻側移動経路において“鎖状移動”(chain migration)する神経芽細胞の遊離を促進し、嗅球内での移動を促進する。Thrombospondin Type-1(TSP-1)は、白質路で認められ、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の移動を促進する。
大脳皮質発達期においてラミニンは、神経細胞の移動による層形成に必要である。ラミニンは、軟膜面に沿って形成された基底膜や脳室帯に沿って発現している。放射状グリア(Radial glial cell; RGC)が軟膜面、脳室面の両極に突起を伸ばし、突起先端の膜表面に発現したインテグリンやジストログリカンを通じてラミニンと接着している。多くの神経細胞がRGCの長く伸びた突起を足場として移動する。軟膜面の基底膜を取り除くと突起は離れ、RGCの生存や皮質の層形成に影響を与える。β1インテグリンやラミニンは、RGCの両極の突起の維持に関わっている。リーリンの発現異常は、小脳、海馬、大脳皮質の重篤な層形成の欠失を引き起こす。テネイシンRは、吻側移動経路において“鎖状移動”(chain migration)する神経芽細胞の遊離を促進し、嗅球内での移動を促進する。Thrombospondin Type-1(TSP-1)は、脳室下帯と吻側移動経路に認められ、神経前駆細胞の移動に関わっていることが報告されている。


==== 軸索伸長への関与  ====
==== 軸索伸長への関与  ====
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