「分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ」の版間の差分

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==ERK==
==ERK==
===ERKとは===
===ERKとは===
 ERKは[[上皮成長因子|EGF]]や血清刺激、[[wikipedia:ja:酸化ストレス|酸化ストレス]]などによって活性化されるMAPKのサブファミリーで、ERKはその関わるシグナル伝達経路の違いからERK1/2, ERK5, ERK7, ERK8に分けられる。[[wikipedia:ja:上皮増殖促進因子受容体|上皮増殖促進因子受容体]] (Epidermal Growth Factor Receptor, EGFR) などのチロシンキナーゼ受容体にリガンドが結合することでシグナルが流れた結果、ERKの活性化ループに存在するTEYモチーフがリン酸化されて活性化する。ERK1/2は分子量が44 kDaのERK1と42 kDaのERK2から成り、アミノ酸配列の一次構造は互いに85%の相同性を有する。上流のMAPKKKはRafやMos、MAPKKはMEK1/2で、ERK1/2はEGF刺激などの結果MEK1/2にリン酸化されて活性化すると、[[wikipedia:Elk1|Elk1]]や[[wikipedia:c-Myc|c-Myc]]などの転写因子、または[[wikipedia:Ribosomal s6 kinase|RSK]]などのリン酸化酵素をリン酸化することで細胞増殖シグナルを活性化する。ERK5は、N端はERK1/2と高い相同性を示すがC末はERK1/2に比べて長く、分子量は115 kDa と他のMAPKの約2倍の大きさである。上流のMAPKKKはMEKK2とMEKK3、MAPKKはMEK5であり、酸化ストレスや血清刺激、EGF刺激によって活性化されるとSap1a, [[wikipedia:c-Myc|c-Myc]], [[wikipedia:Ribosomal s6 kinase|RSK]]などの基質をリン酸化し、ERK1/2同様に細胞増殖シグナルを活性化する。ERK7は他のERK分子同様リン酸化をうけるTEYモチーフを持つが、上流の活性化因子は報告されておらず、自己リン酸化によって活性化されることが知られている<ref><pubmed> 11287416 </pubmed></ref>。他のERK分子と異なりEGF刺激による活性化は起こらないが、血清飢餓刺激によって活性化されることが知られている<ref><pubmed> 9891064 </pubmed></ref>。ERK8は約60 kDaのタンパク質で、ERK7とアミノ酸の一次配列において約69 %の相同性をもつ。ERK8はERK7同様上流のMAPKKが報告されておらず、またEGFや[[wikipedia:ja:12-O-テトラデカノイルホルボール 13-アセタート|PMA]]刺激による活性変化はほぼ見られない。[[wikipedia:ja:過酸化水素|過酸化水素]]や[[wikipedia:ja:浸透圧|浸透圧]]刺激によって活性化されるが、その活性化の生理的な意義は未だよくわかっていない<ref><pubmed> 16336213 </pubmed></ref>。
 ERKは[[上皮成長因子|EGF]]や血清刺激、[[wikipedia:ja:酸化ストレス|酸化ストレス]]などによって活性化されるMAPKのサブファミリーで、ERKはその関わるシグナル伝達経路の違いからERK1/2, ERK5, ERK7, ERK8に分けられる。[[wikipedia:ja:上皮増殖促進因子受容体|上皮増殖促進因子受容体]] (Epidermal Growth Factor Receptor, EGFR) などのチロシンキナーゼ受容体にリガンドが結合することでシグナルが流れた結果、ERKの活性化ループに存在するTEYモチーフがリン酸化されて活性化する。ERK1/2は分子量が44 kDaのERK1と42 kDaのERK2から成り、アミノ酸配列の一次構造は互いに85%の相同性を有する。上流のMAPKKKはRafやMos、MAPKKはMEK1/2で、ERK1/2はEGF刺激などの結果MEK1/2にリン酸化されて活性化すると、[[wikipedia:Elk1|Elk1]]や[[wikipedia:c-Myc|c-Myc]]などの転写因子、または[[wikipedia:Ribosomal s6 kinase|RSK]]などのリン酸化酵素をリン酸化することで細胞増殖シグナルを活性化する。ERK5は、N端はERK1/2と高い相同性を示すがC末はERK1/2に比べて長く、分子量は115 kDa と他のMAPKの約2倍の大きさである。上流のMAPKKKはMEKK2とMEKK3、MAPKKはMEK5であり、酸化ストレスや血清刺激、EGF刺激によって活性化されるとSap1a, [[wikipedia:c-Myc|c-Myc]], [[wikipedia:Ribosomal s6 kinase|RSK]]などの基質をリン酸化し、ERK1/2同様に細胞増殖シグナルを活性化する。ERK7は他のERK分子同様リン酸化をうけるTEYモチーフを持つが、上流の活性化因子は報告されておらず、自己リン酸化によって活性化されることが知られている<ref><pubmed> 11287416 </pubmed></ref>。他のERK分子と異なりEGF刺激による活性化は起こらないが、血清飢餓刺激によって活性化されることが知られている<ref><pubmed> 9891064 </pubmed></ref>。ERK8は約60 kDaのタンパク質で、ERK7とアミノ酸の一次配列において約69 %の相同性をもつ。ERK8はERK7同様上流のMAPKKが報告されておらず、またEGFや[[wikipedia:ja:12-O-テトラデカノイルホルボール 13-アセタート|PMA]]刺激による活性変化はほぼ見られない。[[wikipedia:ja:過酸化水素|過酸化水素]]や[[wikipedia:ja:浸透圧|浸透圧]]刺激によって活性化されるが、その活性化の生理的な意義は未だよくわかっていない<ref><pubmed> 16336213 </pubmed></ref>。
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==p38==
==p38==
===p38とは===
===p38とは===
 p38はα, β, δ, γの4種類の[[wikipedia:Protein isoform|アイソフォーム]]を持つMAPKのサブファミリーで、様々な環境ストレスや[[wikipedia:cytokine|炎症性サイトカイン]]によって活性化される。p38を活性化するほとんどのストレスはJNKも活性化する。上流のMAPKKはMKK3とMKK6であり、MKK3はp38αとp38βのみを活性化させるがMKK6は全てのアイソフォームを活性化させられる。上流のMAPKKKは[[wikipedia:ASK1|ASK1]]や[[wikipedia:MAP3K7|TAK1]]、TAOや[[wikipedia:MAP3K4|MEKK4]]など様々な分子が知られており、それぞれのMAPKKKに応じた活性化刺激によって下流にシグナルが伝えられ、p38が活性化された結果MAPKAPKや[[wikipedia:Activating transcription factor 2|ATF2]]などの様々な基質がリン酸化され、ストレス応答反応が引き起こされる<ref><pubmed> 11274345 </pubmed></ref>。
 p38はα, β, δ, γの4種類の[[wikipedia:Protein isoform|アイソフォーム]]を持つMAPKのサブファミリーで、様々な環境ストレスや[[wikipedia:cytokine|炎症性サイトカイン]]によって活性化される。p38を活性化するほとんどのストレスはJNKも活性化する。上流のMAPKKはMKK3とMKK6であり、MKK3はp38αとp38βのみを活性化させるがMKK6は全てのアイソフォームを活性化させられる。上流のMAPKKKは[[wikipedia:ASK1|ASK1]]や[[wikipedia:MAP3K7|TAK1]]、TAOや[[wikipedia:MAP3K4|MEKK4]]など様々な分子が知られており、それぞれのMAPKKKに応じた活性化刺激によって下流にシグナルが伝えられ、p38が活性化された結果MAPKAPKや[[wikipedia:Activating transcription factor 2|ATF2]]などの様々な基質がリン酸化され、ストレス応答反応が引き起こされる<ref><pubmed> 11274345 </pubmed></ref>。
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==JNK==
==JNK==
===JNKとは===
===JNKとは===
 JNKは哺乳類ではjnk1, jnk2, jnk3の3つの遺伝子を持ち、それぞれに代表的な分子量46 kDaと54 kDaのアイソフォームを含めて複数の[[wikipedia:ja:スプライシング|スプライシング]]フォームが存在する<ref><pubmed> 16054242 </pubmed></ref>。[[wikipedia:ja:シクロヘキシミド|シクロヘキシミド]]を用いたタンパク質合成阻害刺激によって活性化するキナーゼとして同定され、その後温度刺激や酸化ストレス、機械的刺激などの多くのストレス刺激に対して活性化することが明らかになった<ref><pubmed> 7592807 </pubmed></ref>。上流のMAPKKは[[wikipedia:MAP2K4|SEK1]] (MKK4) と[[wikipedia:MAP2K7|MKK7]]、上流のMAPKKKは[[wikipedia:MAP3K1|MEKK1]]、[[wikipedia:MAP3K5|ASK1]]、MLK2やMLK3などであり、それぞれのMAPKKKに応じた活性化刺激によって下流にシグナルが伝達され、JNKが活性化された結果[[wikipedia:c-jun|c-Jun]]や[[wikipedia:Activating transcription factor 2|ATF2]]、[[wikipedia:Elk1|Elk1]]など転写因子を含む様々な基質がリン酸化され、ストレス応答反応が引き起こされる。JNK1とJNK2はユビキタスに発現が見られるが、JNK3は脳、心臓、睾丸において選択的に発現している。
 JNKは哺乳類ではjnk1, jnk2, jnk3の3つの遺伝子を持ち、それぞれに代表的な分子量46 kDaと54 kDaのアイソフォームを含めて複数の[[wikipedia:ja:スプライシング|スプライシング]]フォームが存在する<ref><pubmed> 16054242 </pubmed></ref>。[[wikipedia:ja:シクロヘキシミド|シクロヘキシミド]]を用いたタンパク質合成阻害刺激によって活性化するキナーゼとして同定され、その後温度刺激や酸化ストレス、機械的刺激などの多くのストレス刺激に対して活性化することが明らかになった<ref><pubmed> 7592807 </pubmed></ref>。上流のMAPKKは[[wikipedia:MAP2K4|SEK1]] (MKK4) と[[wikipedia:MAP2K7|MKK7]]、上流のMAPKKKは[[wikipedia:MAP3K1|MEKK1]]、[[wikipedia:MAP3K5|ASK1]]、MLK2やMLK3などであり、それぞれのMAPKKKに応じた活性化刺激によって下流にシグナルが伝達され、JNKが活性化された結果[[wikipedia:c-jun|c-Jun]]や[[wikipedia:Activating transcription factor 2|ATF2]]、[[wikipedia:Elk1|Elk1]]など転写因子を含む様々な基質がリン酸化され、ストレス応答反応が引き起こされる。JNK1とJNK2はユビキタスに発現が見られるが、JNK3は脳、心臓、睾丸において選択的に発現している。
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(執筆者:石川広幸、名黒功、一條秀憲、担当編集委員:柚崎通介)
(執筆者:石川広幸、名黒功、一條秀憲 担当編集委員:柚崎通介)

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