「脂質ラフト」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
31行目: 31行目:
== ラフト局在と機能的意義 ==
== ラフト局在と機能的意義 ==


 ラフトと非ラフトとでは膜の脂質組成や物性(膜の厚さや膜内分子の拡散速度など)に違いがあるため、膜タンパク質はそれぞれの膜領域に対して異なる親和性を示す。ラフトに局在するタンパク質には次の2つのタイプが知られている。①脂質修飾を受けたタンパク質と②膜貫通領域(transmembrane domain; TMD)がラフトに親和性をもつタンパク質である。①に関係する脂質修飾には、アシル化([[ミリストイル化]]、[[パルミトイル化]])や[[GPIアンカー]]付加などがあり、反対に[[プレニル化]]([[ファルネシル化]]、[[ゲラニルゲラニル化]])を受けたタンパク質はラフトから排除される傾向があることが報告されている。
 ラフトと非ラフトとでは膜の脂質組成や物性(膜の厚さや膜内分子の拡散速度など)に違いがあるため、膜タンパク質はそれぞれの膜領域に対して異なる親和性を示す。ラフトに局在するタンパク質には次の2つのタイプが知られている。①脂質修飾を受けたタンパク質と②膜貫通領域(transmembrane domain; TMD)がラフトに親和性をもつタンパク質である。①に関係する脂質修飾には、アシル化([[ミリストイル化]]、[[パルミトイル化]])や[[GPIアンカー]]付加などがあり、反対に[[プレニル化]]([[ファルネシル化]]、[[ゲラニルゲラニル化]])を受けたタンパク質はラフトから排除される傾向があることが報告されている。一方、②については、特にTMDの長い膜タンパク質が疎水性部分の露出を避けるため、膜の厚いラフト環境を好むことが推測されている。実際、細胞膜に存在する膜タンパク質では、[[ゴルジ体]]にあるタンパク質よりもTMDが長い傾向がある<ref><pubmed>20603021</pubmed></ref>。


 一方、②については、特にTMDの長い膜タンパク質が疎水性部分の露出を避けるため、膜の厚いラフト環境を好むことが推測されている。実際、細胞膜に存在する膜タンパク質では、[[ゴルジ体]]にあるタンパク質よりもTMDが長い傾向がある<ref><pubmed>20603021</pubmed></ref>。脂質ラフトの重要な機能は、これらのタンパク質を選別して特定の領域内に分布させることにより、分子間相互作用を効率化することであると考えられる。また、ある種のタンパク質では脂質環境の違いによって膜タンパク質のコンフォメーションが変化し、活性が変化すると考えられている。異なるスフィンゴ脂質が互いに排他的なドメインを形成している場合も明らかになっており<ref><pubmed>17392511</pubmed></ref>、異なる種類のラフトが特定のタンパク質の分子機能の制御に関わる可能性がある。
 脂質ラフトの重要な機能は、これらのタンパク質を選別して特定の領域内に分布させることにより、分子間相互作用を効率化することであると考えられる。また、ある種のタンパク質では脂質環境の違いによって膜タンパク質のコンフォメーションが変化し、活性が変化すると考えられている。異なるスフィンゴ脂質が互いに排他的なドメインを形成している場合も明らかになっており<ref><pubmed>17392511</pubmed></ref>、異なる種類のラフトが特定のタンパク質の分子機能の制御に関わる可能性がある。


 ラフトが関与する具体的な生命現象としては、[[wikipedia:ja:IgE受容体|IgE受容体]]や[[wikipedia:ja:T細胞受容体|T細胞受容体]] (TCR)によるシグナル伝達複合体の形成の例がよく知られている。TCRの場合には、[[wikipedia:ja:抗原提示細胞|抗原提示細胞]]から提示された[[wikipedia:ja:MHCリガンド|MHCリガンド]]との結合により、TCRの近傍に[[wikipedia:Lck|Lck]]や[[wikipedia:LAT|LAT]]などラフト親和性をもったタンパク質の一群がリクルートされる。この構造体は[[wikipedia:ja:免疫シナプス|免疫シナプス]]と呼ばれ、周囲の膜環境は、膜環境感受性色素である[[wikipedia:ja:Laurdan|Laurdan]]を用いたイメージング法によりl<sub>o</sub>相に類似した性質をもつことが明らかになっている<ref><pubmed>19177148</pubmed></ref>。
 ラフトが関与する具体的な生命現象としては、[[wikipedia:ja:IgE受容体|IgE受容体]]や[[wikipedia:ja:T細胞受容体|T細胞受容体]] (TCR)によるシグナル伝達複合体の形成の例がよく知られている。TCRの場合には、[[wikipedia:ja:抗原提示細胞|抗原提示細胞]]から提示された[[wikipedia:ja:MHCリガンド|MHCリガンド]]との結合により、TCRの近傍に[[wikipedia:Lck|Lck]]や[[wikipedia:LAT|LAT]]などラフト親和性をもったタンパク質の一群がリクルートされる。この構造体は[[wikipedia:ja:免疫シナプス|免疫シナプス]]と呼ばれ、周囲の膜環境は、膜環境感受性色素である[[wikipedia:ja:Laurdan|Laurdan]]を用いたイメージング法によりl<sub>o</sub>相に類似した性質をもつことが明らかになっている<ref><pubmed>19177148</pubmed></ref>。
100

回編集

案内メニュー