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同義語:ゲーティング | 同義語:ゲーティング | ||
ゲートとは、[[イオンチャネル]]開閉を制御する機構である。閉状態にある[[イオンチャネル]]は、脱分極やリガンド結合などの刺激を受けて構造変化を起こす。最終的にゲートが開くことでイオンを透過させることができる開状態になる。ゲートは通常S6セグメントなどイオン透過路であるポアドメインに備わっている機構である。しかし、ゲーティングという言葉にはもう少し幅広い意味があり、例えば[[電位依存性チャネル]]であれば、[[膜電位センサー]] | ゲートとは、[[イオンチャネル]]開閉を制御する機構である。閉状態にある[[イオンチャネル]]は、脱分極やリガンド結合などの刺激を受けて構造変化を起こす。最終的にゲートが開くことでイオンを透過させることができる開状態になる。ゲートは通常S6セグメントなどイオン透過路であるポアドメインに備わっている機構である。しかし、ゲーティングという言葉にはもう少し幅広い意味があり、例えば[[電位依存性チャネル]]であれば、[[膜電位センサー]]の動きも含めた閉状態から開状態への一連の構造変化を指すことが多い。イオンチャネルのゲーティングは60年以上前の[[Hodgkin-Huxley方程式]]の時代から精力的に研究されてきた、生物物理学の最重要課題の一つである。近年の結晶構造解析やそれに基づくシミュレーションなどにより、構造的な側面からの理解が深まりつつある。 | ||
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===イオンチャネルゲートの開口=== | ===イオンチャネルゲートの開口=== | ||
[[Image:KcsA&MthK.jpg|400px|thumb|right|図2 KcsAチャネル(閉状態; PDB:1BL8)とMthKチャネル(開状態; PDB:1LNQ)の構造。2つのサブユニットのみ表示している。]] | [[Image:KcsA&MthK.jpg|400px|thumb|right|図2 KcsAチャネル(閉状態; PDB:1BL8)とMthKチャネル(開状態; PDB:1LNQ)の構造。2つのサブユニットのみ表示している。]] [[膜電位センサー]]自体はあくまでゲートの開閉を制御しているものであり、実際に開閉するゲートはポアドメインのS6セグメントに存在していると考えられている。原核生物の2回膜貫通型[[カリウムチャネル]]KcsAの結晶構造は閉状態だと考えられている。S6セグメントに相当するM2へリックスは細胞内側で束ねられており、"ゲート"は閉じている<ref><pubmed>9525859</pubmed></ref> (図2左)。一方原核生物由来のカルシウム活性化カリウムチャネルMthKの構造は開状態であると考えられている。MthKではM2へリックスが大きく開いており、ゲートを担うへリックス(S6またはM2)がダイナミックに動くことで開閉することを示唆している<ref><pubmed>12037560</pubmed></ref>(図2右)。さらにKcsAチャネル蛋白一分子に付加した金結晶のX線回折像の解析により、M2へリックスがダイナミックに動く様子がリアルタイムで捉えられている<ref><pubmed>18191221</pubmed></ref>。哺乳類の電位依存性[[カリウムチャネル]]としてはKv1.2チャネルの構造が明らかになっているが、これは開状態であると考えられる<ref><pubmed>16002579</pubmed></ref><ref name=ref2><pubmed>16002581</pubmed></ref>。閉状態の結晶構造は未だ得られていないが、[[膜電位センサー]]の動きがS4-S5リンカーを介してS6セグメントに伝わり、ゲートであるS6セグメントがやはりダイナミックに開閉すると考えられている<ref name=ref2 /><ref><pubmed>17920020</pubmed></ref>。 | ||
=== | ===その他の[[電位依存性チャネル]]のゲート=== | ||
いくつかの[[電位依存性チャネル]]では開状態にはいった後、閉状態とは異なる”不活性化”と呼ばれる状態に入り、イオンを通さなくなる。[[Hodgkin-Huxley方程式]]における”h”ゲートのように、不活性化にはS6ゲートとは異なる別のゲートが想定されている。Shakerチャネルと呼ばれる電位依存性[[カリウムチャネル]]には、細胞内N末端領域に"ボール"構造を持ち、これがポアを細胞内側から塞ぐことで不活性化を起こす<ref><pubmed>2122519</pubmed></ref>。また少なくとも一部の[[カリウムチャネル]]では[[イオン選択性フィルター]]がゲートとして働くと考えられている。 | |||
== | ==[[リガンド依存性チャネル]]のゲート== | ||
[[リガンド依存性チャネル]]には、5量体のニコチン性アセチルコリン受容体などのCys-loop受容体ファミリー、4量体の[[イオンチャネル型グルタミン酸受容体]]ファミリー、3量体のATP(P2X)受容体ファミリーなどが存在する。細胞外領域にあるリガンド結合部位と、膜貫通領域のイオン透過路であるポアドメインを持つ。リガンドが受容体に結合すると、細胞外領域に構造変化が生じ、その変化がポアドメインに伝わって、ゲートが開閉すると考えられる。 | |||
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