「電気魚」の版間の差分

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====ウエーブ種の混信回避行動のアルゴリズム====  
====ウエーブ種の混信回避行動のアルゴリズム====  


右図に混信回避行動を引き起こす電気感覚信号とその時間変化を示す。相手魚の周波数の高低を決定するためのアルゴリズムは以下の7つのステップからなる。(1) 自己と相手の発電の和信号を感覚信号として体表の各点でサンプルする。図には、AB2点での和信号を示す。自己と相手魚との幾何学的な位置関係により各点で攪乱の度合いが異なる。ペースメーカー核にエフェレンスコピーとして存在する自己発電周波数の情報は使わない。(2) 和信号の振幅変調の経時的変化を検出(橙色線)。(3) 和信号の位相(マジェンタ線)を検出。(4) 体の各部からの位相''差''(青色線)を検出。(5) 相手魚の周波数の高低によって異なる(2)(4)間の時間パタン(リサージュグラフの回転方向)を読み出す。図では相手魚の周波数の高低が4秒ごとに切り替わるが、その時リサージュグラフの回転方向が変わることに注意。(6) (5)の計算結果が示す空間的曖昧さを (2) の結果と空間加重することによって解決する。(7) 神経計算の最終結果はペースメーカー核へ投射信号として提示される。
右図に混信回避行動を引き起こす電気感覚信号とその時間変化を示す。相手魚の周波数の高低を決定するためのアルゴリズムは以下の7つのステップからなる。(1) 自己と相手の発電の和信号を感覚信号として体表の各点でサンプルする。図には、AB2点での和信号を示す。自己と相手魚との幾何学的な位置関係により各点で攪乱の度合いが異なる。ペースメーカー核にエフェレンスコピーとして存在する自己発電周波数の情報は使わない。(2) 和信号の振幅変調の経時的変化を検出(橙色線)。(3) 和信号の位相(マジェンタ線)を検出。(4) 体の各部からの位相''差''(青色線)を検出。(5) 相手魚の周波数の高低によって異なる(2)(4)間の時間パタン(リサージュグラフの回転方向)を読み出す。図では相手魚の周波数の高低が4秒ごとに切り替わるが、その時リサージュグラフの回転方向が変わることに注意。(6) (5)の計算結果が示す空間的曖昧さを (2) の結果と空間加重することによって解決する。


====ウエーブ種の混信回避行動の神経機構====  
====ウエーブ種の混信回避行動の神経機構====  
(1)の過程は振幅型と位相型の電気受容器、(2) は中枢の興奮型と抑制型ニューロン, (3)は中枢のフェーズロックニューロンによってコードされる<ref><pubmed>9030634</pubmed></ref>。(4) の過程は (3) のニューロン間の活動電位の発生時間差(青色線)に感受性のある符合一致検出回路が実行する<ref><pubmed>8613805</pubmed></ref>。(5)の過程は (2) と (4) をコードするニューロンが収れん投射するニューロンがリサージュグラフの回転方向を読み出すことにより実行する<ref><pubmed>17005607</pubmed></ref>。延髄の電気感覚側線葉と中脳の半円堤に分布するこれらの神経回路は (6)に対応するものを除いて神経生理学的解剖学的によく理解されている<ref>'''Neural Netsと21世紀の章'''</ref>。系統的に遠い電気魚 ''Eigenmannia ''と''Gymnarchus ''は、混信回避行動を独立に進化させたにも関わらず、そのアルゴリズムと神経回路には強い類似性がある<ref>19799509<pubmed></pubmed></ref>。
(1)の過程は振幅型と位相型の電気受容器、(2) は中枢の興奮型と抑制型ニューロン, (3)は中枢のフェーズロックニューロンによってコードされる<ref><pubmed>9030634</pubmed></ref>。(4) の過程は (3) のニューロン間の活動電位の発生時間差(青色線)に感受性のある符合一致検出回路が実行する<ref><pubmed>8613805</pubmed></ref>。(5)の過程は (2) と (4) をコードするニューロンが収れん投射するニューロンがリサージュグラフの回転方向を読み出すことにより実行する<ref><pubmed>17005607</pubmed></ref><ref><pubmed>9736677</pubmed></ref><ref><pubmed>15048683</pubmed></ref>。これら神経計算の最終結果はペースメーカー前核のニューロンによりペースメーカーへ伝達され、自己の発電周波数を上下させる混信回避行動を実現する。<ref><pubmed>3397919</pubmed></ref>。延髄の電気感覚側線葉と中脳の半円堤に分布するこれらの神経回路は (6)に対応するものを除いて神経生理学的解剖学的によく理解されている<ref>'''Neural Netsと21世紀の章'''</ref>。系統的に遠い電気魚 ''Eigenmannia ''と''Gymnarchus ''は、混信回避行動を独立に進化させたにも関わらず、そのアルゴリズムと神経回路には強い類似性がある<ref>19799509<pubmed></pubmed></ref>。


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