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Rhashimoto (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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== 歴史 == | == 歴史 == | ||
1986年にGershonらが精神医学領域において、初めてエンドフェノタイプの概念について提唱した<ref><pubmed>3465198 </pubmed></ref>。その後Gottesmaらがエンドフェノタイプという用語を導入し<ref><pubmed>3307978 </pubmed></ref>、次にWeinbergerらが1998年に中間表現型(intermediate phenotype)という用語を導入した<ref><pubmed>9821558 </pubmed></ref>。2001年にWeinbergerらが、ドーパミンの代謝酵素であるCOMT(catechol-o-methyltransferase gene)遺伝子の機能的多型であるVal多型はMet多型と比較してCOMT酵素活性が高く,その結果,前頭葉のドーパミン量が低下し,前頭葉機能とその効率が悪くなることを認知機能と機能的MRIを用いて示し,最期に統合失調症のリスクとなるという発表を行った<ref><pubmed>11381111 </pubmed></ref>。この研究を端緒に、統合失調症の認知機能障害、脳神経画像の異常、神経生理学的異常所見を中間表現型として統合失調症のリスク遺伝子を見出す研究が実際的に開始された。本邦においては、2003年に橋本らがintermediate phenotypeを中間表現型と翻訳し、この概念が本格的に導入された<ref>'''橋本亮太、Weinberger DR'''<br>統合的アプローチから精神疾患の病態にせまる‐ゲノム的アプローチを越えて‐エンドフェノタイプ(中間表現型)の定義<br>''実験医学 '':2003; 21: 1304-1308</ref>。Pubmedによるとendophenotype (intermediate phenotype)で引用される論文は、1990年前半で10編、後半で約50編、2000年前半で約400編、2000年後半で約1200編と急速に増えており<ref><pubmed>18458787</pubmed></ref>、本邦においてはこの分野の日本生物学的精神医学会年会における中間表現型の発表は概念が導入された2003年にはなかったものの2010年には口演の22%、ポスター発表の9%を占めるようになり、遺伝学的研究のみならず、生物学的精神医学研究の中心的な研究手法となりつつある(図1)<ref>'''橋本亮太、大井一高、安田由華、福本素由己、山森英長、梅田知美、岡田武也、武田雅俊'''<br>分子遺伝学の新しいアプローチによる精神疾患解明 統合失調症の中間表現型研究の最前線<br>''日本生物学的精神医学会誌'':2012; 23: 9-14</ref>。 本邦では、中間表現型という用語がよく用いられるが、後に定義に述べるように遺伝子と精神疾患の中間という意味と、健常者と患者の中間にある精神疾患を持たない患者血縁者においても認められるという意味をわかりやすく表していることによると思われる。<br> | 1986年にGershonらが精神医学領域において、初めてエンドフェノタイプの概念について提唱した<ref nama=ref1><pubmed>3465198 </pubmed></ref>。その後Gottesmaらがエンドフェノタイプという用語を導入し<ref><pubmed>3307978 </pubmed></ref>、次にWeinbergerらが1998年に中間表現型(intermediate phenotype)という用語を導入した<ref><pubmed>9821558 </pubmed></ref>。2001年にWeinbergerらが、ドーパミンの代謝酵素であるCOMT(catechol-o-methyltransferase gene)遺伝子の機能的多型であるVal多型はMet多型と比較してCOMT酵素活性が高く,その結果,前頭葉のドーパミン量が低下し,前頭葉機能とその効率が悪くなることを認知機能と機能的MRIを用いて示し,最期に統合失調症のリスクとなるという発表を行った<ref><pubmed>11381111 </pubmed></ref>。この研究を端緒に、統合失調症の認知機能障害、脳神経画像の異常、神経生理学的異常所見を中間表現型として統合失調症のリスク遺伝子を見出す研究が実際的に開始された。本邦においては、2003年に橋本らがintermediate phenotypeを中間表現型と翻訳し、この概念が本格的に導入された<ref>'''橋本亮太、Weinberger DR'''<br>統合的アプローチから精神疾患の病態にせまる‐ゲノム的アプローチを越えて‐エンドフェノタイプ(中間表現型)の定義<br>''実験医学 '':2003; 21: 1304-1308</ref>。Pubmedによるとendophenotype (intermediate phenotype)で引用される論文は、1990年前半で10編、後半で約50編、2000年前半で約400編、2000年後半で約1200編と急速に増えており<ref><pubmed>18458787</pubmed></ref>、本邦においてはこの分野の日本生物学的精神医学会年会における中間表現型の発表は概念が導入された2003年にはなかったものの2010年には口演の22%、ポスター発表の9%を占めるようになり、遺伝学的研究のみならず、生物学的精神医学研究の中心的な研究手法となりつつある(図1)<ref>'''橋本亮太、大井一高、安田由華、福本素由己、山森英長、梅田知美、岡田武也、武田雅俊'''<br>分子遺伝学の新しいアプローチによる精神疾患解明 統合失調症の中間表現型研究の最前線<br>''日本生物学的精神医学会誌'':2012; 23: 9-14</ref>。 本邦では、中間表現型という用語がよく用いられるが、後に定義に述べるように遺伝子と精神疾患の中間という意味と、健常者と患者の中間にある精神疾患を持たない患者血縁者においても認められるという意味をわかりやすく表していることによると思われる。<br> | ||
== 定義 == | == 定義 == | ||
定義(理想的な精神疾患の中間表現型の定義)<ref>'''橋本亮太、武田雅俊'''<br>中間表現型<br>''精神医学キーワード事典 2011: 594-596</ref>。 <br>1) 遺伝性があること | 定義(理想的な精神疾患の中間表現型の定義)<ref>'''橋本亮太、武田雅俊'''<br>中間表現型<br>''精神医学キーワード事典 2011: 594-596</ref>。 <br>1) 遺伝性があること | ||
2) 量的に測定可能であること | 2) 量的に測定可能であること | ||
3) 孤発例において精神疾患や症状と関連すること | 3) 孤発例において精神疾患や症状と関連すること | ||
4) 長期にわたって安定していること | 4) 長期にわたって安定していること | ||
5) 精神疾患の家系内で精神疾患をもたないものにおいても発現が認められること | 5) 精神疾患の家系内で精神疾患をもたないものにおいても発現が認められること | ||
6) 精神疾患の家系内では精神疾患をもつものではもたないものより関連が強いこと | 6) 精神疾患の家系内では精神疾患をもつものではもたないものより関連が強いこと | ||
1986年にGershon & Goldinが、最初に1)、3)、4)、6)を定義した<ref name=ref1 /ref>。その後1998年に、Leboyerらは5)を追加し、さらに2006年にWeinbergerらは、2)を導入することで、疾患のあり/なしというような2分法ではなく、量的に測定可能な表現型を用いることで健常者においても測定でき、さらに中間表現型の関連を検出することが疾患との関連より統計学的に有利であることを示した。 | |||
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== 統合失調症 == | == 統合失調症 == |
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